友達を騙して「呪い返し師-塩子誕生」を観た話

こんちわ。

一昨日、大学の友人Hに「一緒に『呪い返し師ー塩子誕生』観にいこー?」と送ったところ、「なんやそれ!タイミング合ったらいこ」と返信が。早速行くことになりました。
その友人は当日元気が無かったらしく、彼の家まで迎えに行ったところ、そこでは僕の友達H、R、Yの3人が談笑していました。
なんでもRとIは最近スピリチュアルにハマっているらしく、それについて熱い哲学的議論を深めていたとのこと。それは好都合。
4人で家を発つと、Hが「それでどんな貞子の映画なんや?」と聞いてきます。
ごめん。その映画、文字通りカルト映画なんだよね。
伽椰子、貞子、塩子だと思った?残念。だから僕たちは今から最寄りのTOHOシネマズ西宮OSではなくMOVIXあまがさきに向かっているんです。

「塩子ってホラー映画じゃないん?」
まぁまぁまぁ・・・
「もう『スズメの戸締り』観ようよ」
まぁまぁまぁ・・・
かくして僕は、バスの中で「塩子はどんなヒーローであってほしいか」「最強の塩子像を作ろう」といった話題で盛り上がる友達をなだめつつ劇場まで連れ出したのでした。
流石に彼らが胡散臭さに気付いたんでコンビニで酒とつまみを買ってから滅多に人が来ない客席なんで、そこでしこたま酒を飲んでから観始めたんや。
劇場が暗くなると、日活のロゴが現れ、そしてつぎに金色の胡散臭いアニメーションから、ドン!

「さっきからコソコソしてたのはこれか…」
思わずこう零した神学部のYくん。そうです。今日レビューしていくのはカルト映画でおなじみ幸福の科学の「呪い返し師ー塩子誕生」です。

映画は3年前の鎌倉から始まります。開始からBGMが流れ出して一分ぐらいしたところで、なんかそれに女性の歌がついてたことに気付きました。何だろうと思って聞いてみると「唯物論者の哀しさよ~彼らは~無間地獄に~」とか聞こえてきたんで、もうかったるくなって歌を聴くのをやめました。しばらくBGMに合わせて、なんか仏像を拝む女がイメビ風に流れていきます。真面目に聴いていなくても、彼女が献花台の前に立ってもなお、単調なテンポで韻も踏まない歌が説教を続けているのがわかりました。
「・・・は~、北条政子の~・・・♪」
!?
北条政子!?毎週欠かさず『鎌倉殿の13人』を視聴していた僕はいきなり出てきた北条政子の名に拍子抜けしてしまいました。え?この歌で鎌倉の歴史が触れられていて、それが大きな伏線になるというのか?大事な伏線を聞き逃したのではないかという心配をよそに、女は能天気にコンクリのデカい建物に入っていきます。

注:”精舎”は教団(幸福の科学)でキリスト教の教会やイスラム教のモスクにあたる場所

オオォーイ!!!
初っ端から宗教色ぶっ放してくるなよ!洗脳目的の友達に騙されて来た人はここで丁度友達の陰謀に気付いて席を立っているところだぞ!そんなことはお構いなしに、中川隆、じゃない大川隆法のエルカンターレ像、じゃない金ピカたかしちゃん人形(¥300万~)をねっとりと映していきます。

女が合掌に満足したところで、舞台はどこぞの高校に移ります。
いやちょっと待て。北条政子は何だったんだよ?まさか今年の大河視聴者を惹きつけるためとか?いやいや、どうせ信者にノルマ課して動員数のサバを読んでるのにそんな小癪な工作で動員数が上がるわけないでしょ。そんなことはお茶女出身の脚本家なら百も承知なはず。余談ですが、本作の脚本を務める大川咲也加氏は大川隆法の娘さんです。ワスカバジシステムですね。

ほいで、高校にあるオカルト研究会での、最初のシーンでの会話がこちら。
キャッキャ!
キャッサバ

「呪い返し師って、本当にあるんだ~!」
すいません。聞く気がなかった僕も悪いんですが、音量調節の関係かわかりませんがともかく会話の内容を聞き取れませんでした。この会話でオカルト部員たちは「7のつく日の7時7分に儀式をすると塩子を召喚できる」ということを雑誌を通じて知ったことがわかるそうです。後で調べて知りました。
その後、なんやかんやあってオカ研所属の主人公が授業中に黒い痣に襲われ倒れ、保健室でオカ研の友人に囲まれつつ目覚めます。彼女は友人に「今は消えてるけど、首筋に黒い痣があって…」と教えられると、再び痣が浮かび上がり…!って、別に痣を一旦消す必要なかったんじゃないかな。

それに驚愕した主人公は、悲鳴をあげ、そこに
「死ね!」「死ね!」「シネ・・・」(((エコー)))
という声が…!
すみません、90年代のオカルト番組ですか?
演出がコッテコテで古すぎる。僕は小学生の頃体育座りで見せられるダメゼッタイ系の教育ビデオを思い出しましたよ。
その後特に一悶着もなく塩子にすがりつく召喚の儀式を執り行うオカ研一行。7の日に塩子が召喚された日まで、主人公は呪いにどう立ち向かうのか...!みたいな展開だったら面白くなりそうだったし、伽椰子、貞子、塩子と並んだかもしれないですね。ごめんね、Hくん。
召喚中、「来るぞ~来たぞ~」という著しく間の抜けた入場曲に「あっ、だめだ」と感じたあなた。まだ早い。あと4回は聞く羽目になるぞ!

その後別に何の支障もなく、Uber Eatsの配達員の如く召喚に応じて現れた塩子。あっ、鎌倉イメビ女だ…!オカ研の一人が鎌倉イメビ女をつついて「生きてる!」と大騒ぎするここだけはリアルなJKみのある描写を挟みつつ、主人公は塩子に質問をします。しかしイメビ女は「召喚されたからには儀式に関する質問から受け付けません!」と突っぱねる。仕方なく儀式をするよう要求すると、塩子が一言。
「そんなことより素うどん食べたい」
はい、スベりましたね。勿論うどん代500円はJK持ちです。

特に何の支障もなく主人公から生き霊を引きずり出した鎌倉イメビ女は、特に何の支障もなくその黒い靄の正体を看破します。「あなたは、同級生の(名前忘れた)ね!」
なんでわかったのぉ…?その質問は野暮なのでしょうね。塩子はさいきょーだから!呪い、呪いへの抵抗、そして犯人の特定。この3つの呪怨ものの醍醐味を容赦なく捨てるさまは、さながらカニを買ったのに蟹味噌のある胴体を捨ててるような、そういう1200万人の世界宗教らしい余裕を感じさせます。恐らく「犯人を見つけ出すなんて、塩子様すご~い!」となるのが一般的な展開なんでしょうが、犯人に意外性、というかそもそも初めましての人を紹介されても、「よろしくお願いします」という言葉の方がこちらの反応としては自然な気がします。
看破されたJKが特に何の支障もなく姿を現します。
誰?
いやだから靄で「誰かな~誰かな~」って強調されても、正体が全く知らない人だったら、相席食堂のゲストが知らない人だった時の千鳥の大悟みたいな反応しかできないですって。
「大人しめの子じゃ~ん、私なんか怒らすことしたっけ~?」
「お前、小生意気で癪に障るんだよ!」
すいません、咲也加さん、中学生にゴーストライター頼みました?展開が読める、というかテンプレート通りどころか、テンプレートの登場人物の名前を書き換えただけのように見えますし、なんならテンプレート自体大幅に割愛していると言っても過言ではないですよね。

そして、JKが恨みを募らせた背景が回想されます。
中間テスト:主人公→1位 生き霊JK→13位 JK「死ね!」
主人公が男と談笑して帰路につく JK「死ね!」
ただの陰キャじゃん
なんなら痣昏倒事件後は何もしていないし、塩子召喚も妨害してない上、塩子に正体見破られたらあっさり姿を現していますからね。実はいい子説ある。
というかさっきから主人公のこと「主人公」って呼んでますけど、彼女の名前を覚えてないんですよね。これに関しては僕は悪くないです。だって主人公の人柄を推し量る材料がさっきの陰キャの回想しかないんですも~ん。人物描写はもうとっくに月並みの域を超えて、「いらすとやの『女子高生』のダウンロードページの概要欄をコピペした」と言われても信じるレベル。
そして、長々と説教垂れる塩子にJKは「うるさい!!!」と叫ぶ!
わかるよ、(名前忘れた)ちゃん。まだ30分しかたってないのにおじさんもその気持ちだ。
まぁその後難なく、ZとIを重ねた術式を出して撃退。主人公も悪いところがあったというゆるふわDD論をかましつつ風に乗って退散。いやお前儀式に関係ないことは言わないちゃうんか?主人公も無事塩子の虜となったのでした。めでたしめでたし。いや去る前に「うどんゴチです」くらいは言っとかないとダメだよ。

みんなも虜になったよね?じゃあよかろう、イメビを見せてあげよう、とばかりにくっさい歌をBGMに華道をする塩子をたっぷり映してくれます。そして時折こんなシーンも挟まれます。
・ヤクザの「スムーズにやれ言うたやろがい!」と凄む恫喝シーン
・「好きだ」と指輪を差し出すスーツの男
どういうことなの・・・。そう混乱している間にイメビタイムは終わり。老婆の家にシーンが移ります。
ここで僕は、Yにこの老婆が詐欺に遭うか遭わないかで賭けをすることを提案。しかし、「遭わない訳ないだろ」といわれ賭けの話はナシに。結果、老婆は300万取られてしまったのでした。ちゃんちゃん。
いや大型エルカンターレ像の値段とどっこいどっこいじゃねぇか。
まぁその後、老婆は3人(主人公、取り巻きA、取り巻きB)いるオカ研のうちの取り巻きAの祖母だったらしく、警察を呼ぶ前に塩子を呼びましたとさ。まぁ難なく塩子はヤクザの事務所に降臨するわけですよ。そこにすかさず駆けつけるオカ研一行!!
ってなんでやねん!!
どうやって犯人の居場所見つけたんだよ。捜査能力が警察上回っちゃってんじゃん。でまぁヤクザに憑いてる悪霊を祓って改心させたのでした。このヤクザ組織の他の組員は祓ってないので多分また詐欺とか起こりますね。
ほいで老婆にだまし取られた金を返しに向かった取り巻きAが、「おばあちゃんごめんね」と義務的に号泣。なお号泣していた顔はおばあちゃんの顔で隠していたため恐らく涙は出てない模様。ここには涙の演出の目薬すら節約する世界宗教のSDGsへの配慮が窺えます。

イメビの時間だゴラァ!!
今回のイメビは湘南の砂浜。主人公が母親と一緒のところをカメラで撮るようイメビ撮影中の塩子に依頼します。いやあんだけ事件現場で同席しておいて気づかない訳ないだろ。カメラを構える塩子は、「呪いかぁ…。」と独り言を漏らします。
・・・・・・。
はよ撮れや
撮影に長時間待たせた親子に、塩子はこう声をかけます。
嫉妬には気を付けて。
wwwwwwwww
Hくんは声を押し殺して嗤っていました。

ところでイメビタイムでは塩子は一般的な社会生活を送っているさまが描かれるので、塩子は霊的な存在ではなく一人間なんですよね。人間だったらLINEやってるだろ。7のつく日とか言わずLINEで解決頼め。

イメビタイムが終了すると取り巻きBが近所でDVを発見します。「私が力になりましょうか?」と声をかける取り巻きBに、母親は無言で頷きます。オカ研と一緒に、塩子を呼ぶことにしました。
塩子を呼ぶことにしましたじゃねぇ!児相に通報しろ!
そいでなんかDV夫に憑いてるらしい赤鬼が「俺は神仏じゃなく強い奴の下につくんだ」とか言うので、力でねじ伏せて塩子の下につかせましたとさ

多分鬼は強い者に従ってるだけなんで、より強い悪人が塩子を倒したり塩子が死んだりすれば多分また悪いことしますね。ちなみに鬼の声優は某有名な方です。
そうするとなんか今度は塩子が、「母親も悪いじゃ~ん」と言いだします。実は母親の方も、DVのはけ口に子どもを虐待していたのです…!
そしてその母親に塩子は
「夫の悩みに寄り添わなかったあなたは救いようのない悪。あなたが勝手に解決して。」と立ち去らんとするのです
いや祓えよ。今のお前ただの無責任家庭介入イメビ説教おばさんじゃん
流石に子どもに何とかしてくれと懇願されたので母親も祓いましたとさ。めでたしめでた

しで終わると思った?ねぇねぇめでたしめでたしで終わると思った?残念、イメビタイムだ。
また死んだ目で甘ったるい女声の平坦説教ソングを聞いていると、隣の席からこんな声が聞こえてきました。
「塩子にバキュームフ○ラしてもらいてぇ…!」
声の主はY(神学部)でした。やめとけ、Y!さっき塩子クズ回見せられたばっかだろ!夫婦喧嘩とかしたら絶対めんどくさいぞ!多分あいつは自分が正義だと信じたらそれを絶対に疑わないタイプだ!
そう伝えた僕に、彼はフル勃起したおちんちんを見せてくれました。とても丸かったです。

次の敵は教授のようです。「人魂やUFOは全て自然現象で説明できる」と説く教授に、学生が突っかかります。「私は幼少期に祖父の人魂に別れを告げられたことがあるんです。教授の主張に沿ったレポートを書くことはできません。」
それに対し、教授はこう返します。「科学的なことを書けないのなら、単位に値しない。」
留年の危機に直面した学生は、オカ研に相談するのでした。
信仰とは独立した科学的レポートの提出を拒んでJKに助けを求める大学生の図

ギア上げてきたな」Hが呟きました。
ちなみに幸福の科学では、暴行などよりも唯物論の流布の方が罪が大きいそうです。
はいまぁ塩子が教授室に召喚されるわけですね。多分塩子も毎度毎度オカ研に呼び出されて「またこいつらか…」って思ってるよ絶対。そいでオカルト現象は全て科学的に説明できると説く教授に、塩子は「じゃあビッグバンはどうなんだ」と問います。
おっと…!?」Yから声が漏れます。
「なんで人間に適したように宇宙はなっているんだ」と問い詰める塩子。ダン=ブラウンの『天使と悪魔』のカメルレンゴが似たようなことを言っていた気がしますけど、まあ、気のせいですね。
それに対する教授の一言が「うるさい!!!」
出ました。「うるさい!!!」
実は、今まで敵役になってきた人の中でこう叫ばなかった人は皆無に近いのです。皆さんは既にこのオムニバスの1話1話が同じ構成をしているのには気づかれていると思いますが、実は塩子に対する反論も全く同じなんですよね。ちなみにこの回は塩子が一番感情的になってます。
まぁ結局とりついていた悪魔を統一教会チックに祓われた教授は、自身も幼少期に人魂を見たことを認めます。
人魂に語りかけられた経験のある人のいないこの世界では、この寓話をどう幸福の科学の信者が活かせるというのでしょうね。

わーい、最後のイメビタイムだ~と思ったら、あれ、BGMの歌が、男声だ…!?
だ れ だ よ

と思ったら、なんかさっき指輪渡してた男が金を払って堕胎を要求しています。なんかこの男は天童財閥の御曹司で、帝国大学(エリートらしい)出身らしいですよ。そして被害者はもう一人、天童財閥の役員で、結婚を拒否したら左遷された女性です。そして彼女が相談するのは、勿論、JK3人のオカ研です。
案の定召喚された塩子は、開口一番、こう言います。
「鍋焼きうどん食べたい」
スベったネタを天丼するな。勿論うどん代1200円はJK持ちです。
塩子が御曹司を調べると、30人をもヤリ捨てたらしいことがわかります(羨ましい)。
塩子は帝大の同窓会で御曹司を色仕掛けします。なんでも彼女は帝大出身の財閥令嬢だそうで
財閥令嬢ならJKから1700円をせびるな
なんか引っかかったすきに結界的なところに誘います。そこにはヤリ捨て被害者の会が「天狗打倒」の旗を持って持ち構えていたのでした。

いままで何の苦労もなく除霊してきた塩子ですが、今回の除霊だけは問題が伴いました。
まずは、戦闘中のレスバトルで、彼に憑く天狗の主張に塩子が「ハァ!?天狗は本来は神の使いで云々・・・」と説教し返すところです。何がハァなのかわかりません。
2つ目は、BGMの歌を大川咲也加が歌っていることです。ハァ!?と言いたいのはこちらです。
もしかしたら咲也加さんはこういうレビュー記事が出ることを見越して、自身が脚本家であることを伏線として張り、終盤の天狗戦でギャグとして回収するという離れ業をやっていた可能性が微粒子レベルで存在していますが、そうでないのなら、咲也加くん、脚本に戻ろう!

3つ目が、全くアクションしないところです。塩子以外フルCGなんだからせめてそこは頑張れるポイントだったと思います。脚本が破綻していてもアクションで愛されている「モータルコンバット」という前例もあります。アクションがしっかりしていれば、「クソ映画」から「努力はあるクソ映画」に昇格できていたと思います。
まぁ結局天狗は除霊されるのですが、その勝利後のシーンが――

注:イメージ

こんな感じで御曹司がくの字に捕縛されていたので声を出して笑ってしまいました。クズだけど違法行為はしてないやろ(パワハラ紛いのコンプラ違反ならあった)。

勝利後、いきなりパワポみたいな画面が劇場を占拠して、困惑していると、いきなり御曹司が逮捕されたことが報じられたことがわかります。いやだから違法行為は作中描かれてないんだって!
教団に敵対した者は投獄されて当然、みたいな価値観が信者に広まらないといいが…。
最後、ズッコケオカ研3人組は塩子を北朝鮮式に礼賛し、塩子はまた精舎で金ピカたかしちゃん人形の前でわなわなと顎を震わせシャハーダします。「すばらしき我が人生」で池田大作の言葉に感涙する柴田理恵に戦慄するニコニコ動画のコメント欄のような気持になります。うん、最後ちょっと怖いよこの映画。

というか最後のイメビタイムの男声は誰だったんだ?なんかメッセージが隠されているのか…?なんか怖くなってきた。。。

という訳で私たちはこの傑作に出会えた喜びを共有しつつ帰路についたのです。上映中、塩子が除霊をする場面では、私たちも塩子に合わせてZとIの術式をやっていました。特にHは、「いろんな映画を見てきたが、観るのが『耐えた』映画はこれだけだ」と大絶賛していました。

最後にこれだけの長文をお読み頂いた読者の皆様にメッセージがあります。

「嫉妬には気を付けて。」


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