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住まい探しに関するアンケート調査

こんにちは。ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所の戸田です。

今回は、「住まい探しに関する調査」をお届けします。

新型コロナウイルスによって私たちの暮らしは大きく変わりました。度重なる外出自粛要請やまん延防止等重点措置の影響で在宅時間が増えた方も多いと思います。より快適な在宅環境を求めて住まい探しを検討した方もいるかもしれません。ただ、障害者が自立生活を始めようとする際にどのような困りごとがあるでしょうか。

そこで障がい者総合研究所では、障害者の”住まい探し”に焦点を当て、その課題を知るべくアンケートを実施しました。障害者が求める住環境や住まい探しで直面する課題とは何か探っていきます。

対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター(回答者属性は巻末をご覧ください。)
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/4/28~2021/5/7(有効回答者数:180名)


【質問1】現在の居住形態を教えてください。

質問1

■補足:障害者手帳種別割合

<身体障害者手帳保持者>

身体障害

<精神障害者保健福祉手帳保持者>

精神障害

障害者の住まい探しに関する実態を見る前に、まずは現状について尋ねてみました。アンケート回答群では、家族・親族と同居する割合は54%、一人暮らしをされている方は約43%という結果になりました。

これを障害種別(手帳の種類別)で見ると、身体障害者で親族と同居の割合は53%、精神障害者では55%とほぼ変わりませんでしたが、内訳をみると身体障害者は親と同居の割合が21%に対し、精神障害者では32%と11ポイントほど高くなりました。


【質問2】住まいに求める条件として重要なものを教えてください。(複数回答可)

質問2-2


【質問2-1】質問2でその他を選択された方は、住まいに求める条件として重要なものを具体的にお教えください(フリーコメント)

・コンビニや24時間開いているスーパーおよびコインランドリーがあること(宮城県/女性/てんかん)
・ペット飼育が許可されているかどうか(広島県/男性/下肢)
・精神疾患の場合、隣近所による偏見・差別が無い地域(例えば、イジメや部落差別等が無い地域)(神奈川県/男性/うつ)
・自然が豊かか(神奈川県/女性/その他の発達障害)
・住宅環境、騒音など(兵庫県/男性/躁うつ(双極性))
・駐車場(北海道/男性/上下肢)
・透析施設が多い地域(兵庫県/女性/腎臓)
・隣人に文句を言う人がいない(神奈川県/男性/自閉症/アスペルガー症候群(ASD))


【質問3】住まい探しにあたり、困ったときの事例を具体的に教えてください。(フリーコメント)

住まい探しで困ったことについて尋ねた質問では、困りごととしてはおおよそ以下の3つに(コメント一部抜粋)大別されるようです。

<身体特性上に関する困りごと>
・障がい者対応の物件を持つ不動産屋が少ない。(熊本県/女性/下肢)
・聴覚過敏や接触過敏といった感覚過敏があるので、実際に住んでみて、壁の薄さが気になった。(東京都/女性/発達障害)
・車椅子を使用しているため(中略)(設備など)どこかを犠牲にし不自由ながらも生活するしかありません。(広島/女性/上下肢)
・耳が聞こえないので不動産屋さんとスムーズに話し合えないこと。(大阪府/男性/聴覚障害)
・バリアフリーな賃貸物件が本当に少ない。完全バリアフリーな物件は(中略)どうしても家賃が高くなる(築浅物件になる)。(神奈川県/男性/下肢)
<制度・商慣習面での困りごと>
・ローンが簡単に組めない(東京都/男性/心臓)
・保証人の件が、一番困りました。(宮城県/女性/精神)
・部屋探しをしていた時、耳が不自由だと火事などの際分からないと困ると断られたことがあります。(神奈川県/女性/聴覚障害)
・"自宅購入する際、障害者なので団体信用保険に加入できず、フラット35でしかローンが組めなかった。(東京都/男性/視覚障害)
<資金面での困りごと>
・家賃が高い。(千葉県/男性/精神障害)
・収入が少ないから、独立出来ない。(東京都/男性/免疫)
・まとまったお金が無く諦めることが多い。(東京都/男性/発達障害)


【質問4】障害者グループホームへの居住の検討をしたことはありますか。

質問4

障害者グループホームへの居住を検討したことがあるかどうか尋ねたところ、「検討しない」「あまり検討したくない」「わからない」で約82%となり、「検討したことがある/している」「今後検討したい」の約18%を大きく上回りました。

【質問4-1】「検討したことがある/している」「今後検討したい」と回答した方にお伺いします。 検討理由について教えてください。(複数回答可)

質問4-1

【質問4-2】「検討しない」「あまり検討したくない」「わからない」と回答した方にお伺いします。「検討しない」「あまり検討したくない」「わからない」理由について教えてください。(複数回答可)

質問4-2


総研の見解

今回の調査では、回答者のおよそ43%の方が一人暮らしをされており、自立した生活を送られている方が一定数いるということがわかりました。また、「障害者グループホームの居住を検討するかどうか」という質問では「検討しない」と答えた方が80%を超えたことからも、今の生活を当面変える状況にはない人が多いということもわかりました。

住まいに求める条件について尋ねた質問では、家賃の次に「最寄り駅からの距離」や「通勤アクセス」「周辺施設」といった、住まい周辺の施設のアクセス状況に関心が高く、部屋の数や設備といった物件情報についてはその次という傾向がうかがえました。

住環境に求めることとして居住空間の快適性よりも、生活圏へのアクセス至便性が優先されるという点は特徴的だと思われます。そして、住まい探しで困ったことについて尋ねた質問には実に多くのご意見が寄せられました。多様な困りごとを大別すると主に3つの困りごとに分けられます。

①身体特性上に関する困りごと
②制度・商慣習面での困りごと
③資金面での困りごと

一つ目は障害からくる困りごととして障害種別にかかわらず多く寄せられました。主に「バリアフリー住宅が少ない」という問題です。

そして二つ目の「制度・商慣習面での困りごと」というのは、障害を理由として仲介を断られる、またローンを組むのに苦労するといったことなどです。現在は障害者差別解消法により差別的取り扱いをすることが禁止されているものの、実際にはこうした対応がとられることもまだあるようです。障害者の住まい探しは大変な苦労が伴うということがアンケートの回答からもうかがえます。

障害者グループホームの居住を検討するかどうかという質問で「検討したくない」とする回答割合が約82%となり、理由の上位に

・現状の住まい環境に満足しているため
・不慣れな環境への移行に不安を感じるため

といったことがが挙げられました。障害者は住まい探しでいろいろな苦労をしているということを知った後でみると、ようやく見つかった現状の住まい環境をそう簡単には変えることはできない、ということが見て取れるような気がします。

障害の種類も程度も一人一人違います。それゆえそれぞれの人に適した住環境も千差万別なはずですが、現状では障害者が住みやすい住宅は非常に少なく、場合によっては障害の無理解による差別や制度などの外的困難もあり住宅を入手することは多大な苦労を伴うということが分かりました。

「障害者の参加」「共生社会の実現」といったことが叫ばれる昨今、障害者の自立した生活を支える支援策の一つとして、住まいにまつわる困難を一つでも減らす施策を打ち出すことも一つの手立てになりうると思われます。

==================================■回答者属性
<性別>

住まい3

<障害種別>

住まい2

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■プロフィール
障がい者総合研究所 所長:戸田 重央

戸田さん

2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと(現atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース)※」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。※聴覚障害者専門の就労移行支援事業所「atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース

障がい者総合研究所の調査に関するお問い合わせ>
障がい者総合研究所 担当:戸田
TEL:080-3004-6108(受付時間:平日10:00-18:00)
MAIL:toda@generalpartners.co.jp











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