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外国人が不思議に思う、日本にある「誰のものでもない」もの

職場近くの道で、ツツジが綺麗に咲いている。濃いピンクと淡いピンクの2色展開。通勤で足早に歩く人たちはツツジに見向きもしないけど、中国圏から来たであろう観光客は、道端のツツジを熱心に撮影していた。
その姿を見て、思い出したこと。


数年前、中国・北京の友人(以下:ジェーちゃん)が、東京へ遊びに来た。
彼女は花が大好きで「日本の桜を見る」ことが、来日の一番の目的だった。

あいにく都内の桜の見頃は過ぎていたので、立川にある昭和記念公園まで行った。ここの桜はちょうど見頃を迎えた頃。すべての桜が満開だった。
大きな桜の木々は、長い枝が私たちの顔の高さまで下がり、
枝の先端にも綺麗に桜が咲いていた。

それを見たジェーちゃんは「こんな近くで桜が見られるなんて思わなかった!」と感動してくれて、「中国だったらあり得ないよ!」と興奮気味に続けた。
理由を尋ねると、「こんな低いところに桜があったら子供が食べちゃって、すぐ枝だけになるよ!」と。
私は大笑いだったけど、ジェーちゃんは「いやマジだから」って顔してた。

ジェーちゃんとは東京観光もした。浅草・神楽坂・渋谷・原宿、たくさん歩いた。途中、何度も街路樹の横に植えられている花に足を止めては、「きれい」「かわいい」と言いながらバシバシ写真を撮る。

そしてジェーちゃんは言った。
「この花は誰のものなの?」

誰のもの…ただ道端に植えられてる花でしょ…誰のものなんて…
近所の方が植えたのか、商店街の取り組みで植えたのか、わからない。

「みんなのものじゃないかな」と答えると、
「え!?そうなの!?こんな綺麗な花、誰も盗らないの?なんで?誰のものでもないんでしょ?」

・・・その発想はなかった。

幼いころ、雑草にまぎれている花を摘んだことはあっても、道端に植えられている花を引き抜いて持って帰ろうと思ったことはなかった。なんでだろう?
なんとなく「この花はみんなのものだから」って思ってたのかもしれない。

「電車に乗る前はホームに整列する」という日本人の行動を、不思議に思う外国人もいるかもしれない。日本人はこれを“ルール”だと理解して行動してる。だから「日本ではこうやって並ぶのがルールなんだよ」と説明できる。

でも「なんで誰も道端の花を盗らないの?」という疑問には、私も一緒に悩んでしまった。盗るな!という注意書きもない、でもなんとなく盗ってはいけないと思う、“暗黙のルール”ってやつなんだろうな。

日本人は、誰のものでもない道端の花をみんなで愛でている。昔から。たぶんこれからも。誰のものでもないのに、誰も盗らないし、誰とはなしに守ってる。
それって実は結構凄いことで、駅のホームでキッチリ整列するより、不思議なことかもしれない。


***

中国の友人ジェーちゃんとは韓国留学のときに出会ったんですが、私の中国人に対するイメージをいろんな面から変えてくれました。日本人と中国人なのに共通語は韓国語です。私もジェーちゃんの故郷が見たくて、北京に行ったりしました(ハプニングの連続でしたが)
日本・中国・韓国って近いけど違うことがたくさんあるし、元々は韓国も中国も好きではなかったので、なんでイメージが変わったかとか、そういうこともいろいろ書いていきたいなーとぼんやり思ったりしてます。

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