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「枯れえぬ色気」・・・駒塚由衣 江戸人情噺 


「龍見益高根の雲霧」 吉原さくら鍋中江別館金村にて

「至福」とはこういう時間を言うのだろう。

美味を味わう時間、快楽に浸る時間、人それぞれに至福を感じる時間があると思うが、駒塚さんが生み出す時間は、また格別である。
もう19回目になるという江戸人情噺の会は毎回、登場する江戸っ子たちの気っぷの良さや、恐ろしいまでの情念が、語りの力と歴史ある会場の力で生まれてくる。

今回は、映画やテレビで良く知られている「雲霧仁左衛門」の話。
雲霧の巧みな策略、弟子入りした小猿の心情、豊かな言葉で描かれた美しい情景など聴き所が多い。

その詳細は実際に観て聞いて確認して頂くとして、
私が一番印象的だったのが、雲霧の寝顔である。
何を変なところに引っかかっているのか、と突っ込まれるかもしれないが、稀代の盗賊の寝顔が何とも可愛く、無垢なイメージで頭に浮かんできたのである。
そこに至るまでのシチュエーション、見ている人物の心情を描く作家の藤浦敦氏の筆致の力が大きいのは勿論だが、語り手の内側にある純粋さが、この場面に浮かび出ていたように思えた。

さらに、ドラマが展開するに従って、その雲霧の顔に「凄み」が加わって来る。この「無垢」と「凄み」が雲霧仁左衛門という人物のある種の男の色気としてにじみ出てくる。

これは、女性である駒塚さんが俠気ある男性を演じることで生まれているのではないかと(勝手に)思っている。そこに、いつまでも枯れえぬ色気を感じるのだ。それはこの会の楽しみのひとつでもあるので、ご興味のある方は是非体験していただきたい。

11月27日まで、吉原 さくら鍋中江別館にて。

最後に、先月自ら企画した演劇で女優兼プロデューサーとして多忙な時間を過ごしていた駒塚さんの体調が心配であったが、疲れも見せず第一声が非常に元気だったので、ほっとしたことを付け加えておきたい。


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