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連載『オスカルな女たち』

《 騒がしいやつら 》・・・5


「とにかくそれ、処分したいんだよ」
「そうなんですか…?」
「そうなの。処分を、頼まれたの、」
 強く処分を強調する真実(まこと)。
「患者さんですか?」
「どうでもいいよ、そんなこと」
「ふ~ん。つまんない」
「つまる、つまる、つまってんだよこっちは~」
 こんなにも楓にイライラしたのは初めてだった。
「じゃ、引き取ります?」
「へ?」
「需要のある所に」
(需要…って…?)
 この際疑問は持たない方がいい。自分の視界から消えてくれるのなら、とにかくなんでもいい。
「なに、もらってくれんの? だって、持ってんじゃないの?」
「あたしじゃなくて。これは初心者用なので、初心者の子に…」
「いいや、説明は」
 つまり楓には、そういうお友達がいるということだ。余計なことを考えるよりも真実は、
「助かるよ」
 と、なにはともあれ「処分」できるのならそれに越したことはないと安堵する。
「こっちはどうします?」
言いながらポケットをまさぐる楓。
「こっち? まだ…?」
(他になんかあったか…?)
 不思議顔の真実の掌にゴルフボール大の小さいファーのようなものを乗せる楓。
「なにこれ、」
 先端から伸びているピンク色のコードのようなものを目で追うと、楓のナース服のポケットに繋がっているようだった。

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