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【イベントレポート】「何から始めたらいい?おうちでの性教育 ~子どもからのどきっとした質問、答える準備はできていますか~」

こんにちは、グロービス・ワーキングペアレンツ・クラブ幹事の原田妙子(2019期オンライン)です。
2023年4月21日に開催したイベント「何から始めたらいい?おうちでの性教育 ~子どもからのどきっとした質問、答える準備はできていますか~」のレポートをお送りします!

登壇者ご略歴:
大石真那さん
兵庫県神戸市出身。明石市在住。
県立長田高校、神戸大学医学部保健学科卒業後、2004年に保健師として兵庫県庁に入職。2017年の第4子出産を機に性教育の重要性に気づき、主に乳幼児の保護者向けの性教育講座を開始。2021年に兵庫県を退職し、「生」教育アドバイザーとして学校等で各種性教育講座を開催している。2021年5月「げっけいのはなし いのちのはなし」(みらいパブリッシング)出版。2022年4月にはNPO法人HIKIDASHIを設立し、「子ども達の生きる力を引き出す」をコンセプトに活動中。
NPO法人HIKIDASHI (wordpress.com)
著書「げっけいのはなし いのちのはなし」(文末にリンクあり)

以下についてお話をいただきました。

  • 日本の性教育を取り巻く実態

  • 家庭での性教育をおすすめする理由

  • 「では、具体的に明日からどうしよう?」子どもの年齢に合わせた提案

◆日本の性教育を取り巻く実態

日本では2000年代の七生養護学校事件をきっかけに、性教育の一部だけが切り取られてバッシングを受け、「早くから教えると興味を持ってしまう」「寝た子を起こすな」という風潮が広まってしまいました。
20年たった今も、学習指導要領上は、「受精・妊娠については取り扱うが、それに至る経過は取り扱わないものとする」という、いわゆる歯止め規定が残っています。
子どもたちとしては、取り扱われない内容は気になりますが、インターネットで情報が氾濫する現代において、自力で調べた結果、誤った情報に触れてしまうリスクも高いのです。

その反面、海外では、ユネスコが「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を発行しています。ガイダンスのキーコンセプトは以下の8つ。

1.人間関係
2.価値観・人権・文化・セクシュアリティ
3.ジェンダーの理解
4.暴力と安全確保
5.健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
6.人間のからだと発達
7.セクシュアリティと性的行動
8.性と生殖に関する健康

-国際セクシュアリティ教育ガイダンス(https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000374167/

6~7に主眼が置かれがちな日本と異なり、人権教育(ジェンダーの理解など)、安全教育(暴力と安全確保など)の側面が協調されています。
このガイダンスの対象になるのは、実は5歳から。包括的性教育を幼児期から積み重ねる海外に比べ、日本での性教育は大きく遅れている、という現状があります。

◆家庭での性教育をおすすめする理由

上記の、学校教育での限界に加え、大石さんはさらに4点の利点を教えてくれました。

利点①乳幼児期の子どもは素直に話を聞いてくれる

思春期になると子どもはデフォルトとして親の話を素直に聞きません。性の話を親子で初めてするタイミングとしては、ハードルが高めです。
その反面、乳幼児期は、「ゾウの鼻はなんで長いの?」という疑問と同じように、からだの仕組みとして質問し、受け取ってくれるので、親としても話す心理的ハードルが低くなります。

利点②性犯罪から身を守る方法を早くから伝えられる

性犯罪の被害は、思春期以降とは限りません。
幼児期の子どもが被害者になるケースも多数ある上に、何をされているのかわからないまま被害に遭う、遭い続ける、ということも起きています。そして女児に限らず、男児も被害に遭う可能性があります。また、小さい子ほど、加害者が顔見知りである率も高くなります。
被害者にしない、加害者にしないためにも、「自分の体はどうなっているのか」「おかしいと感じた時にはどうすればいいのか」「人の体をどう尊重したらいいか」を小さいころから学ぶことが重要です。

利点③家庭内・保護者自身の価値観を見直すきっかけになる

特に性に関する価値観は、保護者の価値観(タブー観、ジェンダー観)の影響を大きく受けます。ことばにしなくても、態度の端々から出てしまうものです。
「この価値観を子どもに引き継ぎたいか?」と、立ち止まって考える、そんなきっかけにもなります。

利点④子どもに合わせて、何度でも伝えることができる

学校で外部講師の方の講演を聞いても、一過性で終わってしまいますし、子どもの発達や理解度によっては、なかなかピンときません。一方で、家庭で話すことで、子ども自身の理解度・興味関心に合わせて、何度でも伝えることができます。子どもの疑問に正直に答えることで、親子の信頼関係アップにもつながります!

◆「では、具体的に明日からどうしよう?」子どもの年齢に合わせた提案

ここでは乳児期・幼児期・思春期それぞれの伝え方をご紹介します。

乳児期

心地よいスキンシップをたくさんしてあげましょう。心地よいスキンシップをたくさん経験することで、「変な触られ方をしたな」「この触られ方は嫌だな」という感覚が育ち、性犯罪から身を守ることにつながります。
スキンシップの際には、「子どもの体を誰がどう触るのか、決める権利は子ども自身にある」ということを、保護者が理解しておきましょう。スキンシップにも同意をとる、子どもが嫌と言ったら受け止めるということを、保護者自身がよく認識しておくことが重要です。
スキンシップにも同意?と思われるかもしれません。ただ、NOを言う・同意を取るという習慣がない子は、今後成長して、性的同意が必要になる場面で、いきなり意思表示をすることは難しくなります。自分自身と人を尊重するために必要なステップと考えるといいそうです。

幼児期

何から話していいか迷ったら、まずはお子さんが「大切ないのちなんだよ」ということを伝えてあげましょう。小さいころから「自分の存在は大事」と実感することは、自分自身、そして周りの人の尊重にもつながります。
体のつくりや正しい名称、プライベートゾーンについて教えてあげるのも重要です。大石さんの著書のような絵本も強い味方になります!そして下着の洗い方を教えるにもいい時期です。
どきっとする質問が来るときもありますが、質問には正直に、淡々と答えるよう心がけましょう。保護者側の心の準備も忘れずに。

幼児期になると、自分でプライベートゾーンを触ることもあります。見つけたときは慌てたり止めたりせず、約束事(ひとりになれる場所で、きれいな手で優しく触ること)を教えてあげましょう。

思春期

小学校1~2年生ぐらいから、第二次性徴について伝えたり、芸能人の妊娠等のニュースをきっかけに会話を持ってみましょう。この時期は自分で調べ始めるので、すべてを親から話そうと思わずに、おすすめの本やサイトを伝えるだけでも大丈夫です。

皆さんから寄せられた質問

おわりに、事前に寄せられた質問に答えていただきました。

Q: 生理について子どもと話す時期はいつ頃がいい?
A: お子さんが理解できるのであればいつでも。子どもの性別にかかわらず、保護者(母親)も生理に伴う体調の変化を話していけば、子どもも学んだり関心を持ったりする。もちろん、男の子にも生理について知る機会を作ることが大切!

Q: 同性の親から話したほうがいい?異性の親から話すための工夫は?
A: 年齢による。幼児期は親の性別に関わらず、同じように接することができる(幼児期から始めるメリットでもある)。思春期になると、同性の親の方が抵抗は少ないかもしれない。

Q: パートナーを巻き込むには?
A: 諦めずに、聞いてきたことをシェアしたり、おすすめの書籍を渡したりしてみては。

Q: 避妊の必要性について、いつから伝えたらいい?
A: 国際セクシュアリティ教育ガイダンスによれば、推奨は9-12歳。小学校高学年でも十分に理解できる。小さいころから話ができていれば、淡々と伝えることができる。避妊についてだけ話すと「避妊すればセックスしていい」というメッセージにもなりかねないので、避妊に付随したこと(性的同意の取り方、女性用の避妊方法)も伝えておくといい。親としては、「自分や相手の心や体を大切にする選択ができるようになってほしい」というメッセージを伝えられるといいですね。

Q: 思春期の子どもが、アダルトサイトを見ていた…
A: 興味があることに理解は示しつつ、アダルトコンテンツはあくまで大人向けの創作物であり、本来の在り方とは違う、だから親としては見てほしくない、ということを伝えると良い。

Q: 幼児期の子どもがプライベートゾーンを触っているときにどう声を掛けたらいい?
A: 違和感があるか(かゆい・痛いなど)を確認してから、約束事(ひとりになれる場所で、きれいな手で優しく)を伝えてみては。プライベートゾーンを「汚いところ」「触ってはいけないところ」だと捉えるのではなく、あくまで「大切なところ」「触ると気持ちが良かったり落ち着くのは当然だよね」というメッセージが伝わると良い。

Q: スキンシップの同意について、保護者自身は気を付けているが、知人や親戚が子どもの頬などを同意なく触るときに、どうしたらいい?
A: その場で言い出せないときには、子どもに対して「今のは嫌じゃなかった?嫌だったら嫌と言っていいんだよ」「嫌だったら、お母さん(お父さん)から言っておくからね」とフォローして。

普段気になりつつも聞けないこの話題。参加者の方々にとっても、大きな学びになったと思います!
大石さんの立ち上げたNPOは2023年4月で1周年。
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次回のイベントでも、お待ちしております!


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