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【猪口由美の明日につなぐ食 vol.4】 離島の活性化のために 〜漁業へのアツい思いと“クエを特産品にしたい”

長崎佐世保市・相浦漁港から、小船で20分走ったところにある離島・高島。ここは、日本本土最西端に広がる景勝地「九十九島」にある200を超える島のなかでも、4島しかない有人島です。
200名に満たない住民のほとんどが漁業に携わっていることもあり、特産品はもちろん海産物。
上質な魚が水揚げされるものの漁師の数は年々減少し、このままでは島が廃れていく。それを食い止め、島に活気を呼び戻そうと奔走してきたのが、重村友介さんです。


父の思いを形に

きっかけは、重村さんの父・輝男さんでした。輝男さんは高島で生まれ育ったものの家業であった漁師にはならず、岐阜県に移住し起業。ただ、島への思いは途切れることなく「いつかは島のための仕事をしたい」と事あるごとに話していました。それがやっと形になり、ようやく島で漁業活性化の事業を立ち上げた矢先、輝男さんが急逝。残された重村さんに課された重い荷物。重村さんにとっては故郷でもない島。事業を閉じる選択肢もあったものの、事業の継続を決断。「高島をなんとか元気にしたいんだ」と何度も話していた輝男さんの熱量を形にできるのはもう自分しかいない。その思いが重村さんを突き動かしたのです。

ところが大きな壁が。
高島に通い始めた当初、漁師たちからは完全に「よそ者扱い」でした。祖父がこの島の漁師だったとはいえ、それは古い話。それぞれが独立した経営者でもある漁師たちは、突然やってきた、見ず知らずの他人に関心はあるものの、そう簡単には心を許しません。
それを痛感した重村さんは、無視されても粘り強く彼らに話しかけて思いを語り、彼らが獲ってきた魚を大切に扱い続けました。買い叩かず、共存することこそ島の活性化のためであると信じ、岐阜の飛騨高山から長崎の離島まで、数えきれないほど通い詰めました。
今では、漁師たちはもちろん、島のすべての人々から“身内”として迎えられ「いやというほど酒を酌み交わす仲になった」と、重村さんは嬉しそうに話します。

クエを地元の特産品に

豊富な魚種が水揚げされる中でも、重村さんが特に力を入れているのはクエ。九州では“あら”と呼ばれる高級魚です。2021年には海沿いに念願の水産加工場を設立、工場では漁師の奥さんたちが中心となり鮮魚を加工しています。
自分の家族が釣ってきた魚を加工する女性職人たちの作業はとても丁寧。40㎏を超える大魚の背骨は特注の骨切りでないと落とせず上から体重を掛けながらの作業。包丁を入れるのも大変なほど硬い皮をそぎ落とし、アラは流水で一片ずつきれいに汚れを取り除く。
魚を釣り上げる苦労を知る家族だからこそ、少しも無駄にすることなく、美味しく届けるための努力を一切惜しみません。

クエの美味しさは、深海魚ならではの、濃厚な脂としっとりとした身の旨み、皮と身の間にあるとろりとしたゼラチン質にあります。鮮度抜群なのでクエ鍋にしても秀逸ですが、わたしのお気に入りは「炙り刺身」。
クエの美味しさを改めて実感する逸品です。


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