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バブリーOLはいつ消えた?#1〈1992年〉従順なOLと物騒なシャネラー

まえがきと他の回はこちら

今回の参考資料は「JJジェイジェイ」1992年4月号。
※下記リンクの「index」1992年をタップすると、菊池桃子さんの表紙が見られます

では早速、1992年の世界へ参りましょう🛸


新OLの猫っかぶりオフィス・ウエア

冒頭のメインの特集。
4月号なので、新年度に社会人デビューする人に向けたものです。

都内OLの読者モデルが、自前の通勤コーディネイトを披露します。
コーディネイトとはいっても、全てスーツ。

「猫っかぶり」のタイトル通り、色は紺やグレーなど控えめなものが多く、ボタンなどのパーツも、派手さはなく控えめ。
かといって、現代のリクルートスーツのような画一的なものではなく、凝ったデザイン性のあるものばかり。
肩パット入りの、ゆったりシルエット。
ボトムスはすべて膝上のミニスカート。
デザインは控えめだけど、シルエットは「バブル時代のスーツ」のイメージそのものです。

スーツを着た読モの皆さんは、20代には見えないほど大人っぽく、とにかくフォーマル。
当時のOLは、皆こんなフォーマルな格好で通勤していたのか?

JJモデル着用のページを見ると、
スーツの相場は1着5~7万円程度。
当時一般職OLの初任給は、10万円台後半(くらい)。
給料にはまったく見合わない、贅沢なスーツと言えます。

特集後半にあるOL達の職場の人のコメントを見ると、その服装が当然と思われていたことがわかります。
コメントは先輩OLや、ご丁寧に部長クラスの男性まで。
彼らが口を揃えていわく、
「学生気分の服は避けてください」
「学生時代は終わったんです」

会社の人間として恥ずかしくない格好をしろという、社内のあらゆる層からのプレッシャーがあったのですね。

そして「恥ずかしくない格好を」に込められた内情というものが、実はなんとなくわかるのです。
彼女たちは職場に華を添える存在で、男性社員のお嫁さん候補。
そんな暗黙の了解があった。
そう考えると、すべてにすんなり納得がいくのです。

(あくまで、JJが想定していた読者層の話。
が当時そういう価値観が、日本で当たり前にあったということは事実)

上司や先輩OLから不興を買わずに、なおかつ好みの男性社員の目に止まりたい。
新人OL達はそんな思惑で洋服を選んでいたのかもしれない、と。
スーツの贅沢さとはうらはらの、苦労がしのばれました。

でもその苦労をするだけの見返りが、当時はあった(と信じられていた)。

そんなことを考えさせられる、「猫っかぶりオフィスウェア」特集でした。

(しかし「猫っかぶり」って聞いたの、何年ぶりだろう……)


新学期!絶対、欲しい服

OLの次は、学生。
学生のファッションとしてカジュアルアイテムやコーディネイトを提案しているのが、この記事です。

トップスは、ゆったりシルエットのジャケットやシャツ。
ボトムスは、ツータックパンツやチノパン。
または、ミニのキュロットやスカート。

総じて、拍子抜けするほど地味です。
言葉を選ばずに言うと、ダサい。
ひと頃の「おじさんゴルフウェア」のようです。

シルエットがダサいのです。ツータックパンツやチノパンなど、若さやスタイルの良さを生かせているとはとても思えないコーディネイト。

各アイテム、いいブランドなんです。
シップス、ユナイテッドアローズ、アニエスb、など、今も愛されているもの。
それなのに……

思うにこの頃のJJは、次なる流行として、カジュアルを提案したかったが、うまくできないでいたのではないでしょうか。

JJ読者はこれを読んでもカジュアルに魅力を感じることはなく、結局フォーマル寄りのバブリーファッションを継続していただろうな、と思います。
当時女子大生だった私の姉も、特別派手なタイプではないのにバブリー寄りの服を着ていたわけですから。

新たなカジュアルファッションの萌芽が見えてくるのは、もう少し先になりそうです。


「シャネル大好きさん」大集合

現代との違いばかりを感じたこの号ですが
最たるものが、この記事です。
シャネル好きな有名人、読者モデルが、手持ちの服や小物を紹介しています。

圧巻なのが、とある読モ女性。
頭からつま先まで全身シャネルのコーデを、見開きページでいくつも披露しています。
それだけで終わらず、次の見開きで、
バッグ・靴・小物のコレクションを自宅のテーブル一面に広げて、大公開。

……そういえば、昔こういうのよく見たな、と思います。
雑誌でも、テレビでも。

「見せびらかしちゃって」
「でもすごいなぁ。こんなお金持ちがいるんだな」
くらいの気持ちで、のんきに見たものでした。

今だったらどうでしょう。
ただただ
「大丈夫…?」としか思えません。
誹謗中傷とか、窃盗被害とか……

この30年で世の中は大きく変わってしまったのだなぁと、この記事を見るとつくづく感じます。

現代でも多分、こういう買い物ができる人はいるのでしょう。
でももっと、ひっそりやってるに違いない。
お金持ち自慢なんて、百害あって一利なしの現代です。


まとめ

各アイテムの単価の高さ、見た目のゴージャス感。
期待どおりのバブル感を堪能できた、1992年でした。
バブル崩壊は1991年というけど、この頃はまだまだバブルを謳歌していたのですね。

とはいえ「バブリーだねぇ」で片づけられないモヤッと感も。
冒頭の「猫っかぶり」特集のためか、この時代の女子たちが想像以上にいい子ちゃんで、窮屈そうだったのです。

そもそも、バブリーファッションの隆盛期は1980年代後半。
ドラマ「不適切にもほどがある!」のすぐ後の時代です。
つまり、1992年は同ブーム終わりの頃だった。
1980年代後半、ブームの担い手となった女子大生が卒業して主役の座を降り、それでも新たな流行は生まれず、ファッションの傾向もなんとなくバブリーを継承していた……

「学生時代は終わったんです」
とクギを刺される新人OLの姿、
パッとしない次世代カジュアルスタイル。
それらを見て、なんとなくそんな風に解釈しました。


次回、1993年。
バブリーファッションを駆逐する、新たな流行は生まれるでしょうか。
ご期待ください!

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