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【イベントレポート】こちらあみ子上映&トークショー 憧れのあの方とご対面…

グッドウォッチメンズの大ちゃんです。

先日のスラムダンク応援上映に続き、イベントのレポートを書いていきます。

鑑賞した映画は「こちらあみ子」。
僭越ながら私が昨年鑑賞した新作映画の中で栄えあるベストワンと認める素晴らしい傑作です。

ちなみに、過去動画で話したものはこちら



そんな大好きな作品の上映とトークショーが行われるとかぎつけたのは、
アフター6ジャンクションのアーカイブを聞いていたある日。
ぼんやりとトークを聞き流していると、福山駅前シネマモードで森井監督と宇多丸さんのトークショーを開催すると耳に入ってきました。
映画関連のイベントに参加することは地方民にとって、物理的な距離の問題もあり、かなりハードルが高いのですが隣県であの「こちらあみ子」について宇多丸さんが話すとなると行かないという選択肢はありません。
しかも宇多丸さんにとっても「こちらあみ子」は昨年のベストワン映画。
ちょうどBlu-rayが発売されたタイミングということもあり、メイキング映像をじっくり鑑賞、宇多丸さんの映画評も改めて聴き返し万全の状態で臨みました。

まず、福山駅前シネマモードは初めて訪れた映画館でしたが、とてもいい場所だと感じました。トークショーがあるということで前方の席を選んだため、映画の鑑賞自体が少し窮屈になりそうだと不安でしたが、ふかふかのシートと程よい角度の背もたれのおかげでそこはまったく心配なし。
椅子の横幅も広くてなんのストレスもなく充実した鑑賞をすることができました。

さて、イベント自体はというと宇多丸さんの前説のあとに「こちらあみ子」を上映、その後森井監督と宇多丸さんのトーク、質疑応答という構成。
なかなか前説を経て、映画を鑑賞するという機会がそれほどあるわけではないので、そこからして既に貴重。しかも話しているのは宇多丸さん。
宇多丸さんは私にとって映画の見方を教えてくれたような存在なので既に感動してしまっています。
画面に何が映っていて、何が映っていないか、誰が何を見ていて見ていないかという点に着目するとより豊かな鑑賞になるはずという前説を経て上映が開始しました。

昨年の鑑賞から数えて3回目の鑑賞でしたが、やはり改めて傑作だと感じました。カメラと被写体の距離感が本当に絶妙。一定の距離から見守るような構図が多いですが、自然とカメラが今映画を観ている自分の目と同化するような感覚があり、ここから見ているとあみ子に見つかってしまいそうと自分でも意味がわからない焦りを感じてしまうほど。
劇中には登場しないある人物による視点という裏設定もなるほどと唸らされますね。

ということで、いよいよトークショーがスタート。
以前に東京で同様のイベントを行ったということでそこで話した内容のおさらいから始まりました。
あらゆる偶然が映りこんだ奇跡的な映画でありながら、計算され尽くしたショットで構成されている映画という宇多丸さんのフリから、タイトル後の素晴らしいワンカット長回しシーンの裏話に。
あみ子が何度かみかんを天井に向かって放り投げると、なぜか急に天井から落ちてこなくなるという不思議な演出。
このシーンでは、まるで運動会の玉入れの如く、天井にかごを構えてそこに入るように投げていたとのこと。かごに入ってみかんが落ちてこなくなった間合いが最も絶妙なカットを採用したそうです。7、8テイク重ねたんだとか。改めて映画の撮影は大変だなと感じました。

音使いやカメラのレンズの選択の話も興味深かったです。
劇中につきまという水の音や海、汗、トウモロコシの汁、破水など液体的なモチーフ。これの意図するところは監督の感覚的なところが大きかったそうですが、宇多丸さんはどこか異界のように感じると。
全体的になにかとなにかの境界が重要なモチーフになっていると指摘。
あみ子側の世界とそうでない世界の境界をどことなく示すものとして水のイメージが多用されていたのかもしれません。
カメラのレンズについては、専門的な話だったので少し難しかったですが、
通常のクローズアップでは使用しないレンズを敢えて使用したとのこと。
普通であれば行う使い分けを敢えてしないことで、いい意味で違和感があるようなアップの質感に仕上がったそうです。
全体的に不定形なものにしたかったと監督は言います。

話題はやがてお母さん役の尾野真千子さんに。
とても和気あいあいとした現場のなか、特にあみ子役の大沢一菜さんと激しめに仲良くしていたのが尾野さんだったとか。
大沢さんとの接し方も尾野さんなりの演出だったのではないかという監督の見立てがあったそうです。
というのも通常、映画の撮影で俳優が出演するシーンの撮影がすべて完了すると花束を渡す恒例行事がありますが、それはしないでほしいと尾野さんからお願いがあり、翌日から急に現場から尾野さんがいなくなり大沢さんは少したじろいでいたとのこと。
確かに、本編でもお母さんの存在があるシーン以降希薄になっていきます。
その現場での裏側のやり取りが演技にもいい影響を及ぼしていたということですね。

「こちらあみ子」では子役の存在がとても大きな要素を占める作品ですが、
その裏話もとても面白かったです。
劇中最も感動的なシーンに居合わせる坊主頭役を演じた橘高亨牧さんは素晴らしい演技を披露していましたが、今作に登場する子役のキャストの中でも一番演技派のような振る舞いをしていたそうです。
ここのタイミングでセリフがきてくれないと居心地が悪いという意見を監督に伝えたりしていたそうで既に大物の風格が漂いますね(笑)。
そして、のりくん役を演じた大関悠士さんの話にも。
坊主頭から茶々を入れられているときに、ずっと俯いたままの姿が印象的と宇多丸さんが指摘します。我慢できず、俯いたまま首を左右に激しく振って奇声を上げる姿が小学生男児っぽいと(笑)。
監督も昔あのような茶化しをされたことがあったそうです。
それが若干このシーンにも生かされたのかもしれないですね。
なんといっても、あみ子を演じた大沢一菜さん。
あの素晴らしい存在感を解き放っていた大沢さんもオーディションで選ばれたました。
事前に通達していたストーリーに沿って、数々の子役たちに演じてもらったそうですが、大沢さんは一線を画す演技をしていたと監督。
シナリオを見て、明るい子だと解釈しそのような演技をする役者が多かった中、大沢さんは無表情でじっとしている感じだったそうです。
そして、目力がすごい。
何もしなくても目力が鋭いことも決めてになったとのこと。
確かにあみ子は意外と表情が変わらないなと納得する宇多丸さん。
意外と人間で無表情ですよねと監督は言います。

そしていよいよ質疑応答へ。
当然今回も、私は質問を準備しております。

メイキングを見て、大沢さんと監督が以下のようなやりとりをしていました。
大沢さん「あみ子ってかわいそうな人なんでしょ?」
森井監督「おれはそうは思わないな」

この人間観を聞いて、この人だからこそこの傑作を撮りきれたのだと改めて実感しました。
これらのことから、監督はあみ子をどのような存在と認識し、それが大沢さんと出会い映画が完成することでその認識に変化があったのかという質問を準備していました。

今回も例にもれず、関節から指の先までしっかり伸ばして挙手。
見事、当てていただき、上記の質問をいたしました。

真摯に答えていただく監督。
まず、原作を読んで純粋にあみ子の世界を見てみたいと感じたそう。
当初この原作を映画化するなら、抽象的な方向性だと想定していたが、
大沢さんとの出会いが方向性を変えてくれた。
あみ子という存在を生命感たっぷりに、実在感を持って演じてくれた。
想定よりもエモーションな映画になった。
完成した映画をみて、改めて自分でも好きだと思うと仰っていました。
普通、あの原作を読んで上手くいくと思わないよね?と私に同調してくださる宇多丸さん。
面白い質問をしてくれたと仰る二人に大変光栄な思いになり、さらに監督ご本人の口からこの映画が好きという言葉を引き出せたのがとてもうれしかったです。やっぱり自分が好きな映画は作り手側も好きだと思っていてほしいという手前勝手な願望はあるものです。

会場からは、細かい描写についてなど様々な高い解像度による質問が飛び交いました。
それらに真摯に答えてられる森井監督と宇多丸さん。とても暖かい空気感で会場も彩られていき、ほぼ終了の予定時刻に。
(鳩の卵のサイズについて厳しい突っ込みを入れていた観客の方のお話がとてもおもしろかった(笑))
すると、ここでサプライズ。

なんとのりくんを演じた大関悠士さんが会場にいらしているとのこと。
大関さんが壇上に上がり、会場みんなで写真撮影を行い、暖かい空気のままイベントの幕は閉じました。

終演後も会場に残り、観客の方々との会話に応じてくださるお二方のお人柄に感動しているとまさかのここでもサプライズ。
坊主頭を演じた橘高亨牧さんがいらっしゃるではないですか!(笑)
しかもしれっと。
それに気付いた監督がいるなら言えよ!と思わず突っ込む始末(笑)
これらから本当に温かい現場だったということが窺えました。

妻と一緒に参加していたのですが、数分森井監督と個人的にお話させていただく時間をいただきました。
飽くまでオフィシャルな場ではないので内容は伏せますが、温和な人柄の中にも映画に対する信念のようなものを感じました。
私と妻の質問に対してしっかり耳を傾け、目を見てお答えする姿がとても印象に残っています。
無責任なプレッシャーをかけるわけにはいきませんが、その姿を見て今後もいくつも傑作を撮ってくれそうだと勝手に確信した次第です。

長々と書き連ねましたが、憧れの方とも対面でき大好きな映画を鑑賞し、素晴らしい監督さんとお話もできて本当にすてきな時間を過ごすことができました。
宇多丸さんが仰っていたように、もっと評価されていい作品です。
「こちらあみ子」という作品がもっと多くの方に届き、愛されることを祈り今回のブログを結ばせていただきます。




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