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「がらんどうに満ちるもの」・・・旅で見つけた物語。


『がらんどうに満ちるもの』

役目を終えたものを軽んじてはいけない。

中尊寺の境内の一角にひっそりと鞘堂は佇んでいる。

奥州藤原氏繁栄の証である金色堂は、世に知られているが
そのすぐ近くにひっそりと建っている鞘堂の存在は
あまり知られていない。

当初、鞘堂は黄金に輝く金色堂を覆うように建てられ、
長年その輝きを風雪から守り続けてきた。

今はその役割を近代的な建物に譲り、
くたびれ切った灰色の柱と壁が、耐え抜いた幾星霜を伝えるのみである。

今はがらんどうになった鞘堂の内部に入ると
かつてその懐にあったものの大きさを改めて感じさせてくれる。
そこには、人々の進行と栄華の歴史が満ちているのだ。

決して倒れることなく尊きものを守りぬいたその姿は、
九郎判官に生涯をささげた武蔵坊の生き様にも似ている。

鞘堂は、今日も人々に語りかける。

人生という長い街道には、身を挺して守るべき輝きが必要である、と。

                     おわり

岩手県西磐井郡平泉町の中尊寺にある金色堂(こんじきどう)は、
1辺が5.5mという小型の仏堂ですが、扉、壁、軒、床までが総金箔貼りで出来ています。1965年建設の鉄筋コンクリート造の覆堂内にあり、
今は保存のため、ガラス越しにしか見ることは出来ません。しかし、平安時代後期建立の仏堂として、奥州藤原氏時代の繁栄の様子がうかがえます。

お話に登場する鞘堂は、覆堂(ふくどう、おおいどう)などとも言われ、
金色堂を外側からすっぽり包む形で室町時代に建設され、
1960年代まで金色堂を包むように守ってきました。


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