「集中できる」環境探し

 こんにちは、あるいは、こんばんは。
 文系大学院のアーニャます。
 今回は、大学院生生活のはじめにやっておきたいことのうち、「自分の勉強場所を探そう」という話をしてみたいと思います。
 これは学部生として入学したばかりの、大学一年生にとっても大事なことかもしれません。

 今回は私自身の体験談が長くなりそうなので、後半「個人的な経験談」は読み流してください。

 きっかけは、このツイート

いいか、しんのすけ
大学院生活のはじめは、どこで勉強するか、どこで本を読むかとか、「自分が集中できる場所」を発見することが大事なんだぞ

 「自分が集中できる場所」を探すこと。
 今振り返ってみると、それにたどり着いてからようやく研究が順調に進み始めたな…というのが実感として思うところです。

 このツイート、思ったより多くの方に反応をいただきました。
 皆さんそれぞれの体験のなかで、大事だと思っておられる方も多いのではないかと思います。
 では、その「場所」とはどこになるのか。

 自分の「集中できる場所」がどこなのか。
 これを探し回ること、そして「自分自身の生活スタイルや、勉強のスタイルがどのようなものか」をよく把握することが大事なことかもしれません。

今回はそんなお話です。

「集中できる場所」探し


 文系学問は、メリットとデメリットが共存しています。
 「大学の研究室や研究所の実験器具を使わなければ研究できない」といった理系分野とは少々異なります。
 大量の文献を読み込んだり、論文にまとめたりという作業はあるにせよ、文献を読んだりパソコン作業をする、そのメインの作業は確かに日本全国でできます。

 それはメリットとも言えますし、「決まった場所がない」というデメリットでもあります。


 全国に「移動図書館」くらいの文献を持ち歩けば、一応全世界で論文が書けるということになったりします。(※もちろん、フィールドワークや実験がある分野もあります)
 すると、日常的に研究や勉強をする場所が必ずしも「研究室」に限らないで過ごすことができます。簡単に挙げると以下の通り。

①自宅の勉強机
②喫茶店やファミレス
③図書館
④研究室の自分の机

 なぜ①~④の順番なのか。それは、私個人がこの順番で試してみたからにほかなりません。

 これらの研究環境は、いずれも一長一短でしょう。
 「自宅」は文献の置き場には困りませんが、一人暮らしの場合、「生活空間と勉強場所が同じで、気持ちが切り替えられない!」と悩む方もおられます。
 「喫茶店やファミレス」は、なにより調理もなく食事がとれます。朝から晩まで空腹もなくすごせます。そして、毎回お店を変えることで、気分転換をしやすいというメリットもあります。ただ、長時間居座ると気まずいですし、あまりマナーとしてはよくありません。もちろん、図書館や自宅と違って、出費もかさみます。
 「図書館」は便利ですよね。もちろん必要な文献にはすぐアクセスできます。図書館によっては個人机があったり、個室を使える場所もあります。空調も効いていて、電源もあります。ただ、閉館日があったり、開館時間には制限があります。それに、「自分の場所」として連日占有できるわけではないため、毎日パソコンや本を持ち帰る必要があります。
 「研究室の自分の机」ですが、これは大学院ごとにかなり環境が違うと思います。基本的には、一室に机(図書館や会社のオフィスのような)が複数個並んでいて、そのうちの一つが自分のものとして指定されている形です。 これは占有できますから、本を置いたり、資料を置いたままで帰ることもできます。可能であればその場で食事をしたりもできますし、ポットをもちこんでコーヒーを飲むこともできます。「図書館から研究室」へと書籍を運ぶ作業は、「図書館から自宅」へと運ぶよりは少々楽です。
 ただ、大学によってその研究室そのものの施設に入構できる時間が決まっていたり、そもそも専用の机がない大学もあるようです。

 ここまで書いてみて思うのは、一長一短であるということです。
 気分転換をはかるために喫茶店に行ってもよし、研究室でも自宅でも、それぞれの研究の仕方や生活リズムに合わせて選んでみてよいと思います。
 次に、私の事例を書いておきたいと思います。


個人的な経験談

 
 自分が「集中できる場所」を探すことが大事なんだぞ!と言った私自身はというと、定着した場所を発見するまでに一年半かかりました。

 

 私が大学院に入学したのは、2020年4月。 
まさに、「コロナ禍」のスタートの時期。3月に行われた学部の卒業式も、簡易的なものに変わりました。

 さらに、学部→大学院で、学校を変えました。ですから、引越しと新生活とコロナ禍が一挙にやってきたわけです。大学院のゼミも中止になって、前期はレポート課題だけで終わってしまいました。

 「コロナ禍の大学」のイメージがわかない方もいるかもしれませんから、もう少しだけ説明しておきます。

 そもそも「授業があるから大学に行かなきゃ」という義務が、修士2年間の期間、一度も発生しませんでした。希望すればすべて、オンライン受講が可能。私と同様に、他地域の他大学から入学した同級生は、結局のところ修士課程修了まで、引越しすることなく実家で修了を迎えた方もおられました。私自身、同級生と直接会えたのは、修士2年生の後半に数回と、修了式だけでした。

 そのため、私の勉強場所も「自宅」→「喫茶店、ファミレス」→「図書館」→「研究室の自分の机」と変遷していったのも、コロナ禍の社会情勢がそのまま影響しています。研究室の便利さに気づくまで、1年半かかりました。

 修士課程の一年生のタイミングでは、街じゅうの喫茶店、ファミレス、ファストフード店全部に行ったのではないかと思います。それくらい、自分にはしっくりくるところがなかったとも言えますが…。
 少なくとも「家では、ついだらけてしまう」タイプなことは、この時によくわかりました

 修士課程2年生の夏休みに入って、最終的に行き着いた先は「研究室の自分の机」でした。

 しかし、この文章を読んでくださっている皆さんそれぞれの、「集中しやすい環境」「楽な環境」が何なのかという点はそれぞれです。

「自分自身の生活スタイルや、勉強のスタイルがどのようなものか」

をよく把握することが大事なことのように思います。

 では、「研究室の自分の机」に行き着いた私が、その環境に向いていた理由を自分なりに振り返ってみます。
 まず、私のいう「研究室の自分の机」がどのようなものか、基本情報を書いておきます。

・研究室一室内に約4,5個の机
・机は、「市役所の机」のような一般的なデスク
・研究室の合鍵を持っているので、一人で入れる
・自分以外のほかの机の人たちは、基本的に大学に来ないので自分以外利用者がいない
・施設は深夜、土日でも関係なく使用可能
・図書館まで徒歩3分
・研究室内に電気ケトルや洗面台がある
・キャンパスから下宿まで電車で10分(と徒歩15分)

といったところでしょうか。

 結論からいうと、私は「マイペースで過ごす」こと、「決まった生活リズムを繰りかえす」こと、「体力を消耗しすぎない」ことが向いていたようです。

 自分にとって「研究室の机」が向いていた理由は以下の通りです。

・オンオフの切り替えができる
・資料の持ち運びの必要がない
・閉館日がない
・食事や休憩が容易にできる
・「人の動き」が自分を邪魔することがない

 これらになると思います。

 まず、「オンオフの切り替え」について。
 私は、妙に集中しすぎてしまうタイプなようです。一度スイッチが入ると、何時間でも机に向かってしまい、気が付いたら朝に…なんていうことがよくありました。結果として睡眠時間がとれずに体調を崩してしまったこともよくありました。
 私の研究室は24時間滞在しても(一応)怒られない施設です。ただし、帰るには電車に乗らなくてはいけません。下宿まで徒歩だと、4,50分。
 すると、「終電には乗らないと…!」と、無理矢理にも集中のスイッチを切って電車に乗るようになりました。当初は、終電前にスマホのアラームを鳴らさないと、終電を逃してしまうということが時々ありましたが…。

 次に「資料の持ち運びの必要がない」という点について。
 私は、どうも「あれも、これも読まなきゃ…!」と思ってしまう性格なようです。なので、喫茶店やファミレスに通っていた時期は、リュックやカバンが本や資料でいっぱいになっていて、毎日登山のような格好になっていました。さらに、読み切れなかった資料を持ち帰ってくるせいで、結局家でも本を読み始めてしまって…と、切り替えがどうもできませんでした。
 これが、「研究室の机に資料を置いてかえる」「本を読むのも、作業をするのも研究室」と決めたことで、研究用の資料を一切自宅に置かないようにしました。「勉強・研究する場所=自分の机」「下宿=寝てご飯食べるだけ」というスイッチの切り替えをつくりだすことができました。人からきたメールの返信から何から、全部研究室でやることにするくらい、極端に切り分けました。
 最終的に、研究室の私の机は、ミニ図書館のような状態になりました。

 「閉館日がない」「食事や休憩が容易にできる」「人の動きが自分を邪魔することがない
 これらは、自分の集中を邪魔する要素を減らすことができたという点で利点がありました。
 私はおそらく、「かなりマイペース」な人間なようです。
 「研究したい気分になったから研究するのであって、9時の開店時間にぴったり研究したい気分になるわけじゃない!」という、けっこうわがままなタイプです。
 それが、年中無休で24時間滞在できる研究室の利点が活きました。
 そして、私はもとから大変に人見知りです。人と話すだけで緊張します。それらを一切排除することができたというのも、私には向いていました。
 私の研究室の机は、私以外はほとんど利用者がいませんでした。なので、研究室と下宿との往復だけの生活には、会話という会話がありませんでした。
 喫茶店やファミレスに通うことは、店員さんに気を使ったり、長居をする申し訳なさがあったりします。「トイレに行きたい」と思ったときに「使用中」というのも、いちいち面倒です。図書館にいても、人がいる雑音は自然と目と耳に入ってきますから、ちょっと厄介です。
 もちろん、人とかかわる以上は、服装などの見た目を気にしたりする必要もあります。そういう必要もありません。
 ひっそりとした研究室では、コーヒーは気が向いたときに飲めます。もちろん、市販の食べ物も持ち込めます。
 毎日同じものを食べていても、同じものを飲んでいても、似たような服装であっても誰にも気づかれません。
 個人的に、毎日同じものを食べていても飽きないので、ずっと同じ食べ物を食べ続けていました。服装はもう全く考えなくなって、冬場は色違いのタートルネックが何枚も家に常備されていました。(※これらは修論執筆時期の話です)

 その結果として
・「終電までには研究室から帰る」
→睡眠時間がとれる
・「作業はすべて研究室で行い、下宿では生活のために帰る」
→強制的にスイッチの切り替えができる
・「食事も服装もマイペースに過ごせる」
→人に気を遣う苦労をできるだけ削る

という点で、自分のペースに合わせた研究環境が、結局のところ「研究室の自分の机”だった”」ということなんだと思います。

あくまで、「私の場合はそうだった」というだけです。

結局のところ「自分にあう研究環境」は人それぞれでしょう。
友人とわいわい会話があったほうがいいかもしれませんし、店内BGMが流れていたり、家から近い喫茶店が好き…という人もいるでしょう。

 いずれにしても「自分の生活リズム」まで考えたうえで、自分に合う環境を探しまわってみてほしいと思います。


 ちなみに、私の「最適の研究環境」は、修士課程2年生後半の、修論執筆には役立ちましたが、私の「世間知らず」度合いをかなり加速させてしまった元凶にもなりました。

 みなさんにとって、「最適の研究環境」が見つかることを祈っております。



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