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ピクト図解メソッドを法務視点で活用する方法【このスキルで弁護士として飯を食ってきた🍚】


法律業務を行う前提としての図示

僕が弁護士業務をやっていた時代に契約書業務やビジネス全体のリスクを洗い出すときに必ず使っていた方法をご紹介したいと思います。(個人的にはこのスキルで弁護士時代に飯を食ってこれたんじゃないかと思っています=GVA法律事務所の土台になったスキルでもあります)

法務部門や法律事務所が契約書業務を行なったり適法性のリサーチをする際には事業部門やクライアントからビジネスについてのヒアリングを行わないといけません。

このようなビジネスのヒアリングをする際に「ピクト図解メソッド」を使い、必ずホワイトボードに図を書き、権利関係やリスクを整理していました。

ピクト図解メソッドとは?

「ピクト図解メソッド」とは、誰が(Who)誰に(Whom)何を(What)いくらで(How much)の「3W1H」に着目し、”経営者の視点”でビジネスモデルをデザイン(設計・創造)する方法論のこと。


このようなパーツを使ってビジネスモデルを表現します。

ピクト図解パーツ


なお、GVA法律事務所ではこちらの本を入所前の必読書にしています。


ピクト図解メソッドを活用する目的

ピクト図解メソッドを活用して法務がビジネスを整理する目的は大きくは以下の2つであると考えています。

1.事業部やクライアントとビジネスの大枠の流れの共通認識を作り、

2.共通認識を土台としてさらに深掘りしていくことです


ビジネスの大枠の流れの共通認識

アマゾンのビジネスモデル

アマゾンのビジネスモデルを例にピクト図解メソッドで図示してみます。

アマゾンのビジネスモデル

メルカリのビジネスモデル

次に比較のためにメルカリのビジネスモデルをピクト図解メソッドで図示します。

メルカリのビジネスモデル

アマゾンとメルカリのビジネスモデルの差異

ピクト図解メソッドでそれぞれのビジネスモデルを図にすると明らかなように同じように思えるアマゾンとメルカリにはビジネスモデルや権利関係、作成しないといけない書類に大きな差異が出てきます。

アマゾンは仕入れ先から商品を仕入れてユーザーに販売するという一般的な小売とビジネスモデル上は変わらないですが、メルカリはいわゆるCtoCモデルで買い手と売り手との直接販売が行われています。

この差異はそれぞれの利用規約に表現されています。

アマゾンの利用規約ではアマゾンが販売することを前提とした条文になっています。

アマゾン利用規約


メルカリ利用規約では「ユーザー(次条で定義します。)間の物品の売買の場・機会を提供するもので、ユーザー間の売買契約、出品、購入等の保証等に関しては、すべて当事者であるユーザーの自己責任とし、弊社は自ら売買を行うものではなく、売買の委託を受けるものでもありません。」と明確に記載されています。

メルカリ利用規約

アマゾンとメルカリの必要書類の差異

ものすごく簡易化するとアマゾンが必要な書類は以下です。

  • 利用規約

  • プライバシーポリシー

  • 特定商取引法に基づく表示

  • 仕入れ先との契約


次にメルカリの場合に必要な書類は以下です。

  • 買い手側利用規約、売り手側利用規約(もしくは一緒に記載した統合利用規約にする)

  • プライバシーポリシー

  • 特定商取引法に基づく表示


上記のように微妙に必要書類が異なってくるのと検討すべき論点も変わってきます。


共通認識を土台とした深掘り

大枠の共通認識を作った後にさらに深掘りする意味

上記のように大枠のビジネスモデルの流れ、権利関係や必要書類を洗い出した後はさらにビジネスにとってプラスになるような条項が作れないか、リスクを洗い出してリスクヘッジする条項を作れないか事業部やクライアントと深掘りしていきます。


法務部門や法律事務所は、法律のことや契約書の条文設計自体については分かっても新しいビジネスの構造やその先の狙い、ワーストケースがわからない場合は当然ありえます。

他にも深掘りして法務部門が価値を出すには以下のようなものがあります。

  • 新しいビジネスモデルの場合の権利関係やリスクの整理

  • 業務提携契約の場合の複雑な報酬形態

  • リスクの大きさの把握

  • 法務的にはそれほど問題にならなくても現場として気になる気の利いたこと


具体的な深掘り事例

一部適当に加工していますが、イメージを掴んで頂くために具体例もご紹介します!

【IoTビジネスの事例】
IoTビジネスは新しいビジネスであったため、法務サイドでのリスクを想像することに限界があった。

IoTビジネス

そこでこの商品を販売するにあたって最も避けたいワーストケースはどのような場合かをヒアリングした。

回答としては「ハードの機器は原価が高いことからハード機器の回収は余程のことがない限り避けたい」とのことだった。

そこで以下のような対応ができる条文の設計をした。
ハードとソフトがセットで提供しているサービスについて不具合があった場合に、まずはソフトの不具合を検証してハードが原因で分かった場合にハードの不具合を対応する。


【業務提携の事例】
大きな業務提携を行う時に、大手取引先から「競業避止義務条項」の強い要望があった。

業務提携(競業避止義務)

単純に競業避止義務の期間を短くしたり、競業の範囲を狭くしてリスクヘッジするのに加えて、何かビジネス的なメリットを得られないかの議論を重ねた。

そもそもこの大きな業務提携をする理由は大手取引先の販売力に期待していることが大きいため、競業避止義務を飲む代わりに大手取引先の販売行動を握ることにした。

具体的には以下のような販売行動にコミットしてもらった。

  • 商品紹介メルマガを月に1回送ってもらう

  • 広告費月に300万円以上使ってもらう

  • 月に1回販売のためのミーティングを行う

  • 専任の担当者を1名アサインしてもらう


他にも具体的な事例をご紹介したいですが、意外と長くなってしまったのでこのあたりで終わりにします!


GVA manageのプロダクトビジョン

マターマネジメントシステムGVA manageのプロダクトビジョンは「法務と事業を一体化する」であり、弁護士時代にずっと意識していたことをGVA manageに落として広げようとしています!(まだまだ道半ばですが、これからどんどん良くなっていきます)


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