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終電にて

 人前では珍しくしこたま飲んで、いま、終電に揺られている。ぼんやりした眠気と鈍い頭痛のせいで頭が重い。ふわふわして幸せな気持ちと、鼻の奥がつんとするような、泣きたいような気持ちが入り混じっていて、ああ、これは酔っ払っているのかもしれない。きっとそうだ。

 ハイボールに、レモンサワーに、日本酒に、梅酒を飲んだ。一緒に働いている人との飲み会は、酔っ払ってしまうに限る。普段は些細なことが気になって、深追いして考えすぎて、発言を躊躇うことばかり。でも、お酒で頭がふわふわしていたら、あまり考えずに言葉をこぼせる。言葉が先で、思考が後、みたいな。素面じゃこんなことできないよ。だからこそ、みんなと一緒に屈託なく笑えるのが楽しい。

 でもその反面、頭の片隅は変に薄暗くて、ひっそり反省会を開いている。ああ、もう少し気遣うべきだったな。あんな振る舞いは大人気なかったな。もっと頑張ってこればよかった。その反省会も、結局は自分をよく見せたい欲求に基づくもので、なんだかなあと思ったりもして。

 とっても楽しかった、幸せな時間だった、でも泣きたい。何が悲しいのかわからないけれど悲しくて、泣きたい。眠くて頭が痛いので、涙は出ないけれどね。

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