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【掌編小説】ワクチン

 コロナウイルスは脅威を増すばかりで、変異に次ぐ変異を重ねて、もはや初波の原型を留めてはいなかった。
 現段階で判明している症状は、

・太陽光を浴びると皮膚が溶ける
・満月の日には全身から毛が生える
・無性に血が恋しくなる
・力のコントロールができなくなる、等々。
 
 それに応じて、ワクチンの質も変容していったが、比例して副反応も変容していった。
 ワクチン摂取7000回目を越えると、副反応で肉体が3倍に膨れ上がり、自我が保てなくなる。その為、接種した者は「ワクチン接種入院」という名の「一時的な収容」が義務化された。
 副反応が収まった後でも、しばらくの間、肉体は強靭であり続けるため、ワクチン接種したスポーツ選手は試合への出場を禁じられた。
 反面、不良たちにとっては、このワクチン摂取での収容がステータスとなった。
「ワクチンを接種した」とは言わずに、
「俺、この前収容はいっちゃってよお」と武勇伝として自慢げに語るのである。 
 
 なんとも平和な光景。
 なんとも万全な対策。
 なんとも適応した医療技術。

 しかし、ひとつだけ、抜かりがある。いや、怠慢である。
 それは、常軌を逸した症状が出ているにも関わらず、政府はいまだワクチン接種を「任意」としていることだ。
 
 ある友人は晴れた日に新宿で溶け、
 ある友人は満月下で親を一心不乱に食い、
 ある友人は献血カーを襲撃し、
 ある友人は看護師でありながら患者の頭を握り潰してしまった。
 砲丸投げのアスリートである友人は、ワクチン接種のタイミングを誤り、その状態で砲丸投げの試合に出ざる得なかった。結果、世界記録を大きく超える飛距離を叩き出したが、ワクチンの接種が判明して選手引退を余儀なくされた。その後、友人はほどなくして自ら命を絶った。
 俺はこれからコロナワクチン管理兼日本救済省、もとい旧厚生労働省に、怒りと悲しみを以て、テロを決行する。
 私怨ではない。我が身を犠牲に、ワクチンの危険性を示してくれた友人たちのメッセージを代弁するのだ。
 大丈夫。ワクチンを3本打った。俺の肉体はかつての10倍にも膨れ上がり、鋼鉄そのものだ。
 途中、自我が失くなっても、問題はない。 
 訴えたいことは全て背中に彫ってある。

 頭が痛くなってきた。
 体の痺れが強くなってきた。
 早く行かねば。
 早くコロナを殺しに行かねば。

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【罪状】麻薬取締法違反

アスリートの友人が接種していたのはワクチンではなく、違法ドーピングだったため。


※筆者のコロナワクチンに対する特定の考えを示すものでは一切ございません。

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