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連載『オスカルな女たち』

《 過去からの手紙 》・・・6

「吾郎さんからも入ってんだろ?」
「え? うん。…知ってるんだ?」
(やっぱり、手切れ金…?)

「吾郎さん、気を使ったんだ。…オレらがちまちま入金してるの知ってて、ずっとほっといてくれたんだよ。男としてあんまりいい気分じゃなかったと思うよ? 皮肉にも取れるしな。でも、姉貴の苦労を知ってたから、オレらのこと尊重してずっと持っててくれたんだよ」
「そう、なんだ…」
「たと思う。…だから、その最後の入金は〈慰謝料〉っていうより、夫としての最低限の意地だと思うぜ」
 夫としての意地・・・・。

 そうなのだろうか、そう受け取っていいのだろうか。
 そんな意地があるのなら、そんな意地を張るくらいなら、夫婦としてのコミュニケーションを図ることができたのではないだろうか。
(男って、ホント解りにくい…)
「そういうことなら…。吾郎に問いただすことも、しなくていいのね」
「引っ越しには充分だろ」
「…うん。充分すぎるよ。でも、やっぱり全部はもらえないよ」
「そういうこと言うなよ。オレらの気持ちなんだから、黙って受け取るの!」
「え…あ、そっか。うん…ありがと」
 いつか玲(あきら)が言っていた〈プレ子育て〉という言葉を思い出す。
 子どもがいないつかさではあったが、充分母親の気分を味わうことが出来ているのではないだろうかと。

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