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【総研調査レポート】震災対策および防災に関する意識調査

首都圏に上陸した、記録的な強さの台風15号。千葉県を中心に大規模な被害を受けた地域では、今もなお復旧作業が続いている状況です。

ゼネラルパートナーズ(以下、GP)では、調査・研究機関「障がい者総合研究所」を運営しています。2018年2月には、東日本大震災から7年、熊本地震から2年を迎えるタイミングで「震災対策および防災に関する調査」を実施しており、この度同様の内容について改めて調査を行いました。

今回は9月1日の「防災の日」にちなみ調査を実施しましたが、期せずして調査集計直後に台風15号が発生し、今まさに災害時における対応の重要性が問われています。障害者が豪雨や大地震といった災害に対してどのような不安があり、どのような対策や支援を求めているのか。今後の防災対策について、調査結果からヒントを探っていきたいと思います。

【調査概要】
対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2019年9月1日~10日(有効回答者数:92名)


調査結果

<サマリー>
[1] 地震や豪雨などで被災した経験がある人の中で、自身の障害に起因した困難があった人は約4割
[2]  避難時・避難所での生活において、約6割が「障害による支障がある」と回答
[3] 障害に関連する防災対策を行っている人は約3割
[4] 災害時に、自治体や周囲の人に支援してほしいことがある人は約4割

[1] 地震や豪雨などで被災した経験がある人の中で、自身の障害に起因した困難があった人は約4割
西日本豪雨や九州北部豪雨、東日本大震災、熊本地震のような大災害に直面したことはあるかを聞いたところ、「ある」と回答した方が53%

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大災害で被災されたことのある方に対して、ご自身の障害に起因した困難はあったか聞いたところ、「あった」と回答した方が37%

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[2]  避難時・避難所での生活において、約6割が「障害による支障がある」と回答
大震災が発生したと仮定し、避難する際自身の障害による支障があるかどうかを聞いたところ、「避難時に支障があると思う」と回答した方が63%(前回調査時55%より8ポイントアップ)

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《フリーワード》※あると答えた方より抜粋
・2階に住んでいるので部屋から出る術は無いと思う(50代/男性/視覚障害)
・長時間の歩行や大混雑している場所での移動は難しいので、帰宅困難者になる可能性がある事(40代/女性/下肢機能障害)
・適切な判断、瞬時の判断が難しい(40代/男性/双極性障害)
・住まいが9階のため、エレベータが停止すると避難所への移動ができなくなる(50代/男性/上下肢機能障害)
・切羽詰まった時に筆談などしてもらえないと思うので(60代以上/女性/聴覚障害)

大震災が発生したと仮定し、避難所で生活する際自身の障害による支障があるかどうか聞いたところ、「避難所での生活に支障があると思う」と回答した方は66%(前回調査時64%より2ポイントアップ)

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《フリーワード》※あると答えた方より抜粋
・薬を飲む時に、水が確保できるか不安になる。てんかん以外にも高次脳機能障害もあるので、精神障害のケアが不安です(30代/男性/てんかん)
・被災者同士で協力しなければならない際に、気の利かなさや空気の読み間違いで避難所に居辛くならないか心配(20代/男性/注意欠陥・多動性障害)
・人工透析が必要なため、電力、水道などのインフラが壊滅状態の場合は災害から逃れたとしても死に直面すると思う(30代/女性/肝臓機能障害)
・例えば食事の配給も分からない上に、その他の諸々のルールも分からず人に迷惑をかけたり、病気のことでも困る(40代/男性/聴覚障害)
・光や音、人の気配などわずかな情報でも全てが刺激となってしまうので疲労や体調不良にはなりやすくなると思う(20代/女性/精神障害)

[3] 障害に関連する防災対策を行っている人は約3割
現在行っている防災対策のうち、自身の障害に対する備えが「ある」と回答した方は33%(前回調査時26%より7ポイントアップ)

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《フリーワード》※行っていると答えた方より抜粋
・「耳が不自由です」というカードを購入しています。それを首から下げていようと思っています。ホワイトボードも用意しています(60代以上/女性/聴覚障害)
・洋式の簡易トイレを準備している(50代/女性/下肢機能障害)
・聴覚過敏があるので常日頃からイヤホンなどを使用。避難生活になった場合は、耳栓を常用すると思う(30代/男性/高機能自閉症)
・ヘルプカードには具体的な症状、緊急連絡先を記載している(40代/男性/双極性障害)
・補装具以外の活用アイデア収集や、それらのトライ&エラーの積み重ねで検証を増やしていく(40代/男性/視覚障害)

[4] 災害時に、自治体や周囲の人に支援してほしいことがある人は約4割
災害時に、自治体や周囲の人に支援してほしいことがあるか、という質問に「ある」と回答した方は43%(前回調査時40%より3ポイントアップ)
 ●災害時に、自治体や周囲の人に支援してほしいことがあるか、という質問に「分からない」と回答した方は38%(前回調査時40%より2ポイントダウン)

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《フリーワード》※あると答えた方より抜粋
・避難所では明確な指示を行える担当者がほしい(20代/男性/注意欠陥・多動性障害)
・障がい者への理解やヘルプカードの存在を理解してほしい。ヘルプカードを持ち歩いているので、その記載内容を把握してほしい。災害時などいつもの日常と違う状況になるとパニックになったり、症状が悪化しやすいので理解してほしい(40代/男性/双極性障害)
・筆談で対応してくれたり常時サポートしてくれる方が身近にいると安心できる(40代/男性/聴覚障害)
・外見からは分からない内部障害者の支援。具体的には高齢者と変わらず、重いものを持てない、歩けないなどへのフォロー(40代/男性/心臓機能障害)
・医療機関の受診の援助。精神的に不安定になった時に、話を聞いて適切な援助をしてほしい(40代/女性/統合失調症)
・衣食住、排便、排尿、寝る、移動手段、避難所でのヘルパー(60代以上/男性/上下肢機能障害)
・避難所/集合先での運用ルールや規定を作る際に、弱者やマイノリティ向けの配慮可能な領域を相談できる機会作り。できればそういったグランドルール策定時に組み込んでもらいたい(40代/男性/視覚障害)

※回答の数値は小数点以下第一位を四捨五入しているため、グラフ画像に記載された数値の合計が100%にならない設問がございます。


障がい者総合研究所・所長の見解

被災した場合に、自身の障害による支障があるかを聞いたところ、「避難時に支障があると思う」と回答した方が63%(前回調査時55%)、「避難所での生活に支障があると思う」と回答した方は66%(前回調査時64%)でした。

一方、自身の障害に関する防災対策を行っている人は33%となり(前回調査時26%)、前回調査時よりも防災に対する備えが進んでいると見える傾向はありつつも、支障があると回答した人の割合の半分という点を踏まえると、個人が取り組める防災対策はまだまだ進んでいないと思われます。

被災時に、自治体や周囲の人に支援してほしいことがあると回答した人は43%(前回40%)であり、具体的に求める支援内容として、
①情報保障(主に聴覚障害や視覚障害など)
②移動支援、または避難誘導支援(主に上下肢障害)
③病状に応じた対応(主に心臓、腎臓などの内部障害)
④避難所などで大勢の人と生活することの困難さへの理解や、パニック時の対応など心のケア(主に精神障害、発達障害など)
などを求めています。

また、障害の種別を問わず、薬の調達への要望が見られました。災害時に自治体や周囲の人に支援してほしいことがあるか、という質問に「分からない」と回答した人が38%(前回調査時40%)いる点を鑑みると、自助、公助、共助の在り方についてまだまだ情報不足な点は否めないと思います。災害への備えに関する情報にアクセスできる環境形成はまだまだ課題と言えそうです。


今から始める災害への備え

フリーコメントでは障害当事者である自分だけでなく、「自分の子どもが助けてもらえるよう、日々の地域活動に参加し顔だけでもわかってもらえるようにしている」など、家族を守るための備えについても声が寄せられました。
障害者が必要とする防災対策を考えていくことで、同じく災害弱者となり得る高齢者や子供たち、外国人などへの対応にも応用していくことができるかもしれません。

さらに言えば誰もが被災当事者となりうるからこそ、障害の有無に限らず誰しもに共通して必要な「防災」をテーマに、違いのある人々同士が対話し、発災時に備えていくこともできるのではないでしょうか。
常日頃からご近所や地域の中で、それぞれの困りごとや心配ごとを共有してみることも、私達にできる身近な一歩です。

同時に、どうしても限界のある個人レベルの防災対策ではなく、自治体や国レベルで整備を行っていくこと、そしてその情報をどのような人に対しても公開し届けていくことが求められています。
障がい者総合研究所所長の見解にあった「自助、公助、共助の在り方」を今一度考える機会に、本調査が少しでも寄与することを願います。

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GPは、障害者が避難所や仮設住宅での生活で直面するであろう課題について、解決策を考案する「超福祉 障害✕震災ワークショップ」の開催に協力しています。

このワークショップの内容は、東京都への政策提言にまとめられる予定です。どのような課題や解決策が話し合われたのか、当日の様子についてのレポートもぜひご覧ください。


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