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人間観察の宝庫徒然草から読み解く


「良き友」とは

 兼好法師は徒然草のなかで、「良き友、三つあり。一つには、物くるゝ友。二つには、医師(くすし)。三つには、知恵ある友。」としたためています。これはそのまま今の時代の三つの願望、即ち「ギフトコミュニケーション」「健康」「知恵」であり、それを満たしてくれる友が、大切な良き友ということでしょうか。

 いつの世も人間は健康願望が強いのでしょう。しかし長寿社会の私たちの最大の願望は、ただ長生きするだけでなく、「元気で長生き」が一番です。今の医学を持ってすれば100歳くらいまで生きられるでしょうが、寝たきりで延命はつらいでしょう。
病気を治療してくれる「医師の友人」も必要ですが、その前に平素から病気を予防して健康を管理してくれる「医師の友人」が大切ですね。

 かつて事業は「ヒト、モノ、カネ」と言いましたが、今はそこに「情報」が加わっています。しかし、それらが揃っていても「知恵」がなければ事業の存続ができないとも言われています。ある宗教家によると、「知恵とは、その人の人格から滲み出る言葉や発想が、人々の人生の指針となりうるような作用をもつもの」だそうです。つまり正体不明のものがそれに出遇って初めて了解できると言うことではないでしょうか。ですからVUCA(将来の予測が不可能な状況)の時代と言われる現在を生き抜くためには「知恵」が必要なわけです。持つべき友は「知恵ある友」には普遍の意味が込められています。

「友とするに悪き者」とは

 また兼好法師は「友とするに悪き者」についても七つありとして、「高く、やんごとなき人」(身分が高く重々しい人)「若き人」「病なく身強き人」「酒を好む人」「たけく勇める兵」「虚言する人」「欲深き人」をあげています。これらの人々は強(したた)かな人物像であり、逆に弱くても互いの痛みが分かり合え、分かち合える心の通ったコミュニケーションがとれる友人を大切にしたいと兼好法師は伝えたかったのではないでしょうか。

「物くるゝ友」

 心が通じ合う友とは良いギフトが往来します。人は「自分のことをよくわかってくれている」と感じるギフトに感動した時、お互いの関係がさらに深まることがあります。
 昔、近ごろ元気がないと思った友人に黙って一冊の本を贈ったことがあります。私が読み終えた本でしたが、後日彼から連絡があり「あの本は貰っておくよ。大事にしたい!」と、とても喜んでくれました。その本で元気になってくれたようで、私もとても嬉しくなりました。心が通じあうギフトのやり取りが、人間関係をより重厚にしてくれることを実感しました。

一般社団法人ギフト研究所
代表理事 山田晴久


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