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こちらは天然香料を使っています

私はあくまでフレグランスの消費者であり、特別何かを学んだわけでもなく、解像度だって高いわけではない。だからこれから書くことは的を得ていないかもしれない。

フレグランスの販売フロアで最近よく耳にする言葉がある。

「こちらは天然香料を使っているんですよ」

社交辞令として「そうなんですね~」という返事はするものの、何か釈然としない。
心の中では「だから?」と思っている。

言わんとすることはわかる。

このフレグランスは高価ですが、天然香料だから香りが良いし、希少性や手間をかけている分だけ良いモノなんです!

…と、おそらくそういうことだろう。

フレグランスは複数の香料を組み合わせて作られており、そのレシピが重要なのであって、いくら天然の希少な香料を使っていてもバランスを欠いたレシピでは良い香りならない。
だから私は天然香料だろうが合成香料だろうが、最終的に出来上がったものが良ければすべてよしなのではないかと思っている。

フレグランスに良く使われるローズやジャスミン、ユリその他多くの生花を嗅いでみればわかるとおり、天然の香りは合成香料にない”雑味”のようなものが感じられる。その雑味を含んだすべてが一体となってすばらしい芳香となるものの、フレグランスの性質を考えれば、雑味がマイナスとなることもあるはずだ。
天然香料を使えば必ず良いフレグランスになるとは限らないと私は思っている。

問題は価格だ。
天然香料を使えば、それは当然価格に反映されるだろう。
もしも天然香料1:合成香料9の割合で配合されていても「天然香料が使われています」に嘘はなく、良いモノを買うという満足感を以て「じゃあこの価格になるのは当然だね」と消費者は購入する。

おりしも、SNSに「香水の価格が高すぎるのではないか」という投稿が流れてきた。
フレグランスは様々なコストを加味して価格が決定されているが、純粋に液体の部分の原価はそれほど高いものではないとも聞く。
フレグランスというプロダクトの性質上、一般消費者にはどういった香料がどのくらいの割合で配合されているのか全くわからない。天然香料がたった0.1%だったとしても「天然香料を使っているから高いんです」と言われてしまえばそれまでだ。
かといって著作権で保護されないフレグランスに成分分析表を添付することなど出来ない。


もっとも、Luca Turinのような特別な嗅覚の持ち主であれば、謳い文句に偽りがあるかどうかはわかるかもしれないが、私のような凡人には複数の香料を混ぜ合わせたフレグランスの原材料の違いなどわかるわけがないのだ。


中身がわからないフレグランスというプロダクトには、ブランドに絶対的な誠実性が求められている。
天然香料が免罪符となって、適正以上の価格がつけられてはいないだろうか、天然香料だからという「天然信仰」で私たちは目を曇らせてはいないだろうか。

「こちらは天然香料を使っているんですよ」
という接客に、私は様々な思いを巡らせている。


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