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病気は薬では治せない

皆さんこんにちは。薬を使わない(なるべく使いたくない)内科医をしています。 

Twitterのスペースで盛り上がったので文章にまとめておこうと思います。→Twitter @dJRTEnftip9skHs
私は都内で外来をやっていますが、消化器系病院にいるため胃腸の不調を訴える方が多く来院されます。
胸焼け、胃痛、吐き気、便秘、下痢など。

長く症状が続いたりしていると皆さん内視鏡検査を希望されます。胃カメラに大腸カメラ。いくら鎮静剤を使うとは言ってもなかなかにハードルの高い検査ではないかなと思います。

しかしながらせっかく検査をしても肝心の所見がないケースの方が多いのです。
胃カメラなら逆流性食道炎、胃潰瘍、胃炎、胃癌、大腸カメラなら大腸ポリープ、大腸憩室炎、潰瘍性大腸炎やクローン病などなど。
これらがないにこしたことはもちろんないのですが、内視鏡所見はない、でも症状はあるというケースの方が多いのはなぜでしょうか。

胃や腸に肉眼的な異常がないのに症状があるのは多くは胃腸の動きに問題がある事が多いように思います。
この胃腸の動きに大きく関与しているのが「自律神経」です。
交感神経(戦う神経)と副交感神経(休む神経)が切り替わって行きますが、胃腸の動きは副交感神経優位の時に活発になると言われています。

つまり胃腸の不調があるのに内視鏡で異常がない方々は胃腸を動かす副交感神経とは逆の交感神経優位になっている時間帯が多い可能性があります。

人は古来、太陽が昇ると共に交感神経優位となり、血圧が上昇し狩に出たりしていました、そして日が落ちて暗くなってくると副交感神経優位となり血圧も下がり自然と眠くなるというサイクルだったと予想されます。
この時代にはおそらく不眠症や胃腸の不調を訴える人は多くはなかったように思えます。おそらく電気が広く普及する頃までは多くの方がこの状態ではなかったかと推測します。

しかし現代は電気はもちろんのことテレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンなど視覚を刺激するデバイスが溢れてしまったことで、夜になっても副交感神経優位にならない方がたくさんいます。眠れないからスマホ動画を見たりゲームをしたりでさらに脳は刺激され交感神経優位になっていくという悪循環です。こういう方は胃腸の不調が現れやすいと思われます。

またデスクワークなどが多く、猫背などの姿勢の悪さが目立つ人も多いです。こういう方は当然ながら腰、肩、首の痛みがあったりして、その影響でやはり交感神経優位となり血圧の上昇にも繋がります。
さらに姿勢が悪ければ呼吸も浅くなります。昨今はマスクをつけたままの生活の方も多く、呼吸の浅さはさらに増している可能性もあります。
浅い呼吸は交感神経を、深呼吸は副交感神経を高めるので無意識でしている呼吸ですら悪影響を及ぼしている可能性があるということです。

そして食事。多くの人は食べ過ぎています。
とくに精製された白い砂糖の消費量が多く、依存性状態の方も多く見られます「水、お茶は飲んだ気がしない」なんていう感覚がある方は間違いなく砂糖依存性です。

白い砂糖などほんの100年前は高級品で誰でも口に出きるものではなかったはずですが、戦後高度成長を遂げた日本ではどこでも砂糖が手に入り、砂糖がたっぷり入った清涼飲料水を買うことが出来ます。
ほんの100年など進化の過程から考えれば秒に近い時間であり、急にそれだけの量の砂糖を消費できるからだに人間が進化できるはずはないので肥満、糖尿病が増えたと思われます。

ただでさえ交感神経優位で胃腸の動きが悪いのに、追い討ちをかけるように大量の食事をするので当然ながら胃腸は悲鳴をあげます。しかし内視鏡では胃腸はキレイなので医者のほとんどは「様子を見る」か「何らかの対症療法薬を出す」で終わりです。
最近は切れ味のいい薬もあるので改善するケースも多いですが、薬をやめると当然再発します。だから薬をやめられなくなる。そうこうしているうちにその薬の副作用が出てきて別な不調が起こりまた薬が増える。これが今の日本の医療で起こっていることと言えます。

そして流行りの「黙食」学校などではいまだに徹底されているところもあるとか。楽しい食事は副交感神経を高めます。これまた真逆の対策であるということが言えるでしょう。

からだの不調の原因はその不調の出ている臓器にはあらず という事が多そうです。
すぐに薬で症状を消そうとするのではなく、毎日の食事、睡眠、呼吸など当たり前にやっている事をもう一度見直すことで、健康に近づけるのだと私は思っています。急がば回れの精神が健康にも大切なのではないでしょうか。

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