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日銀大規模緩和策を修正 

2013年に開始された、日銀による「異次元の金融緩和」。デフレと低成長から脱却することを目的に、国債の大量買い入れやマイナス金利政策などが実施された。
しかし、2024年3月19日の金融政策決定会合で、日本銀行は「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」との判断を示したうえで、異例の金融緩和の修正を決めた。今回の修正は3つである
①マイナス金利政策の解除→従来の政策金利の-0.1%を0.2%ポイント引き上げ
②イールドカーブ・コントロール(YCC)の廃止
③ETFなどその他資産買い入れの廃止
このNoteでは、初心者でもわかりやすくこれまで行ってきた経済政策を説明していこう。



異次元の金融緩和とは何だろうか

金融緩和とは、市場に出回るお金の供給量を増やして経済を活発化させ、景気回復を図る金融政策のことだ。日銀の金融政策「異次元緩和」とは、当時の安倍晋三政権のもと、2013年3月に日銀総裁に就任した黒田東彦氏が直後の4月に導入した大規模な金融緩和政策のことをいう。
景気が悪いときには、政策金利の引き下げ・資産の買い上げ等によって、資金の供給量を増やす金融緩和を行う。その結果、企業や個人はお金を借りやすくなるため、経済活動が活発になり、景気の上昇が期待できる(←日本が行っている経済政策がこれである)。
一方、景気がよすぎると過度なインフレが生じることもある。インフレとは、モノやサービスの値段が継続的に上がることで、相対的にお金の価値が下がることだ。教科書で、皆さん下の写真を見たことがあるだろう。お金の札束で子供たちが遊ぶくらい、貨幣の価値がなくなる。現在のアメリカはインフレであり、日本の経済政策と真反対の金融引き締め政策を行っている。

札束で遊ぶ子供(ドイツ)ハイパーインフレを象徴する写真




異次元の金融緩和の具体的な中身の紹介

安倍政権はデフレ経済からの脱却などを目的に、有名な「アベノミクス」を提唱し、そのアベノミクスの柱の1つである「大胆な金融政策」に関して、黒田日銀総裁が強力かつ大胆な金融緩和政策を導入した。これが異次元緩和だ。そしてその金融緩和の方法は大きく二つある。
政策金利の引き下げ 
国債などの資産の買い上げ

①政策金利の引き下げ

政策金利とは、中央銀行が一般の金融機関にお金を貸し出す際の金利。政策金利が下がれば、企業や個人がお金を借りやすくなる。企業は大規模な設備購入のための借入れを、個人は家を買うための住宅ローン等が組みやすくなるため、事業投資や個人消費等の経済活動が活発になる。その結果、物価上昇や景気回復が期待できるのだ。

②国債などの買い上げ

国債とは国の発行する債券。債券を買うということは、国に一定期間お金を投資するということ。投資であるため、定期的に利子が支払われる。そして満期になれば元本の返済を受けることが可能だ。
国債を買い上げることで、国債の価格が上昇し、利回りは低下することが一般的だ。なぜ、国債の買い上げが金融緩和につながるかを確認していこう。日本銀行が長期国債を購入すると、一般的に国債の価格が上昇し、長期金利は低下するため、金融機関の利息による収入が少なくなる。そこで、金融機関は国債による利息収入ではなく、企業や個人への融資で利息収入を得ようとするため、彼らが借入しやすい低い貸出金利を設定するだろう。その結果、政策金利を引き下げた場合と同様に、企業や個人がお金を借りやすくなり、経済活動が活発になると言われる。

★国債と金利の関係

国債は、満期になると元本が返済され、発行時に決められた利率で一定期間ごとに利子が支払われる。なぜ、国債が買われると、金利が低下するか考えてみる。
満期までの期間が1年、額面100円の国債で1000円分、利率が1%のケースを想定。

発行と同時に1000円で購入し、満期まで持ち続ければ、額面の1000円+利子10円=1010円を得れる。この国債の購入額に対する利回りは「1%」となる。これが債券市場で買われ、値上がりし、1005円で購入した場合は、満期まで持ち続けると、償還の際、額面との差額にあたる5円の損が出るが、利子が10円つくため、差し引き5円の利益となる。購入額に対する利回りは「約0.5%」となった。国債が値上がりすると、利回り低下につながることが分かった。逆に、これが債券市場で売られて値下がりし、995円で購入した場合。満期には額面との差額にあたる5円の利益と10円の利子つくため、合わせて15円が利益となる。購入額に対する利回りは「約1.5%」となった。国債値が下がり、利回りが上昇した。
つまり、日本銀行は、大量に国債を買入れることで長期金利を抑えていた。



金融緩和政策を行うとどうなるのか

①株価の上昇


会社の目線で考える。金利というのは、返すお金に加えて、支払ないといけないお金である。金利が下がるということは、会社が銀行にお金を借りる時の合計額も下がることになる。つまり、企業は銀行に返すお金が、金利が低いことにより、少額で収まるため、利益が増え、新しく設備投資や事業をしたりすることができるようになる。
次に個人の目線で考えてみる。
金利が下がれば、ローン金利等が下がるので、例えば住宅や自動車等が買いやすくなる(住宅ローンなど聞いたことがあるだろう)。
また、預金金利も下がるので、預金をする理由がなくなり預金をするお金を消費、投資に回す人が増え、景気が良くなっていくだろう。
まとめると、企業は利益が増えて業績がアップするということ、そして個人では預金金利が下がる分、預金が減って投資が増える
株価という言葉は聞いたことがあるだろうか。株価とは、各企業が発行している株式1株あたりの値段であり、個人でも証券口座を開設し、買うことができる。ここで、問題なのだが、日本の企業の業績がUPし、個人は投資にお金を回す場合、一般的に株価はどうなるだろうか。
もちろん、株価は上昇していく。日本の株式市場の大きな動きを把握する際の代表的な指標である日経平均は、史上初の4万円台に乗せた。

日経新聞から引用

②円安の進行


今までは金融緩和政策を行うメリットを紹介したが、もちろんデメリットもある。日本の通貨は金利が低いが、インフレが激しいアメリカは抑えようと、金利を高く設定している。投資家たちは、円とドル、どちらの通貨を好むだろうか。そう、投資家は、利息を多くもらえるドルを好む。円が売られ、ドルが買われた結果、為替レート、米ドルと日本円の組み合わせでは、1ドル151円となった。この事態が何を表しているかというと、円という通貨の価値低下である。円がドルに対して価値が低下した(安くなった)ため、現在円安と呼ばれている。

外為どっどコムより引用

③金融機関の収益ダウン

銀行の収益獲得方法の一つに、民間企業への貸付や個人への融資などがあるだろう。そういった、貸付や融資は、低金利のため、お金を多く貸しても利子が少ないため、銀行側の収益も少なくなる。そのため、銀行の経営状況が悪化するといわれる。

金融緩和政策の評価

金融緩和は、景気回復を目的とした経済政策だった。日銀はどのようなシナリオを描いていたのだろうか。
金融緩和で資金の供給量が増えると、企業の設備投資等に回せる資金が増えて業績向上につながり、賃金上昇や雇用安定が期待できる。その結果、個人の消費意欲が高まりモノやサービス等の需要も高まり、物価が上昇。円安では、輸入原材料が高騰する。そのため、原材料価格高騰も、上昇の後押しとなる。物価が上がれば、企業の業績や賃金も上昇する。以下が分かりやすく示した図だろう。

三菱UFJ銀行の記事から引用

市場に出回るお金を増やして経済活発化を狙ったが、日本では、物価だけが上昇する、回復をともなわないインフレにより、生活の負担が増加していた。導入後、企業への貸し出し金利や住宅ローンの金利は大幅に低下したが、金融機関の収益が圧迫されたり、年金基金の運用に悪影響が出たりするといった副作用も表面化。

賃金の上昇を伴う形で物価が安定的に2%上昇する「賃金と物価の好循環」を、日銀は狙っていた。先に変化したのは物価だった。コロナ禍で急激に落ち込んだ経済活動再開によって、供給に混乱が生じモノの値段は上昇。賃金を引き上げる動きも最近出てきた。企業の収益が改善され、人手不足の中で優秀人材の確保動機といった動きも加わり、去年や今年の春闘では賃上げが相次いだ。しかし、物価の変動分を反映した実質賃金は1年10か月連続でマイナスとなっている。それでも日銀は、マイナス金利解除を決定した。賃上げの流れは持続しており、賃金が物価を上回る状況が生まれてくると見ている。
長期によるこの金融政策。筆者は、残った負の側面をどう解決するか興味がある。
負の側面として、まずは、日本株の爆買いを大量にしたこと。日経平均株価が下がると、それを買い支える形で日銀が株価を支えていたのだ。買った総額は含み益を含めると71兆円である。買った株は売ることで処理をする。大量の株を一度に売ると、株価が急落し、個人投資家などに大きな影響を与える。そのため、分散して影響がないように、現在の資産を売るには、200年以上かかるのである。これをどう解決するかは、興味深いだろう。
異次元緩和政策では、日本銀行が国債を大量に市場で買い入れていることを前述した。国債を買うことで金利を低く調整していたからだ。その国債の処理はどうするのであろう。日銀が保有国債を売ろうとすれば、民間の金融機関も国債を売る動きが強まるため、金利が跳ね上がる。では、持ち続ければいいのではないかと考えるかもしれないが、金利が上昇すると、日銀の評価損は増大する。この問題をどう処理していくのだろうか。



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