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日記 11/15~21 2021

15日。
土竜のように地下のスタジオに篭って作業。自分のスタジオを作るときに気にしたのは、照明設備を簡素にするということだった。ギラギラと明るい必要がないと考えたからだ。ゆえに、コールドブレインは暗い。しかし、土竜にとってみれば、目も眩むような明るさなのではないかと思う。うっかり使ってしまった土竜という比喩。実際は土竜のことなど少しもわかっておらず、イメージだけの借用。

16日。
サッカー日本代表は世代交代の季節を迎えているように感じる。ベテラン勢の経験を活かしつつ、若い世代の台頭も促す。とても難しい仕事なんだろうなと想像する。大衆音楽には代表もなければ、年齢による現役引退もない。トップスピードで身体が動かなくなっても、別の方向に豊かになることができる。何を豊かと思うのかも、個人の自由。勝ち負けもない。ゆえの難しさもあるけれど。

17日。
疲労感は拭えないが、喉の調子は悪くない。最近は喉のことはあまり気にせず、身体のことばかり気にしている。喉の問題にフォーカスすると神経質になりがちだけれど、「身体」は的が大きいので悩み自体の画角も大きくなる。実際、たくさん息を吸える身体を準備すれば声は伸びるという実感がある。身体全体が固まったままでは能力が発揮されない。考え方次第で随分と解放される。

18日。
音楽を含む芸術の素晴らしいところは、誰でも、たったひとりでもはじめられるところだと思う。他人と馴染めない人でも、取り返しのつかない失敗をした人でも、誰にでも開かれている。鼻歌ひとつからはじめられる。美しいと思う言葉や、自分の醜さを書き留めてもいい。誰にも禁止される筋合いはない。人生のどこかで歩みを間違えようとも、僕たちは人間らしさをいつでも取り戻すことができる。

19日。
福岡へ。大相撲九州場所が開催中ということで、どこかで鬢付油の匂いが嗅げるのではないかとワクワクしていた。しかし、新型コロナの影響もあって、あのなんとも言えない香りには出会えなかった。相撲取りたちは厳しく行動を制限されている。それに比べれば多少の自由はあるが、ツアー中の我々も街中をふらふらすることもできない。残念だけれど、またいつか、街中でふらっとあの匂いに会いたい。

20日。
4日で3公演というスケジュールを終えて帰宅。夕方から泥のように寝た。それはそれは滑らかで、パックに使っても差し支えないような泥の中に潜り込んで、目を開いてからはシンシンと身体が重かった。細胞という細胞から地面に向かって根毛が伸び、実際に地面を捕まえているわけではないが、磁力のようなもので地球と俺を重く深く繋いでいる。その一本一本から、養分を吸われているような疲労。

21日。
スタジオで作業。働きながら音楽制作をしている若手のバンドの手伝い。とても楽しい。音楽は聞き手によってフォーカスしている場所が違う。誰かの気持ちよさを増幅させると、誰かの気持ちよさが減衰することがある。そういうときは納得するまで話し合う以外にない。俺はバンドは「小さな社会」だと思うが、彼らは「会社」だと言っていた。似ているけれど、少しだけニュアンスが違って面白い。