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「予言の当て方教えます」・・・AIでも何でもない、予言者の登場。


クラスに突然現れた予言者の正体とは? 
高校のクラスに突然、絶対当たる予言をする生徒が現れた。
果たして彼の予言は本物なのか?

ラヂオつくばで、20日に朗読された作品に加筆修正した作品です。

「予言の当て方教えます」 作: 夢乃玉堂

「やあやあ、良く聞け皆の衆。
ノストラダムスやエドガー・ケイシーなど、
歴史に名を遺す予言者は枚挙にいとまがない。
そして今日。ここ県立港山(みなとやま)高校2年B組にも、
偉大なる予言者が現れた。それこそが・・・この俺様だぁ」

黒板の前に立った平井純二は、ネクタイを直しながら言い放った。

「ここ数か月、俺は不思議な夢を見続けていたんだ、
ところがそれが、次々と現実になる、恐ろしいくらいだ」

「何言ってんの? そんなの純二くんが、
見た夢が当たった~、現実になった~とか言い張ってるだけでしょう。
予言が当たったって言うなら証拠を見せなさいよ」

クラス委員で、どこまでも疑り深いイチ子が突っ込んだ。
純二はニヤリと笑い、ポケットから手紙を取り出して皆の前にかざした。

「そう言うと思ったよイチ子。
だから今日は証拠を持ってきた。これだ、内容証明郵便だ」

内容証明郵便とは、三通の同じ手紙を作り、
宛先と送り主の他、郵便局でもその手紙を預かる方法。
訴訟などの時に手紙を送ったという証明に使ったり、
手紙を改ざんされないようにする郵便制度ものだ。

「一月前。俺は不思議な夢を見た。
直感的にこれは何かの予言に違いないって思ったんだ。
すぐに俺は、夢の内容を書き留めた手紙を三通作って、
内容証明郵便で俺宛てに出した。
ほら。手紙の消印は5月3日になってるだろう。
この日に郵便局の窓口で手紙を見せて
内容を確認してもらってハンコを貰ってから送ったという証拠さ。
だから、これが書かれたのは間違いなく、
先月の3日だ。郵便局にも保存されてるんだからな」

純二は消印が見えるように手紙を皆の前に突き出した。

「ホントだ。5月3日だ」

同級生の間に驚きの声が上がると、純二は勝ち誇ったように手紙を広げ、
周りをグルっと見渡した。

「いいか、今から読むから良く聞けよ。
6月5日の日経平均株価は2万5000円台」

「それがどうしたの? 株価なんか言われても覚えてないわよ」

興味のない話をされて、
イチ子を始め同級生一同はつまらなそうな顔をした。

「慌てるな。ここからが本番さ。同じく6月5日、アメリカ大リーグで、
日本人女性投手初のパーフェクトゲームが達成される」

教室に、わあっと歓声が上がった。
それは昨夜スポーツニュースでやっていた最新のニュースだった。

「どうだ。俺はパーフェクト達成の夢を5月に見た。
それで見たという証拠を残す為、内容証明にして自分に送ったんだ」

「本当か、見せろ見せろ」

同級生たちは我先に純二の手紙を手に取って確かめた。

「本当だ。5月3日のハンコが押してある」
「マジか。凄いな。予言者純二だ」
「純二くん。ホンモノなのね」

それまで疑っていたイチ子も目を見開いて驚いていた。

その日からクラスの放課後は、純二の予言発表会に変わった。

純二は、次々に「予言証明」を持ってきては、
重々しく当たった予言を発表していったのだ。

ところが人間というものは勝手なもので、
世界的なニュースを予言で当てても段々盛り上がらなくなっていく。
それよりも同級生たちは、自分に関係のある事を知りたがった。

「ねえねえ。アタシの未来の旦那さんの事、
まだ予言の夢に出て来ないの。お願いだから出してよ。ねえ」

「イチ子ぉ。そんなこと言われたってな、
夢なんて狙って見られるモンじゃねえだろう」

「ダメね~。夢ぐらい思い通りに見なさいよ」

勿論、夢ほど思い通りにならないものは無い。
イチ子に責められるたびに純二は困った顔を見せたが、
ついに、イチ子の願いが叶う日がやって来た。

「イチ子喜べ。昨日お前が結婚する夢を見たぞ」

「本当?」

「ああ本当さ。相手は金髪のイギリス人だった。
場所は多分地中海だな。真っ白い教会が奇麗だった」

「嬉しい~。純二くん、ありがとうね」

「おい。イチ子、俺は夢を見ただけで、
当たるかどうかは先の話・・・って、行っちゃったよ」

純二の言葉も耳に入らないイチ子は、上機嫌で廊下を駆けて行き、
学年中の女子に、純二の予言証明の話をしまくった。
勿論自分が金髪のイケメンと結婚するという話も一緒だ。

おかげで、休み時間になると、
純二の周りに女子の長い列が出来るようになった。
まるで占い師や霊能力者に頼むように
皆、自分の未来を相談しに来るのだった。

「野球部の青木先輩とカップルになりたいので、夢に見てください」

「アイドルのミヤミヤちゃんの握手会に行けるように夢を見てくれ」

「ラヂオつくばでメールが読まれるように夢を見てくれないか」

「夢を見るか分からないけど、一応話だけは聞くよ」

未来の事を予言する夢は、いつの間にか夢に見ると
願いが叶うという話になっていた。
純二は仕方なく、保証のない約束をたくさんする羽目になった。

「優勝の夢を見ないと承知しないからな」

野球部のキャプテンにそんな事を言われたところで、
心配した同級生の浩平が声を掛けた。

「あんなこと言われて大丈夫か、純二」

「浩平。俺はもう疲れたよ。後はお前が継いでくれ~」

「何言ってんだよ。俺に予言が出来る訳ないだろう」

「大丈夫。簡単だからさ」

純二は、自分の胸の前で右手を握りしめた後、その手を浩平の胸に当てた。

「え~い。やああ」

甲高い掛け声とともに握った手を開いて純二は言った。

「よし。これで浩平も予言者だ」

同級生が、怪訝な顔で二人を見つめていた。

それからひと月ほど経った放課後、浩平が純二に近寄ってきた。

「純二。俺も予言証明を持ってきたぞ」

浩平は鞄からから手紙を出してみせた。
純二と同じ、内容証明郵便だ。

「やったな。浩平。どれどれ。
お、昨日発表された星野スミレの結婚が書いてある。
株価を書いてるのも同じだ。日付は・・・先月10日だ」

純二と浩平、同じクラスに
予言者が二人も生まれた、とクラス中は再び湧き上がった。

「浩平くん。どうやって予言者になったの?」

「どうやってって、それはう~ん」

「あなたも一か月前に、夢を書いて送ったんでしょ」

「あ、いや。その、俺は・・・今朝書いたんだ」

「はあ? どういう事?」

耐え切れなくなった浩平は、純二に助けを求めた。

「純二。頼むよ。やっぱり俺は上手くやれないよ」

クラスメートの目が純二に集まった。
先輩予言者は、小さくため息をついて話し始めた。

「しょうがないな。浩平がいろいろやらかして、
みんなが疑問に思い始めたところで種明かしをしようと思ったのにな」

「種明かし?」

純二は、ポケットから内容証明郵便を取り出した。

「予言は誰にでも出来る。やり方は簡単さ。
これは知っての通り内容証明郵便だ。
まず内容証明で日付の入った消印を押して貰う。
その内容証明郵便を自分の家で受け取ったらしばらく取っておく。
ひと月ほど経って、何か印象的なニュースがあったら
取っておいた内容証明郵便の余白部分に、
同じ色のインクで予言を書いたりプリントしたりする」

純二と浩平は二つの内容証明郵便を並べて見せた。
同じ便せんで先月の日付印も同じだ。
しかし片方には、株価と星野スミレの結婚の予言が書かれていて、
もう片方の便せんの、結婚の予言が書かれている筈の部分には
何も書かれていなかった。

「これが絶対当たる予言の秘密さ」

「うわあ~。」

失望の声が教室中に響いた。

「つまり、白紙の内容証明郵便に、後から予言を書きこんだってことか?」

「いや。白紙だと郵便局で受け付けてくれないから
当たり障りのない事だけ書いておく。
例えば株価とかね。株は予想値が書かれているサイトがあるから
そこから、ひと月くらい先の株価を選んで書いておく。
まあ、郵便局で何か聞かれたら、株価を予想して賭けをしている、とか
適当な事を言って内容証明を受け付けて貰う。
その後はさっき言った通りだよ。
もし、皆に予言を公開した時に、
誰かが郵便局に行って、保存されている内容証明を確認したら、
株価だけ書いた手紙が出てきてすぐにバレたんだけど、
誰もわざわざそんな事しないだろう?」

「待って!」

集まった同級生を押しのけてイチ子が前に出てきた。

「予言は全部出鱈目なの?」

「そう。ちょっとした遊びのつもりだったんだけど、
盛り上がり過ぎてヤバい感じになって来たから、
もう終わりにしようと思ってね」

「終わりにするのは勝手だけれど、
あんたの予言を信じて未来の恋人に期待した
アタシの恋心はどうしてくれるのよ」

イチ子は持っていた教科書を丸めて、ポカポカと二人を叩いた。

「痛てえ。何すんだよ。外れるとは限らないじゃないか、
もしかすると本当に金髪の王子様が現れるかもしれないだろう」

「そうだよ。きっといい人があらわれるよ。そのキツイ性格を直せば」

「余計なお世話よ!」

イチ子の二発目をかわした純二と浩平は
頭を抱えてグラウンドに飛び出した。
晴天の空の下、三人の追いかけっこがいつまでも続いていた。


        おわり



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