本の表紙はSNSにアップしてもいいのか

本の表紙やCDのジャケットなどをSNSにアップする行為について、法的に問題があるのかないのか話題に上がる事が時々ありますので整理しておきます。


発端


発端としては、BRUTUSがアイドルマスターの特集を組んだ際に表紙のアップロードは法律で禁止されていますよという注意喚起がなされた際に上記のような反論が出ました。

この後、

と言うような形で、さらに間違った情報が発信されていますので何が間違いなのか等についてお話したいと思います。

表紙は写真、もしくは美術の著作物

まず表紙は写真、もしくは美術の著作物として保護の対象です。これについては公益社団法人著作権情報センターの解説が分かりやすいです。

雑誌の表紙は、タイトル・記事の見出しと共に写真やイラストがデザインされて掲載されている場合が一般的です。したがって、雑誌の表紙自体は、写真の著作物あるいは美術の著作物としての保護を受けます。

https://www.cric.or.jp/qa/shigoto/sigoto5_qa.htmlより

保護の対象であると言う事は、使い方によっては権利侵害に該当する事になります。インターネットへの表紙の投稿は公衆送信権の侵害が該当します。

購入の記念に写真を撮影する程度までであれば私的な複製の範囲ですので問題とはなりませんが、撮影した画像をSNSへの投稿する際には権利侵害になります。公衆送信権は営利、非営利を問いませんので取り下げの要求が発生しうる事になります。

権利侵害にならない場合

一方で、写真等の表紙が権利侵害とならないケースが存在します。一般的に写り込みと言われるものですが、意図せず入り込んでしまい除外が難しい物については例外として権利侵害とならないと規定されています。

「付随対象著作物の利用」として著作権法三十条の二にて定められていまして、簡単な事例を挙げると、例えばお祭りに足を運んで動画を撮影した際に屋台から流れてきているラジオが入ってしまった場合は例外として扱われます。

問題となっている購入報告については、被写体となる表紙がたまたま入り込んだものではなく、明らかに意図的に撮影したものですからこの例外は適用されません。

著作権法三十条の二の条文は以下の通りです。

第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となる場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

メルカリやAmazonはどうなるのか

しかしこれを適用してしまうとメルカリやAmazon、ヤフオクなどでの出品の際に非常に困ったことになります。出品した本やCDの状態を伝えるには表紙等を撮影して汚れの有無などを購入者に伝えなければなりません。

と言う事で、第四十七条の二において「美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等」という名称で、このような場合は複製してもいいし、公衆送信してもいい、と定められています。

条文は以下の通りです。

第四十七条の二 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。

なお、これらの画像はこれらの画像で撮影した人に著作権が存在します。よって、メルカリやAmazonで掲載された画像であれば自由に使っても良いと言うわけではなく、これはあくまでも出品する人が自分自身で撮影した画像を使う際の規定である点にご注意ください。

どうしても表紙などを使いたい場合

例えばAmazonが提供するアフィリエイトプログラムなどを用いれば、出品のための画像を使用する事ができます。上記と齟齬があるように見えますが、Amazonが自動的に配信する分に関しては問題ありません。

これについてですが、上記の第四十七条の二において「当該権原を有する者又はその委託を受けた者」とあります。この場合「委託を受けた者」とはAmazon等のプラットフォーム側を指しますので、プラットフォーム側から配信されるものは大丈夫です。

同じように固定リンクを貼りつけた際に商品画像が自動的にサーバー側から提供されるような形式のもの、Twitterで言うカード等ですが、これらも自動的に表示されるものに関しては問題はありません。

自分自身で保存し、アップロードすると言う行為が無い限りは問題ないと認識してください。仮に問題があったとしてもそれは出品者側の責任です。

まとめ

インターネットの使用が日常になり、時々忘れる事があると思うのですが、ネットは家の外です。そしてそこには、「公衆送信権」というものが常に付きまとっている世界です。

厳密に法的な話をすると、例えばスタンプ代わりに使われている漫画の一コマなども権利侵害であり違法行為には当たります。

ただし一点重要なところなのですが、確かに法律では禁止されていますが、著作権の権利侵害について取り下げを求める事が出来るのは原則としては権利者のみです。第三者が叩き、取り下げさせようとするケースを非常に多く見かけますがそのような権利を第三者は有していませんので正義の棒として使うのは控えるようにしてください。

逆に事例として少ないからといって権利侵害を推奨するのも違いますので、知識としては権利侵害ですよと押さえておけば問題は無いと思います。

今回は以上です。

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