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啓太のスカッとショートショート~無口な訳~

家近くのレストランに呼ばれて、今店内に入るや否や、
甲高い声が響いた。
「ゆう君!! こっち! こっち~!!」
何かトラブルが起こりそうな予感がした。

一時間前に女友達の明美に呼ばれた俺。
せっかく昼寝しているところだったのに、
半分イラつきながら声に誘導された俺。

「なに? 用事って」

明美はニヤニヤしながら話始めた。
「いや~、うちの上司が指摘してくるんだよね」
俺は明美の勢いについていく気力もなく、
黙り込んだ。
そして、明美はお構いなく話し続けるのである。

「あのさ? うちの上司ってさ、私がちょっと失敗しただけで、
【もうちょっと、こうするといいよ】って、怒ってくるんだよね」

明美は鼻息を上げながら俺に話をしているが、
内容を聞いていると、その上司は怒ってるわけではないと思った。
仕事上、会社で働いている以上、
要望はあるものだ。
明美の話は止まらない。
「でさ? 【上司になんでそんなに怒ってるんですか?】って聞いてわけ!
そしたらさ? 【いや、怒ってないんだよ。 仕事を教えてるんだよ】って言ってくるわけよ!」

話を聞いていると、
やっぱりその上司は怒ってない気がした。
というより、明美の言い方は、上司に話す言い方ではない。
明美の熱弁、陰口悪口は止まらない。

「もう少し優しく言ってもらわないとこっちも困るよね!?
【明美さんごめんね。 
少しずつでもいいから仕事を覚えてもらいたいんだ】とか
言ってくるわけよ!
仕事覚えてほしいとか言われたら、
こっちはプレッシャーなのよね!」

話を聞いていると、上司はきっと優しい人だと思った。
もう少し優しくといっても、十分に優しい気はする。
上司も相手の気持ちを察しながら、
必要な仕事内容を教えているように思う。

そして、明美は半ばキレながら俺に質問してきた。
「あんた、さっきから何黙ってるのよ! なんか言いなさいよ!」
店内には客一人いない。
俺は一言だけ明美に言った。
「お前に話すことなんかない」

明美はひるんだような表情を見せた。
それから沈黙が続き、店内はますます静寂さを深めた。
俺はなぜか明美の分まで会計し、
店を出た。
そして、ある言葉がよぎった。
【攻撃する者は攻撃に弱い】

~終わり~

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