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第一回-風になった仙人

今から10数年前、ごーやー荘に3~4年くらいリピーターとしてお越しになられていたお客様がいらっしゃいました。

自称「風の仙人」

関西のおっちゃん。病気を患いそれから身体が片麻痺に。それでも暑い夏は北海道に、寒い冬は沖縄にと長期滞在をするのが年中行事でした。沖縄にはミーニシ(新北風)が吹く頃にやってきます。というと「風の仙人」っぽく聞こえますね。

あちこちの旅先で旅人のファンを作っては仙人の便りを送ってました。私にも夏は北海道の消印の絵葉書が届いていました。
そしてごーやー荘リピーターの中にも彼のファンが多かったのです。旅人の教えというか年寄りの年季というか、、、障害者でありながら旅をする人への尊敬の念というか。


ただ、関西のおっちゃん。声も大きくて結構ガサツな部分も多いので、ファンが多い一方で、同宿になったお客様の中には気分を害される方もいたのも事実でした。

かく言う私も、少し疎ましく思うこともあったのです。若者たちとのゆんたくが盛り上がって酒が入ると、普段は自制しているのに一口飲むと止まらなくなり、最後は身体が動かなくなってしまい。お客様に手伝ってもらって寝室まで運ぶこともしばしば。「飲まなければ、いいおっちゃんなのに」。

そうやって私や他のお客様に迷惑をかけたなと思った翌日はしょんぼりしながら「秀さん、勘弁な」とうなだれる。でも、一緒にゆんたくした若者旅人たちが「仙人、また会いましょう!」と言ってくれると嬉しそうに応える。

そうこうして約2~3週間くらいごーやー荘に滞在した後、次の石垣島・宮古島と渡り歩いていました。


かれこれ7~8年前から、仙人の便りも届かなくなっていました。私もいつしかそういったことも忘れていました。

2年ほど前にご宿泊いただいたリピーターさんと話をしてて「仙人は今も来てますか?」と言われて、そういえばしばらく連絡がないことを思い出しました。
「うちにも風の便りはもう随分と届いてないですね。やっぱり風になったのかな?」とリピーターさん。


阪神タイガースのキャンプの頃なのでちょうど今時分でした。「◯◯って選手、あいつは伸びるぞ」なんて言いながら。

どこかで南の島に思いをはせているんでしょうかね?風の仙人。

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人生の旅コンシェルジュ

旅と宿を通じて「こんな生き方もある」「人生なんていくらでも変えることも変わることもできる」そんなふうに思ってもらえるようお手伝いができればと思います。

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