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この気持ちを表す言葉をぼくは知らない

弱い雨が断続的に降り続くひどく蒸し暑い日。
盲腸の手術が終わり退院したてのぼく(小4)は、
2階の自室でごろごろしていた。
1階は親父が営む理容室。
窓から覗けば、やって来るお客が見える。
大半は、どこを切ったらいいんだというようなハゲばかり。
美容室は肩身が狭いのか、親父の腕を買ってるのか、ひどい時は2週間に1回のペースで来る。
ぼくはいつも、可愛くてお洒落な女の子を待っているのに。
もっと切りがいのある、新規開拓をした方がいいと思う。絶対に。
だって、切る箇所がまるで見当たらない。
悲しい哉、ぼくは時々、髪の毛が抜ける悪夢を見て飛び起きる。
将来ハゲたらどうしよう。
その心配ばかりしている。
強い心を持って立っていられる気がしないのだ。
どうしてあんなに笑っていられるのか。
ぼくは何だか、負けたような気持ちになる。
羨ましいなんて1ミリも思っていないはずなのに。

ハマショーの『MONEY』がすきです。