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【小説】「天国のこえ」1章・オーラ

 「ねえ、朝ちゃん、私の指先を見て」
 そう言って、私の長年の友人である「葉月」は、真っ暗なテレビ画面の前に人差し指を立てた。
 葉月は、「ほら、なんかさ、煙が上がるように、私の指先からオーラが出てるの見えない?」とにっこりと笑った。

 私と葉月は、小学校で出会った。親友というよりは、もう腐れ縁のような仲になっていた。
 「美人な葉月。それに比べて、朝子ってブスだよなあ」なんて、小学生男子の言った一言は、今でもよく覚えている。
 「そんなことない」と反論したいのは山々なのだが、まあ、小学生男子の評価は残酷にも正しい。
 艶々の長い黒髪が特徴的だった葉月は、小学生ながらに完成された顔立ちをしていて、身長が高く大人びていて、私に無いものを全て持っているような女の子だった。
 それに比べ、私ときたらどうだ。目は狐のように細く、満月のような丸顔。背も低く、どこをとっても「美しい」とされる要素がなかった。
 葉月は器量良しの上優等生だったし、勉強がからきしできない私とは対照的だった。
 それでも葉月は、私と仲良くしてくれていた。
 子供の頃の葉月は、特に「霊的な能力がある」とは、一言も言わなかった。
 葉月とは、中高を共に過ごし、私は大学へ進学し、葉月は専門学校を卒業後就職。
 葉月が就職してからだろうか、「私は『視える』んだよね」などと唐突に口にするようになったのは。
 しかし、当時の私は「そうなんだ?」と話半分で聞いていた。

 その「葉月」とは、私が就職をする頃には疎遠になっており、一年に一度、年賀状をやりとりするだけの仲になっていた。
 再び、密なやりとりをするようになるのは、私が「うつ病」を患ってからになる。


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