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「静かなる諍い」・・・電車の中で見かけたトラブル。


自粛期間が終わり、町に人が出るようになった週には、繁華街で
小競り合いや口喧嘩、殴り合いなどを見かけた。

それも、ここしばらくは、大人しくなって、目につかなくなったが、
今週、満員に近い電車の中で、久しぶりに小競り合いを見た。

絡み合っているのは、ともに10~20歳代の男の子ふたり。
二人とも眼鏡を掛けて、見たところマッチョでもない。

ドア付近に隣同士で立っていたようだが、
何かのトラブルがおこって揉めたようだ。

自分は少し離れた場所で立っていたので、原因がどちらにあって、何がきっかけだったのかもわからないが、気づいた時には既に二人はもみ合っていた。

名前も当然わからないので、仮に白(服)君と青(服)君としよう。

騒ぎが衆目を集めた時には、白君が青君の頭と腕を締め上げ動きを止めていた。白君は冷静な顔をしている。青君の顔は見えない。

周りにいた大人たちが、「落ち着け。とにかく離せ」などと言って、
青君の腕をしっかりと握っている、白君の左手を離させた。

この間、周りの人たちは、「離れよう」「落ち着こう」などと声を出すのだが、当事者の二人、白君も青君も何も話さなかったのだ。

白君が腕を離しかけた時に、青君がひと言
「痛えだろうが、離せや」と声を上げただけだった。

周りの人も特に理由を問いただすような人も無く、
結局二人は何も言わないままに、間に他人が割って入って、
距離を取ったために、その場は収まった。

全く互いを無視したままで次の駅に到着すると、
白君はとりあえず列車を降りた。
「とりあえず」と言うのは、白君はヒョコヒョコといった足つきでホームを横に移動すると、一つ隣のドアから再び同じ列車に乗りこんだのだ。

それまでの動作にも表情にも、全く動揺した様子はなく、
日常のままで、トラブルだけ回避したという感じだった。

一方の青君は、吊革を握ったまま普通に立っている。
多少動揺している雰囲気はあるが、
それまでのやり取りを知っているから思うだけで、
それを知らない人には全く分からない。
その後、何も無かったように二人は別々の駅で降りて行った。

ただそれだけの話である。

文章で書くと、ほんの小さな小競り合いにしか思えないだろうが、
その場にいた私には、印象に残っているのだ。

特に白君は、格闘家などでよほど自分の腕力に自信があったのか、
「こんな事は別に気にしないよ」と言うほど修羅場を体験しているのか。
おそらく、手慣れた感じで青君を締めていた腕力と、
ホームを歩く、ヒョコヒョコとした軽妙な歩き方にギャップを感じて
印象に残っているのだと思う。

           おわり




#不思議 #謎 #小競り合い #喧嘩 #満員電車 #もみ合い

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