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山沢栄子 私の現代 2019.11.12(火)—2020.1.26(日)

美術館の展示会は、ふらっと立ち寄るよりも事前にどういう展示なのか、どういうアーティストなのか、どういう視点で展示されているのか等を頭に入れてから行くほうが理解力が高まります。そういった事前に頭に入れたほうがよいことをまとめていきます。

まず第一回は東京都写真美術館で行われている「山沢栄子 私の現代
2019.11.12(火)—2020.1.26(日)」についてです。

山沢栄子プロフィール

1899年大阪生まれ。1926年カルフォルニア・スクール・オブ・アーツに留学し、油絵を学びます。その間、写真家コンソエロ・カネガの助手として、本格的に写真を学びます。そして、1930年代から半世紀以上にわたり、日本における女性写真家の草分けとして活躍しました。初期はポートレートを主体とし、晩年(1980年代)は抽象的な作品を制作します。

山沢栄子の師であるコンソエロ・カネガとは

アメリカの写真家。オレゴン州アストリア生まれ。幼少にサンフランシスコに移住。文筆家を志して「サンフランシスコ・クロニクル」新聞社に勤め、そこでアルフレッド・スティーグリッツが発行した写真雑誌「カメラ・ワーク」に出会います。その思想に感銘を受け、写真家を志しました。

商業写真家として

1938年に自身の工房である山沢栄子写真場を開設します。
当時、宣伝や広告印刷物の図案はグラフィック・デザイナーによって描かれており、写真を利用したものはほとんど知られていません。山沢はこうした分野に進出する新しいビジネスとして「商業写真」を始めました。商品撮影から、レイアウト、装丁、デザインなど山沢栄子のスタジオが手掛けていたと考えられるそうです。女性写真家としてだけでなく、商業写真家という分野においても新しい道を切り開いていった方だということになります。ただ、まだ知られていない部分も多く、山沢栄子という写真家についての詳しい研究はこれから進んでいくことになると思います。

チバクロームとは

山沢は1960年にスタジオを閉じ、写真集「遠近」を出版して芸術家としての作品制作に専念します。そこで特徴的なのは、カラー写真にはチバクロームというプリントを選んでいます。展覧会では銀色素漂白方式印画とも記述されています。これは、カラー・ポジから直接にカラー印画をつくる方式の総称で、1963年にスイスの チバガイギー社が開発した商品名である「チバクローム・プリント」と通称されていました。 色素をあらかじめ含 んでいる三つの感光乳剤層をもつ印画紙で、補色にあたる部分を漂白し てカラーの画像をつくりま す。光が全くあたらなかった余白は黒くなります。

ポイント① 抽象表現

展覧会は4章構成になっていますが、まず晩年の抽象表現が中心だった頃の写真からスタートします。被写体は特別なものではなく、山沢の身の回りにあるものが中心だったようです。図録の表紙にもなっている直線が印象的な写真があるのですが、一転してそれをくしゃくしゃにしたものを撮影したり、2次元や3次元を意識させるような表現です。どれも鋭い感性で撮られた写真ばかりで、注目に値する表現です。

ポイント② 遠近

2章は山沢の写真集「遠近」に注目しています。序盤のポートレートについてもすごく良いのですが、この写真集の終盤にでてくる野菜や果物の静物写真に注目したいです。やはりまだ渡航制限があった時代にアメリカに単身で渡っているだけあり、日本人離れした写真の数々。抜きん出た色彩感覚に目を奪われます。

まとめ

戦前から活動し、その鋭い感性を発揮して今までにない写真家としての道を示してきた山沢栄子の生涯を追った展覧会です。山沢栄子の研究は進むでしょうが、恐らくはそこまで深い文献や資料は残っていなくて、この規模の展覧会は無いのではないかということから、実際に行ってみることをお勧めします。また出来れば図録の購入もしておいたほうがいいです。素晴らしい図録になっています。

展覧会URL
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3445.html

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