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個人としての一般質問を「議会(機関)の質問」に――ローカル・マニフェスト推進連盟学習会

 超党派の地方議員らによるローカル・マニフェスト(LM)推進連盟は2024年2月16日、都内の早稲田大学で「その質問、何のため? 議員の質問を再検証!~議会力と議員力を磨く」と題したLM学習会を開催した。議案情報を事前にキャッチして準備すること、個人としての一般質問を議会(機関)の質問として実効性を高めることなどが強調された。

「政策実現のための質問・質疑」に

江藤俊昭著『自治を担う「フォーラム」としての議会-政策実現のための質問・質疑』(イマジン出版、2023年12月発行)。定価1980円(税込)。

 LM学習会は、現地とオンラインの併催。地方議員を中心に計約40人が参加した。
 LM学習会の講師は江藤俊昭・大正大学社会共生学部教授。江藤氏が2023年12月に出版した『自治を担う「フォーラム」としての議会-政策実現のための質問・質疑』(イマジン出版)を参考テキストにして学習会は行われた。
 同書は、「質問・質疑をチーム議会に活用する」「質問・質疑を充実させるフォーラムとしての議会」の2部、次の7章で構成されている。
(第1章)住民自治を進める質問・質疑の基礎
(第2章)質問に磨きをかける
(第3章)質疑の充実による議会力・議員力アップ
(第4章)住民自治を進める質問・質疑のもう一歩:政策サイクルを意識する
(第5章)質問・質疑を充実させるフォーラムとしての議会
(第6章)多様性に基づいた討議こそ議会の存在意義
(第7章)議会本体(議員)の多様性の意義と新たな動向

「質疑は、自分の意見を述べることはできない」

「その質問、何のため? 議員の質問を再検証!-議会改革の到達点を活用する」と題して講演を行う江藤俊昭・大正大学教授。

 学習会では江藤氏が「その質問、何のため? 議員の質問を再検証!-議会改革の到達点を活用する」と題して1時間余りにわたって講演。その後、参加者との質疑応答などが行われた。
 江藤氏はまず、「基礎の基礎」として、地方議会では「質問」と「質疑」が明確に分かれていることを指摘。「質問は、自治体の『行財政全般にわたって、執行機関に疑問点をただし、所信の表明を求めるもの』」に対し、「質疑は、議案提出者に対して、議案及び修正議案について、本会議及び委員会で問うもの」、「質疑は、自分の意見を述べることはできない」「議員同士で意見を述べ合い、論点を明確にすればよい」と説明した。

「いまそこにある議案こそ重要」

 多くの議会が一般質問を重視していることに、江藤氏は違和感があるという。「質問重視で、機関としての作動を困難にする」「いまそこにある議案こそ重要」とその理由を説明した。
 一般質問は、「最もはなやかで意義ある発言の場」(全国町村議会議長会編『議員必携』)とされるが、議案審査の重要性(質疑後の議員間討議、重要議案にかかわる参考人招致、討論の充実)を指摘。一般質問は「中長期の提案」「政策の『種』」であり、個人の質問を議会という機関の質問として位置付ける方向性を示した。
 具体例として、▽同類のテーマを調整し重層的な質問にする重複質問調整制度(神奈川県茅ケ崎市議会)▽一般質問について新人議員の研修を議会で行う模擬一般質問(茨城県取手市議会)▽定例会前に一般質問を全議員で確認し、効果的な質問にブラッシュアップする一般質問検討会議(北海道別海町議会)▽委員会代表質問(岐阜県可児市議会)ーーなどの取組みを紹介。
 事前に議案情報をチェックし、住民との意見交換会で課題を明確にしておくこと、討議ではメリット・デメリットを抉り出す(議事録に記載する)、質問後は、▽全議員による反省会でブラッシュアップ(福島県会津若松市議会)▽議会だより等で追跡調査(山梨県昭和町議会など)▽「検討する」との答弁の経過を首長側に報告させる(長野県飯綱町議会)ーーなどを強調した。

答弁案は「議会HPにも載せるべき」


勉強会後半の質疑応答(意見交換)の様子。

 後半の質疑応答(意見交換)では、答弁案や陳情・請願の扱い方などをめぐって議論。1回目の質問に対する答弁案が議員に事前に示されるケースについて江藤氏は、「ルール化したほうがいい。答弁案を全議員がもらってもいいが、議会HPにも載せるべき」「『出来レース』という批判があるかもしれないが、答弁案で論点がしぼられる。第2ラウンドからしっかり議論をすればいい」などと述べた。
 陳情・請願については、「住民からの政策提言と位置付け、意見を聞く」「重要なものは委員会の所管事務調査項目に入れていく」と方向性を話した。

閉会挨拶を行う子籠敏人・LM共同代表(東京都あきる野市議)。

 最後に子籠(こごもり)敏人・LM共同代表(東京都あきる野市議)が閉会挨拶。「いろいろなやり方、手法、切り口があると実感した」と勉強会の感想を述べた上で、参考人招致のハードルを下げるため、「あえて講演会方式でやってみた」というあきる野市議会の取組みを紹介した。
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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