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タイの首都から古都を繋ぐ道の終着地。鉄道ファンなら1度は行きたい。城塞都市「チェンマイ駅」

 タイには東西南北に走る国鉄があります。テレビ番組の「世界の車窓から」も2017年に南に向けて走っていました。北の玄関口ともいえる古都チェンマイ、ここにもバンコクから約700kmに渡り国鉄の線路は伸びています。日々観光客からタイに住む人まで多くの人を運び、愛されている鉄道です。

 始発駅のバンコク・フアランポーン駅からは約11〜12時間かかります。観光地でもあり工業地帯としても有名なアユタヤや猿が街中に溢れているロッブリーなど、列車は歴史的に重要な場所を通過するルートを走っており、タイの昔を知るという意味ではオススメのルートです。

 チェンマイ駅の場所はチェンマイ市内から少し東に行ったエリア、市内からは乗合バスで簡単に行ける場所にあります。やはり何度見ても地図の形が美しい城塞都市チェンマイ、素敵です。チェンマイは歴史も古く、この地が城塞都市として作られ始めた理由は、日本にも攻め寄せてきた「元」の国からの侵攻を食い止めるためと伝えられています。

 チェンマイ駅が開業したのは1922年1月1日で約100年の古い歴史を持っています。ちなみにタイの国鉄は1897年にバンコク(当時はクルンテープ駅)〜アユタヤ駅間で開業しており、国鉄の開業から遅れること25年、線路は遂にチェンマイまで到達しました。しかしバンコクからの直通営業は更に11年の歳月がかかり、1933年にやっとバンコク・フワランポーン駅からチェンマイ駅までの直通営業が開始されました。駅舎は煉瓦色の屋根とクリーム色の壁というタイの公共施設によく見られる建築様式です。

 それでは駅構内に入ってみます。さすがタイ有数の観光地だけあって駅構内には旅行者向けのインフォメーションデスクが設置されています。その前でゴムボールでリフティングをしている少年がいましたが、日常が公共施設にも入り込んでいて、ここは地元の人にも愛されている大切な駅なのだろうという事をうかがい知ることができます。

 駅構内にはタイ料理レストランもあります。飲み物もここで購入できます。

 次に目に入ってきたのは時刻表です。旅行者向けにしっかり英語も併記されているのがいいですね。

 そしてこれは料金表です。時刻表にはなかった中国語がこちらの料金表だけにはあります。なんか生々しいというか、背景を想像するとやけにリアルです。バンコク行の一等車は約6,000円ですね。

 次は切符売り場。乗車券はここで購入します。

 駅構内にはラマ5世、チュラロンコーン大王の肖像画がかけられています。チュラロンコーン大王はタイ国鉄を作る決定を出された王様で、タイ近代化の象徴的な国王とも言われています。タイの政治のあり方を大きく変え、奴隷制度の撤廃や官僚制度の構築などを行い、今でも国民から深く尊敬されているタイの三大王の1人です。タイの東大にあたるチュラロンコーン大学の名前の元にもなっている王様です。

 僕たちが駅を訪れた時間帯は、3番線からバンコク行きの電車が出る直前で丁度良いタイミングでした。バンコク・チェンマイ間は1日4本の列車が走っていて、この日はバンコク行き最終列車・17時発の特急列車を見ることができました。ちなみにこの列車のバンコク到着は翌朝です。そしてチェンマイ発の列車はバンコクだけではなくもう1区間あり、ナコンサワン行き列車も走っています。また貨物列車も1日1回バンコクとの間を往復をしており、このチェンマイ駅では1日合計6本の列車が入っては出て行くようです。

 ホームにはバンコク行の列車が既に到着して乗客を乗せはじめています。なぜか4番線にいるのはご愛嬌です。

 列車の車体は、シルバーを基調に紫のラインが中央に走るデザインです。

 乗車口では駅員が切符を確認しています。タイにおける駅員の制服は、タイに数多く存在する公務員や民間警備関係などの制服の中でもトップクラスの格好良さだと個人的には思っています。その他の制服はちょっと軍隊的な服装が多いというのもありますが、この駅員の制服は子供の憧れの職業になりそうな雰囲気を漂わせています。

 列車には食堂もついています。インフォグラフィックも優秀です。

 しっかりと調理器具も備わっているのも確認できました。

 車椅子利用者向けの車両もあるようです。

 なんと女性・子供専用車両まで!!確かに夜行列車であるという点を考えると安全面での配慮は欠かせません。女性も安心して乗ることができる電車である事がわかりました。

 先頭車両です。なかなかの男前ですね!これから11時間、頑張ってください!と思いを込めて運転手に笑顔を見せたのですが、さらっと視点をそらされました!

 先頭車両の後ろの車両は貨物室になっています。きっとどこかの駅で荷物を下すのでしょうね。段ボール箱が沢山積まれていました。そしてバイクまで。この辺が飛行機では無理な、電車ならではという感じがします。

 ああ!危ない轢かれますよ!!逃げて!

 ・・・ではなく、発車前の電車です。線路に降りて皆さん記念撮影をしています。

 チェンマイ駅のホームはとても長い設計になっています。ホームでマラソンをしている人もいるほどです。日本の場合は改札を通らないとホームに出られない駅がほとんどですが、タイの場合は田舎の国鉄駅ではホームに改札を通らずとも入れるため、このようにホームで色々な活動をする人も少なくありません。

 隣のホームを見ると、電車が止まっています。

 チェンマイ駅からバンコク行きの他で唯一通っている路線、ナコンサワン線の列車のようです。列車の側面についているパネルにもそう記載されています。

 ナコンサワン駅はバンコクとチェンマイの中間地点にある駅です。中距離線になるからなのか、列車が夜行列車仕様にはなっていないようです。

 その隣には貨物列車のコンテナ車両もスタンバイしていました。貨物列車はバンコクとの間を1日1往復しています。

 しかし、この駅のホームは本当に長いです。端から端まで歩くと3分程度かかります。昨年オーストリアのウィーンからザルツブルグまで電車の旅をしましたが、ウィーンの鉄道駅もホームが凄く長かったのを覚えていますが、チェンマイ駅のホームの方が長いかもしれません。(あくまで僕の体感です)

 さて、色々と駅のホームを見て回っていたのですが、バンコク行の電車がまだホームに止まっていたので、時間がある限り電車の中を覗いてみました。こちらは寝台車両です。日中は椅子のみですが、就寝時間になると上部からベッドを引き出して2階建ての寝台列車にかわります。

 こちらは少し座席のグレードが高い車両です。・・・と、ここで電車が動き始めました。お気をつけて!いってらっしゃい!

 なお、ホームには売店もあります。日本でいうところのキヨスク(KIOSK)のような売店です。長い旅の前にここで十分な買いだめをしておくと良いかもしれません。

 ここでは水やコーラなどの飲み物の他、列車内で楽しめる旅の友になる様々なお菓子を販売しています。またトイレ対策もあるのかもしれませんが、ティッシュペーパーも販売しています。タイでは旅行先のトイレにトイレットペーパーがあるとは限りませんので、ティッシュは必携です。

 なんとマッサージ屋さんもあるんですよ。さすがタイマッサージ発祥の国だけありますね。列車の発車時刻を待つまでの間、ここで時間を潰す事ができそうです。

 構内を一通り見終えた後、再び駅舎の外に出てみました。駅前ターミナルには、駅舎を出て右手にはコーヒーショップやお土産やさんがあります。

 一方、左手側には乗客待ちしている市内への送迎乗合バスがスタンバイしています。行き先を告げれば乗せてくれますので安心です。

 そして駅の正面にはSLが飾られています。

 このSL(蒸気機関車)は退役した蒸気機関車340号機です。(1912年SLM-Winterthur製、製造番号2208 元ルーテ鉄道(スイス)118号機 1926年 - 1927年にタイに移籍。引用:Wikipedia

 乗合バスの出発まで時間も少しあるので、駅舎右手にあるコーヒーショップでアイスラテを頼みました。

 タイはコーヒーが美味しい国です。麻薬畑を先代国王がコーヒー畑に変えてタイの一大産業に作り上げたという話もあります。タイの人もコーヒーが大好きで、いつもスターバックスは長蛇の列となっているほどです。

 グラスがお洒落なアイスラテが出てきました。美味しい!

 コーヒーを作ってくれるのはこの子です。

 お店の壁には国鉄の写真が貼られていました。このお店のおすすめスポットなのかもしれませんね。


 いかがだったでしょうか。古都チェンマイに人を運び、そして首都バンコクへ人を送る、そんなロマンを持つタイ第2の都市チェンマイにあるチェンマイ駅。旅情あふれる雰囲気の中で、これからバンコクに向かう人はどちらかというとせわしない日常に戻るかのようなキリッとした表情を見せ、バンコクからチェンマイに移動してきた人の表情はこれからバカンスを楽しむのだという緩やかな表情を見せる。来る人送る人が交錯し、感情や表情も交錯する不思議な場所です。鉄道好きは勿論のこと、チェンマイを訪れる方には是非立ち寄って頂きたいオススメの場所です。

それではまた。G1でした。コップンクラップ!



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