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「怪奇を暴け!3」・・・不思議な瞬き。新婚の家に起こった怪現象の正体とは。


『怪奇を暴け!3』


「新居に遊びに来てくれよ」友人の伴野勇一に誘われ、怪奇愛好家仲間の吉野、上原の2人は、新婚夫婦の家に遊びに行った。

吹き抜けの玄関に降り注ぐ光、真新しい壁紙、使い勝手の良いキッチン。
お宅拝見的な説明と感想が一通り出た後、怪奇愛好家らしく、話題は不思議な話、怪しい話に向かっていった。

「申しわけないけど、アタシはそういうの全然信じてないから」

最初の怪談が始まる前に、伴野の妻照美は寝室に引っ込んでしまった。

「照美は俺と違って怪奇や心霊には全く興味が無いんだ」

「それで良く結婚できたな」

「だから良いんだよ。2人とも怪奇好きで毎回心霊スポットでデートしてたら、二人とも祟られちゃうだろう」

新居に笑いが満ちたところで、そのまま心霊スポットの話題から怪談が始まった。

怪奇愛好家仲間が4人も集まっているから
リビングはあっという間に禍々しい雰囲気になった。

次々と順番に怪談をしていったが、2時間ほどして陽が沈んだ頃、伴野が音を上げた。

「困ったな。怖い話が思いつかないよ」

「珍しいな。伴野がネタ切れなんて、新婚で幸せの真っただ中で怖い話は忘れちゃったか」

「いや。そう言う訳じゃないけど・・・」

伴野はちょっと照れながら答えた。

「そうだ、伴野。この近くには無いのかよ。怪しい神社とか、不思議な言い伝えとか」

「う~ん・・・」

しばらく腕を組んで考えていた伴野は、絞り出す様に話し出した。

「実はさ。この家、ちょっとあるんだよね」

「おお。やっぱりな。伴野ほどの怪奇愛好家の住む家に何も起こらないはずはない」

「その通り」

「吉野も上原も茶化すなよ。実際困ってるんだから。
あのな、さっきリビングに入る前に、玄関の天井に
アンティークなライトが三つ付いているのに気付いたか?」

「ああ。天窓の横な。あれで夜も明るいんだろう」

「そうなんだ。そのつもりだったんだけど、高いところにある電球だから
切れると交換がしにくい。だから、LED電球にしたんだ」

「なるほど、原則切れないっていうからな」

「ところがな。引っ越してしばらくしたら、夜中にその電球が
パパッ、パパッって瞬くようになったんだ。

「不良品だったんじゃないのか」

「三つとも不良品なんてありえないだろう」

「確かに瞬いたとしても普通、一つだよな」

「今もか?」

「ああ。おそらくな」

三人はそろって玄関の方に目をやった。
リビングの引き戸が閉じられているから玄関の様子は見えないが、
昼間は気づかなかった、怪しい雰囲気が漂っているような気がする。

「なあ。確かめてみるか?」

「そうだな。良いか伴野」

「ああ。見てくれ。きっと今日も瞬くから」

三人は玄関に向かった。
特に気にする必要も無いのに、そっと音を立てないように。

スーッと静かに引き戸を開き、三人は首だけ出して玄関の様子を窺った。

高い吹き抜けの壁の中ほど、床から4メートルほどのところに、
三つのアンティーク風のライトがあった。

3人が引き戸の隙間からじっと見つめていると、1分もしないうちに
灯りが一瞬瞬いた。

「あ!」

「見た。確かに瞬いた」

「まだまだ。しばらく見ていると、すぐに瞬くようになる。あんなもんじゃないんだ」

伴野の言葉が終わらない内に、ライトは再び瞬いた。今度の瞬きは1分ほど続いた。


「うわ~スゲ~。本当だ」

「これは十分怪奇だな」

「だろう。俺が思うのにこれはきっとこの土地に住む神様と、俺たちの周波数が今いち合わないんじゃないかと思うんだ。それで・・・」

伴野がそこまで話したところで、寝室の戸がガラッと開いて
中から伴野の妻。照美が顔を出した。
そして、恐怖に歪む俺たちの顔を見ながらこう言った。

「ユウくん。まだ替えてなかったの?」

照美は、手に持っていた新しいLED電球をホイッと伴野に突き出した。

「そうだ。ちょうど男の人が3人いるから変えちゃえば」

「うん。そうだね」

LED電球を受け取った伴野は、再び寝室に戻る照美の後ろ姿に手を振った。

「なあ。もしかしたら、電球が瞬く怪奇って・・・」

「ゴメン。怪奇でも何でもないんだ」

伴野はLED電球を持ったまま両手を合わせて、他の二人に謝った。

「実は、外国と日本では、電気の規格が違うだろう、
日本は100ボルトだし、海外は200ボルトとかが多い。
LED電球も内部の電子部品の規格が違うらしくって、国産じゃないと
瞬いたりつかなかったりすることがマレにあるらしい」

「なんだよ、それは。俺たちを騙そうとしたのか」

「いや。そう言う訳じゃないんだけど。怪談っぽくなってるかな、と思って」

「それで、奥さんの言ってたちょうど3人って何?」

「いやあ。言いにくいんだけど、天井の高いところにあるだろう。
今ウチに背の高い脚立が無くってさ。肩車してくれる電球の交換が出来るんだけど」

「ハイハイ」

「それが困ってることで、ちょうどいい事なんだな」

結局、二人が壁に手をついて足を踏ん張り、一番小柄な伴野が二人の肩に足を掛けてアンティーク風ライトの電球を交換することになった。

「すまんな。外国製だけどすごく安い出物があってさ。
金に目がくらんで使ってみたらこんなことになって・・・」

「クウッ。伴野、どうでも良いから早く変えろ」

「伴野。まさかこの電球を替えるために、俺たちを新居に招待したんじゃないだろうな」

「まさか、そんな事はしないよ。たまたま話が尽きたから、玄関のライトの話になって
ついでに交換してるだけだから」

「そうかぁ~。じゃあ、ついでに門柱の灯りも一気に取り換えるか」

「え?門柱に灯りは無いよ」

交換を終えて降りてきた伴野に言われ、
吉野と上原は玄関ドアに脇にある窓から、門柱のあたりを見てみた。

確かに門柱に電灯は付けられていない。

「ほら。門柱に灯りは付けてないんだよ」

「でもさっき、瞬くみたいに灯りがぱあっと・・・」

吉野が言った瞬間だった。
光の玉が一つ、ふわふわと揺れながら、目の前の道路を通り過ぎた。

「うわ~~~~」

3人は大声を上げてその場に倒れ込んだ。

「うるさいわよ!」

照美がリビングのドアを開けて怒鳴り込んできた。

今見たものを説明しようと必死になったが、照美は聞く耳を持たなかった。

「いい加減にして、何の話で盛り上がっても良いけど、
ウチを幽霊屋敷にする気なら、離婚するからね!」

伴野はその後奥さんに釈明し続けた。

そして、光の玉は2度と現れなかった。

これで、全てが収まったかと言うと、そうではなかった。

3人は集まるたびにこの夜の事を話し、
あれは絶対、照美の剣幕に霊魂が恐れをなしたに違いない
という結論に達したのである。
もちろん、照美には秘密である。


 おわり

人はチョットしたことでパニックに陥るものです。

怪奇を好んでいてもそういう事はあるでしょうね。







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