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連載『オスカルな女たち』

《 騒がしいやつら 》・・・10

 翌日・・・・。
「あら、真実(まこと)さん」
 不意に呼び止められて振り返る。休日の夕暮れ時にひとり人ごみの中、いつもならやり過ごしているところだ。
(だれ?)
 目を細めて声の主を見据える。
「旧友を忘れた?」
(旧友…? あ…)
「如月、さん」
(顔の造形が濃密すぎて誰か解らなかった…)
 職場では見られない入念なメイクが施されている、ということだ。
「相変わらず固いわね…」
 ふふふ…と笑って見せるその気合の入った彼女は『快進(回診)のオスカル』こと〈如月遥(きさらぎはるか)〉、高校時代の玲(あきら)の取り巻きのひとりだが、真実にとっては同業者でありかつての同僚でもある。
(旧友か…? そっちは相変わらず柔軟だな…)
 よりによってこんなところで、一番ありえない相手に遭遇したものだ、と心の中で頭を抱える。
「おひとり?」
「まぁ…見ての通り」
「玲さんとご一緒では…?」
「そうしょっちゅう一緒にはいないよ。向こうは子育て真っ最中だし」
「そぅ…よ、ねぇ…」
 少し考えるような仕草をして見せる遥。
(てか、なんで声かけた? 無視すりゃいいのに…)
「期待にそえず、悪いね」
 言いながら今来た道を引き返そうと足を引く真実。

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