見出し画像

バブリーOLはいつ消えた?#5〈1996年〉エイジレス・ボーダーレス化へ

まえがきと他の回はこちら

今回の参考資料は「JJジェイジェイ」1996年3月号。
※下記リンクから、表紙が見られます


まったく違う雑誌のように。

96年のJJは、前年までとまったく違う雑誌のようになっていました。
ギラギラ感がないポップな服。
一変した、軽やかなコーデ。
まるで海外雑誌のようです。

驚きとともにページをめくるうち、次第に懐かしさがこみあげてきました。
あぁこれこれ!と。
私が知っている90年代は、こっちだわ。と。

「この春、私はモードな女になる 春モード65のNEWS」
という記事には
「街がどんどんモードになっていった昨年、あせりを覚えた人もいるのでは……」
と書かれており、実際に街の景色が変わったことを示しています。
流行が「モード」に変わったのだと。

モード……
「コンサバ」と同様、わかるようなわからないような言葉。
流行、って意味ですからね。
それに何系から何系に変わったとか、そんなレベルではない気がして。
とにかくもう、全部が変わってるのだから。

どう変わったのか、私なりに説明しますと。

最大の変化は、服の全体のシルエットが体に沿って、ミニマムになったこと。
それまで、肩幅にも身幅にも少しずつ
暗黙の了解のようにあったゆとりが、なくなった。

でもそれは、
ボディコン的にむやみに体にフィットする、ということではなく
体型に沿ったシルエットで、スタイルよく見せるためのもの。
シルエットが良ければ、ノーブランドでもおしゃれに見える。
それまでの、素材やブランドの上質さでおしゃれに見せることとは、180度違う考え方。

……そんな変化だったのではないでしょうか。

95年~96年に訪れた、この急激な動き。
街の女子たちは、どう対応していたのでしょうか。


95~96年 ある女子大生の上京物語

ちょうどいいサンプルがあります。
それは私。
1995年の新年度、私は大学に入りました。

母が買いそろえてくれたもの

上京するにあたって、母は地元のデパートでいろいろなものを買いそろえてくれました。

入学式用のスーツ(AylesburyアリスバーリーKEITHキース
marie claireマリクレール のハンドバッグ
REGALリーガル(だったかな)のビットローファー
(まだパンプスは無理だ、と思ったのか)
でした。

入学式が終わってもずっと使えるように、と。
田舎のデパートで買える、目いっぱいの上質な品だったと思います。
でも残念ながらそれらは、ほとんど活用されませんでした。
スーツはもちろんのこと、
ハンドバッグも、ビットローファーも。

ハンドバッグはギラギラした金具もついていないし、革の感じも上質で素敵なものでした。
でも、それは典型的な「90年代前半ハンドバッグ」だったのです。
タイトル画像の90年代前半女子が持っている、ストラップの長いもの。
手持ちの服に、まったく合わないのです。
ビットローファーもまったく服に合わず、履かなくなりました。

(ビットローファー、今なら活用できる。。
母さんあの靴、どこに行ったでせうね……)

もちろん、これらの小物に合うような服を選ぶこともできました。
でもそうすると、周囲から浮いてしまう。

母はおしゃれが好きな人だけど、
母世代とはやっぱり感覚が違うのだな。とその頃は思っていました。

今思うとそれは、半分間違っていました。
母は、90年代前半の感覚でチョイスしていたのだなと。
何より、3年前に長女(姉)に、同じようなものを買い与えて問題なかったのですから。

当時はそんなことはわからず。
買い与えられたものを活用できず、母には申し訳なかったと思いますが、
お上り女子大生として、流行に乗るのに一生懸命だったのです。

エイジレス、ボーダーレス化

母はもしかしたら
「女子大生だったら、こういうものを着る」
という強いイメージがあったのかもしれません。
しかし、95~96年にかけて大きく崩れたのは
「女子大生ならこんなものを着る」「OLならこんなものを着る」という規範のようなものではないでしょうか。

今回のJJ1996年3月号を見ていて、私がとても親しみを感じたコーデがあります。
「エルベ・シャペリエのすべて」という記事の、冒頭にいるモデル。

コンパクトなデニムジャケット(Gジャン)
スリムパンツにシンプルなミュール、
エルベ・シャぺリエの「きれい色」トート。

大学生の頃、こんな感じの人がたくさんいました。

90年代前半までだったら、これは高校生のコーデだったかもしれません。
でもこの頃から、大学生がやっても違和感はなくなりました。
90年代末には、社会人でも十分に許される雰囲気になっていました。

これは現代でもアリなコーデだと思いますが
今はそれこそ30代以上の大人世代でも、
いや50,60代でも、違和感がないかもしれません。

そういうエイジレス、ボーダレス化が進んだのが、この頃でした。

何が起こっても変じゃない そんな時代さ

それまでは、
中学・高校生は制服。
大学生になったら、メイクをしてストッキングとパンプスを履く。
社会人になったら、スーツを着る。
大人になって身分が変わる度に、服装でそれを示すのが規範でした。

でも、高校、大学、社会人、と
階段を上がったその先は、実はカオスなんじゃないか。
いやこの階段自体が、実は甚だ、当てにならないものなんじゃないか。
と皆が思いはじめた。

前年1995年は、激動の年でした。
「何が起こっても変じゃない そんな時代さ 覚悟はできてる」
と、ミスチルも歌っています。
(1995年5月発売『【es】 〜Theme of es〜』)

就職氷河期や、激動の1995年を経てカオスになったのかもしれない。
本当はもとからカオスなのに、皆気づかなかっただけかもしれない。

そんな時代の気分が、まずは服装の規範をぶっ壊しはじめた。
私はそんな風に考えました。

こじつけかな。。


バブリーOLの消滅を確認

JJの誌面に戻ります。

「どうして買ったあんな服 買ってよかったこんな服 去年の今頃買ったもの」という、読者モデルの私物公開記事。

「どうして買った」の方に、金ボタンジャケットをあげている人が。
「今はカジュアル派なので金ボタンはちょっとネってことで着てない」
とコメント。

90年代前半の象徴ともいえる、金ボタンジャケット。
「ちょっとネ」という存在になってしまったことがわかります。

「ひときわ可愛いOL服」という記事では
相変わらずフォーマルなスーツが紹介されていますが、
ほぼすべて、パステルカラーのツイード素材のもの。
現代では、子どもの卒入学や七五三に母親が着るようなスーツです。

どれも、コンパクトなシルエット。
色は明るくても、ギラギラ感はなし。
金ボタン、肩パットジャケットの「バブリーOL」はいません。


まとめ

バブリーOLは、いつ消えた?

ここでようやく、タイトルの回収です。

バブリーOLは
1994年から95年にかけて徐々に姿を消し、
1996年にはほぼ消滅していた。

バブリーOLは、いつ消えた?

という結論にいたりました!

バブリーOLは、どのようにして消えた?

「いつ」だけでなく「どのようにして」消えたのかも、私の中では重要なテーマでした。
それを語るために、5回を費やしたわけですが。
〈あとがき〉にて「どのようにして」を改めて総括したいと思います。

この後すぐ公開しますので、ご興味ある方はあわせてご覧くださいませ。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?