コスモロジー

 ギリシア語の「コスモス」には秩序という意味がある。コスモロジーとは人間が宇宙を統一的・秩序的全体として把握するときの世界の有様である。これは単なる「世界観」とは異なり、具体的な宇宙の様相を秩序立てて理解する態度であり、そこで重要なのは、近代科学の均質的時空間とは別の、ある中心、軸をもった象徴的時空間が開かれているということである。コスモロジーにおいて、大宇宙における人間の地位が把握されているのである。
 エリアーデはこうしたコスモロジーの現場をヒエロファニー、すなわち聖なるものの顕現として捉える。この顕現は世界内存在たる人間の実存様態のひとつとして、あくまで現象学的に捉えられる。ヒエロファニーにおいて、聖なる時空間が現象する。それは時間的には起源と分節をもつ意味的時間として、空間的には聖なるものを中心軸とする秩序的空間として現れる。この時空間としてのコスモスに、人間は象徴的に参与(祭りの時間性・アボリジニのドリームタイム)することで、象徴としての生と死の循環を演じ、自己の宇宙的位置を把捉する。これは、近代的等質的な時空間において、人間が生の意味を見失いつつある現状に対する大きな参照対象となり得る。

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