見出し画像

ナルシシズム

嫌だなァ。
自分が信じるべきものがはっきりしないというのは。

人から何か言われるたび、自分は価値のない人間なんじゃないか、と不安になる。己の過去を全て否定して、自分が望んだ通りにカスタマイズしたくなる。文句が一つも出ないような完璧な人、例えば、フランクリン・ルーズベルトとか。

打算と保身。

誰からも守られていないと信じきってしまった人間が唯一縋れるのは、それだけではなかろうか。たった二つの、歓迎されない武器を握って生き延びてきた人に、世間は冷たい。

「嘘つき」「見損なった」「もう嫌い」
「そういうことするあなたが悪いんでしょ」

知っているさ、知っているとも。

己の行動が正しくないことはわかっている。でも、言ってしまうんだ。恐ろしくて。突然現れた熊から逃げようと、背中を向けて走りだしてしまうみたいに、嘘をついてしまうんだ。
そう、正直に話しても、きっとあなたには分かってもらえないだろう。

「自己愛」「発達障害」

心の奥底でそう思われてしまうのではないか、と恐ろしくなって。また、感情を抑えられなくなってしまう。
頼むから、僕をカテゴライズしないでくれ。勝手に納得して、僕を見捨てないで。

僕は、人間なんだ。

僕は「自己愛」という種族の生物ではない。
「発達障害」という名前の生物でもない。
僕は、僕はだな。
僕は「」という名前の母から産まれた「」という名前の、人間なんだ。
僕は、僕は。
僕は、…。

どうすればいいのだろう。

打算と保身。
僕には、その二つしかない。
誰かの心に付け入って、自分が望む利益を手に入れることしか、生きる術を知らない。

いや、本当のことを言えば、僕は知っている。
この世の中には、「愛」や「優しさ」というものがあること。そして、それらを使うと、今よりも生きやすくなること。人から責められなくなることを、僕は知っている。
でも、どうやったら手に入るのかは、わからない。どうすれば、僕に染みついた全てを捨てて、「愛」と「優しさ」だけを持った僕になれるのか、全くもって、わからないのだ。

誰か、誰だっていい。
鬼でも…いや、無責任なことを言うのはやめよう。とにかく僕のことを真に大切にしてくれる人だったら誰でもいいんだ。

僕は、愛されたい。大切にされているということを自覚しながら、眠りたい。一日じゃ嫌だ。ずっと、ずっとがいいんだ。いやずっとが無理なら、三年、三年だけでもいいんだ。
永久とは言わない。期限つきで良い。
誰か、僕を見て、大切にしてほしい。
そうすれば、きっと。僕だって、誰かのことを大切にできる。そのはずなんだ。

だから、ねぇ、君。どうか、僕を、見捨てないでおくれ。僕を、救っておくれ。かわいそうな僕に寄り添って、抱きしめて、頭を撫でておくれ。大丈夫だと、そう言っておくれ。
頼むよ、君。
僕は、人間のはずなんだ。
「愛」と「優しさ」を持てる、人間であるはずなんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?