蜂蜜と遠雷

【映画】蜜蜂と遠雷

「読んでから見るか、見てから読むか」
これは、1970年代から80年代にかけて角川が仕掛けたメディアミックスのコピーです。『蜜蜂と遠雷』の上映開始が近づくにつて、僕は全く同じ心境に落ちいていっていました。
いやね、1/4くらいは読んでいました。続きを読み始めたら、いくら長くても一気に読み切ってしまうだろうとも思っていました。それをすると、いろいろ滞るわけです。それにそれにびびって読み進められたなかったのです。

でも、上映日は近づいてくる。映画を観る前に読んでおくべきか、ここまで(まあ、導入部分ですね)で読むのを一旦止めておいて、映画を観るか、葛藤していました(苦笑)

原作は恩田陸。高校の先輩です。と同時に、僕にとっては特別な人です。どんな風に特別かは、デビュー作『六番目の小夜子』の書評の形を借りて、書いたことがあります。

これだけの長編小説を、2時間程度の尺で収めきるのは不可能だと思っていました。だから、原作を読み切らずに観に行けたのは正解だったのではないかと思っています。逆に、主な登場人物のキャラクター設定だけは理解していったので、入り込みやすかったというのもありました。

恩田陸が映像化は不可能だと思っていた、と繰り返し語っていますが、確かに、ストーリーの全体像がわかったいま、よくぞ映像化したと感じます。音楽を外して映像化するわけにはいかず、しかし、セリフなしで物語を展開できるわけもなく、その狭間でちゃんと着地させているのは素晴らしいと思います。

キャスティングも僕はよかったと思います。いろいろ意見はあるでしょうが。何より、松岡茉優が素晴らしい。『万引き家族』でもいい演技をしていましたが、それを超えていると思います。彼女の心の揺れが伝わってきました。
もう一人、松坂桃李もよかった。主人公4名の中で唯一の「大人」。その存在感をしっかり出していました。僕が一番共感した場面は、海辺のシーン。本選に進んだ他の3人が遊ぶ姿を見ながら
「僕にも分からない。あっち側の世界は」
というシーンは、ゾクゾクしました。僕もこっち側の人間だからですけど。

原作に固執する人にとっては評価がよくないかもしれませんが、僕はすごく好きな映画でした。

ということで、原作の残りを読む進めようと思います。そして、あの音楽ももう一度聴き直したい。



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