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トレーニングをしている方なら、誰もが一度は聞いたことのある「BCAA」。トレーニング中によく飲まれるアミノ酸ですが、いったいこのアミノ酸はどういったものになるのか。具体的な効果などを書いていきたいと思います。

こちらの記事で、僕がBCAAを普段どのように使っているか書いています。内容が重複する部分もあるとは思いますが、そこはご了承ください。



BCAAとは


BCAAとはなにか これは「バリン」と「ロイシン」、「イソロイシン」の3つのアミノ酸を指します。これらのアミノ酸は側鎖が全て枝分かれ(Branched Chain)した構造を持っていますので、「Branched Chain Amino Acids」 の頭文字をとって、BCAAと呼ぶことになっています。 チロシンやフェニルアラニン、トリプトファンが肝臓で代謝されるのに対し、BCAAは主に筋肉で代謝されます。
なお筋タンパクの16%がBCAAを構成成分としており、これは1kgの筋肉あたり約32gとなります。
筋肉内のアミノ酸プールにもBCAAは存在しています。しかしサプリメントとしてBCAAを摂取すると、30分程度で血中濃度はピークに達します。5gのBCAAを摂取することで、通常の320%もの血中濃度になり、2時間後には元のレベルに戻ります。この急激な濃度変化により、BCAAは様々な生理作用を示すと考えられます。



BCAAの効果

BCAAにはどのような効果があるのでしょうか。箇条書きで説明していきます。


1.筋肉を増やす


タンパク合成を活性化するmTORシグナル伝達経路をBCAA(特にロイシン)が活性化します。またロイシンはインスリン分泌も刺激して、こちらの方向からもタンパク合成を高めます。さらにミオスタチンを減らすことにより筋肉を増やすという効果も認められています。またロイシンはリソソーム系におけるオートファゴソーム形成の阻害や、タンパク分解酵素であるプロテアソームを阻害してタンパク分解を防ぐ作用もあり、特に低栄養時における筋肉の減少を防ぐ効果が知られています。

2.持久力を増やす

炭水化物とBCAA、カフェインを配合したドリンクを飲んで2時間のランニングを行った実験において、通常よりも高いパフォーマンスを発揮することができたという報告があります。また70%VO2maxでサイクリングを行った研究ではBCAA摂取によって運動後の筋ダメージを明らかに抑えることができています。特にグリコーゲンが枯渇した状態では、BCAAが脂肪酸の酸化によるエネルギー合成を高めるため、疲労が起こりにくくなるようです。


3.体脂肪を減らす

BCAAはダイエットにも役立ちます。40歳から59歳の男女4429名を対象にした調査では、BCAA摂取量が多いと過体重や肥満になりにくいことが示されています。
さらにBCAAの中のロイシンは、mTORを活性化することにより筋タンパクを合成するだけでなく、体内にエネルギーが増加していると感じさせることにより、食欲を減らすことができます。それだけでなく、満腹ホルモンであるレプチン感受性を高めてレプチンの働きを高めたり、食後のレプチン上昇を調整したりすることにより、食欲を抑える作用があるようです。


4.回復を促す

BCAAは筋ダメージを急速に回復することにより、トレーニングによる筋肉痛を軽減することができます。またBCAAはインスリンの働きを強化することができます。ブドウ糖にホエイプロテインを追加して摂取することにより、トレーニング後のグリコーゲン回復を促進させることができています。


5.集中力をアップさせる

血液中にはアルブミンというタンパク質が存在します。そして普段はアルブミンにアミノ酸のトリプトファンが結合しています。 しかし運動時など、脂肪がエネルギーとして動員されるときは脂肪酸がアルアルブミンと結合しようとします。するとアルブミンはトリプトファンを離してしまいます。そしてトリプトファンはフリーとなるため、脳に入ることができるようになります。脳に入ったトリプトファンはセロトニンとなり、これが精神的な疲労の原因になるという説があります。実際、セロトニン受容体の活性化は筋収縮の発火頻度を低下させるという報告があります。BCAAも脳に入ることができるのですが、このときにトリプトファンと同じ運搬体を使います。つまりBCAAを摂取することにより、トリプトファンが脳に入るのを防ぐことができるわけです。そのため、BCAAの摂取は脳内セロトニンを減らし、精神的な疲労を軽減すると言われています。



BCAAとEAAの使い分け


次にBCAAとEAAの使い分けについて。これは前記事にも書いた内容とは、違う目線から考えて書いています。
BCAAに比べ、EAA(必須アミノ酸)のサプリメントは近年、人気が出てきている印象があります。EAAのみを単体で摂っている方も多いと思いますので、BCAAもより効率的に使えるというところを紹介できればと思います。

BCAAとEAAを比較する前に、まずはBCAAとホエイプロテインについて比較してみましょう。 ホエイプロテインには多くのBCAAが含まれるため、ホエイを飲んでいればBCAAは必要ないという考え方があります。実際のところ、ホエイプロテインを100g飲めばBCAAは20g以上が摂取可能となります。ただし前述の通り、BCAAを単体で摂取することによる急峻な血中BCAA濃度の増加は、ホエイプロテインでは得られません。

ホエイプロテイン単独よりもBCAA単独のほうが短時間でのアナボリック効果としては上回ります。
では、血中濃度の上昇速度がBCAAと同等であるEAAの効果はどうでしょうか。まず15gのEAAと15gのホエイプロテインのタンパク合成効果を比較した研究があります。その結果、EAAのほうが遥かに高い合成効果を示しています。
結論、EAAを15g摂取しておけば十分なようです。この場合、ロイシンの配合量を増やす必要はなく、15gのEAAに含まれるロイシンは絶対量として既に十分だとされています。


BCAAとEAAの摂取方法について


ではBCAAやEAAは具体的にどのように摂取すれば良いのでしょうか。前述の通り、BCAAを摂取すると摂取後15~30分で血中レベルが最大になり、それからゆっくりと低下して2時間後には元のレベルに戻ります。またBCAAはエネルギーとしても使われますし、集中力増加作用もあります。よってトレーニング前の摂取が良いでしょう。血中から筋肉中に移行するのにもある程度の時間がかかるため、タイミングとしては運動やトレーニングの30分くらい前に摂取するようにすればピッタリです。 短時間で終わる運動ならばそれだけで十分です。しかし運動やトレーニングが長時間に渡る場合は、それに加えて運動中のドリンクにBCAAを入れ、少しずつ飲むようにします。そうすることで体内のBCAAを常にハイレベルに保つことができます。 効果的な摂取量としては、体重の軽い人は5g、体重の重い人(80kg以上)は10gが目安です。これだけの量を運動の30分前に飲み、長時間の運動の場合は同じだけの量を運動中のドリンクに配合して少しずつ飲んでいきます。
予算に制限がない場合、大量のEAAを摂取するという選択肢が可能となります。ただし問題があります。15g以上ものEAAを一気飲みすると、多くの人が浸透圧性の下痢を引き起こしてしまいます。(浸透圧性下痢) 。
EAAをワークアウトドリンクに混ぜ飲む場合について。ワークアウトを1時間とした場合、その間に15g程度のEAAを少しずつ飲んでいくのであれば、浸透圧性下痢の心配はありません。また1時間以内に飲み切るのであれば、十分に急峻な血中EAA濃度を期待することができます。
トレーニング1時間前にホエイプロテインを飲み、トレーニング中にEAAという方法もお勧めです。この方法なら、トレーニング中、常に血中アミノ酸濃度を高くした状態でトレーニングに臨むことが可能だと考えます。

基本的に筋肉量が多いほど、タンパク質は多く要求されます。また前述の通り、タンパク合成が高まっているときこそ、多くの必須アミノ酸が必要となります。よって15gは最低ラインとし、筋肉量が多い場合は20~25g程度までEAA摂取量を増やすことをお勧めします。 なおワークアウトドリンクには糖質を入れるのが一般的な方法です。アミノ酸と糖質を同時に摂取することで、アナボリック作用が増加します。

まとめ

今回はBCAA(EAAも)について、詳しく書いていきました。
EAAとの違いがわからないとか、細かい効果などこれをみてなんとなくはわかっていただけたかと思います。BCAAとEAAは使い分けが難しいと思いますが、ちゃんと分けて使えばより効率よく筋肉をつけることが可能だと思います。どちらかが必要というよりは、どちらも必要だと思いますので、今回の記事で覚えてもらえればと思います。

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以上、パーソナルトレーナーの山城でした。

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