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WeWork破産申請とソフトバンクの苦境「日本賃貸市場に波紋を広げる衝撃の展開」

はじめに

2023年11月6日、米国の連邦破産法に基づき、ニュージャージー州の連邦破産裁判所に会社の公正な手続きの適用を申請しました。この申請により、同社は190億ドル(約2兆8,500億円)の負債に対する債務圧縮計画について債権者との間で合意に達しました。現在の企業評価は約4500万ドル(約6,750億円)で、オフィス需要の大幅な減少に伴い、資産の売却は一層困難な状況にあります。

WeWorkの落日「470億ドルからの急落と破産申請」

WeWorkの興亡:上場失敗から破産申請まで

2019年、サブリース市場のリーダーであるWeWorkは、470億ドル(約7兆500億円、1ドル=150円換算)と評価されていました。しかし、現在その価値はわずか4500万ドル(約6,750億円)にまで減少し、かつての100分の1以下になっています。

経営危機とCEOの交代

上場を目指したWeWorkは、利益相反と不正会計の問題が浮上し、創業者であるアダム・ニューマン氏がCEOを辞任しました。その後、ソフトバンクグループのコントロール下に置かれ、新CEOにはマルセロ・クラウレ氏が就任しました。

パンデミックと経営の悪化

2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、テレワークの普及によりサブリースの解約が増加しました。これによりWeWorkの収益は減少し、巨額の赤字が続きました。CEOのマルセロ・クラウレ氏は4,000名を超えるリストラを発表し、迅速に実施しました。

裏口上場と継続的な赤字

2021年、ソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドの支援を受け、WeWorkはSPAC*を利用して上場を果たしました。しかし、経済アナリストは、サブリースの解約増加と赤字の継続に懸念を示しています。

*SPAC(Special Purpose Acquisition Company)は、企業が従来のIPOプロセスを経ずに株式市場に上場するための手段です。これは「ブランクチェック会社」として設立され、公開市場で資金を調達した後、非公開企業を買収して市場に導入します。この方法は迅速で効率的ですが、従来のIPOに比べてリスクが高い場合があります。

資本注入と株価の低迷

2022年、ソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドからの資本注入にもかかわらず、累積赤字は増加し続けました。2023年には、事業継続に疑問が投げかけられ、株価は史上最低値の0.21ドルに落ち込みました。

破産申請と孫正義の認める投資失敗

WeWorkは破産申請を行い、約7兆円の投資が失われました。ソフトバンクグループの創業者、孫正義氏は決算発表でWeWorkへの投資失敗を認めました。一方で、WeWork Japanは存続する意向を示しています。

堀江貴文氏が見抜いたWeWorkの破綻の兆し

堀江貴文氏の予言:WeWorkの破綻

2019年、堀江貴文氏はWeWorkの破綻を予言していました。彼は、サブリース市場の大手であるリージャスと比較して、急速な事業拡大を遂げたWeWorkに危機感を抱いていました。特に、WeWorkの470億ドルとされる企業価値については、「まやかし」と断言していました。

コロナパンデミックと働き方の変化

コロナウイルスのパンデミックが発生し、働き方が大きく変わりました。テレワークの普及により、オフィスの解約が急増しました。しかし、リージャスの業績はわずかながら増益を記録しています。この違いの理由は何でしょうか?

WeWorkとリージャスのビジネスモデルの違い

  1. 契約の柔軟性: WeWorkはいつでも解約可能なフレキシブルな契約を提供していましたが、リージャスは最低1年間の縛りがありました。

  2. 物件のグレード: WeWorkは一等地のスーパーグレードビルに拠点を置いていましたが、リージャスは好立地のミドルグレードビルを使用していました。

  3. 家賃と契約期間: WeWorkはビルオーナーとの契約家賃が高く、契約期間も長いのに対し、リージャスはミドルグレードの物件をリニューアルして付加価値をつけ、短期間での転貸借を行っていました。

WeWorkの「カッコいい!」戦略

WeWorkはゴージャスな内装や、コミュニティ形成のためのイベントプロモーション、オフィスエリアの開放感と多様性を重視していました。また、ビールやコーヒーなどの飲み物はすべてWeWorkが負担していました。堀江氏は、これらの要素について、実際のビジネスニーズとは乖離していると指摘しています。

ソフトバンクの賭け「WeWorkへの170億ドルの投資とその結果」

ソフトバンクグループの挑戦:WeWorkへの巨額投資

ソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドは、WeWorkに合計170億ドル(約2兆5千億円)を投資しました。この投資の背後には、孫正義氏の強力なサポートがあり、新CEOにマルセロ・クラウレ氏を抜擢しました。しかし、4200名のスタッフをリストラしたにも関わらず、赤字は増加し、経営は破綻に至りました。すでにソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドは、約半額近くの償却を実施し、さらに1兆円を超える償却が必要となる見込みです。

WeWork JapanのCEO、ジョニー・ユー氏の振り返り

WeWork JapanのCEO、ジョニー・ユー氏は、コロナ禍を振り返り、賃貸市場の激変について語っています。2019年、WeWorkは上場失敗と不祥事で経営が揺らいでいましたが、WeWork Japanは絶好調で、事業を拡大していました。しかし、2020年の非常事態宣言下でも、コロナが一年以内に治るという根拠のない期待を抱いていましたが、現実はオフィス不要論まで囁かれ、解約は増え続けました。

WeWork Japanの自立への道

ビジネスモデルの崩壊を受けて、ジョニー・ユー氏は、事業拡大を止め、稼働率を80%まで上げて自立できるWeWork Japanを実現することを決意しました。スタッフは15,000人から4,000人にリストラされました。しかし、ソフトバンクグループの資金援助とサポートがなければ、自立は不可能だとも語っています。WeWork Japanの再生も厳しいと見られています。

ソフトバンクグループの現状と未来

ソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドは、世界一の投資マネーを持つVCとなりましたが、孫正義氏率いるソフトバンクの経営には暗雲が立ち込めています。WeWorkへの投資は、まさに大火傷となっています。

変貌する日本の賃貸市場:カレッタ汐留の衰退と代官山の繁栄

日本の賃貸市場の変化「カレッタ汐留と代官山の対照的な風景」

日本の賃貸市場は大きな変化を遂げています。カレッタ汐留では、ビジネスパーソンが減少し、飲食街はシャッター通りと化しています。テレワークの普及により、電通グループや富士通などの大企業も移転し、かつての賑わいは失われました。さらに、マクドナルドまでもが撤退を決めました。
一方、オシャレな街として知られる代官山駅前では、空室の店舗が目立ちます。不動産の売買価格は10年前の二倍にも関わらず、空室が多いのは、賃料の高騰が原因でしょう。賃料は10年前の1.7倍に上昇しており、高すぎる家賃が商売の障害となっています。一点物のアパレルやバッグ、シューズの店舗には客がほとんどおらず、若者たちはウィンドウショッピングを楽しむ姿が目立ちます。
しかし、代官山のランドマーク開発は大成功を収めています。「住・動・遊」をコンセプトにしたこの地域は、インターナショナルスクール、大使館、公園などが揃い、蔦屋やスターバックス、レストランは行列ができるほどの賑わいを見せています。駐車場にはベンツのゲレンデ、BMWの四駆、テスラ、レクサスなど高級車が並び、まるで展示場のようです。この地域は、外国人も多く、老若男女が楽しそうにお茶やパンケーキを楽しむ、映画の一コマのような風景が広がっています。

代官山の風景

萩原大巳が解き明かす「賃貸市場の全貌とその深層に迫る洞察」

日本の賃貸市場の新たな動向:大開発と中小企業の挑戦

日本全国のショッピングセンター(SC)では、店舗の閉店が相次ぎ、シャッターが目立つようになっています。また、オフィスビルも、スーパープレミアムビルの裏側路地にあるビルでは空室が目立ちます。しかし、資金力のある大手デベロッパーは、大規模な開発プロジェクトを次々と着手しています。

大手デベロッパーによる大規模開発

開発の代名詞である森ビルの麻布台ヒルズは、住居、店舗、美容クリニック、ホテル、インターナショナルスクール、オフィス、公園、散歩道など、全てがセンス良くまとまっています。さらに、無料の果樹園まであります。景色の良い住居棟の最上階にあるコンドミニアムの価格は、200億円から300億円にものぼります。また、三菱地所の大開発プロジェクト、常盤橋タワープロジェクトも着手されており、日本一の高層複合ビルとして注目されています。
このような大規模開発プロジェクトを大手デベロッパーが推進する理由は、国内市場における競争力の強化と、国際的なビジネスハブとしての地位を確立するためです。特に、アジアの主要都市であるシンガポールや香港といった国際的な競争相手と比較して、日本の大都市圏における高品質なビジネス環境の提供は、グローバル企業を惹きつける重要な要素となっています。これらの大規模プロジェクトにより、日本の都市は国際的なビジネスと投資の中心地としての魅力を高め、アジア太平洋地域における経済的リーダーシップを強化することを目指しています。

中小企業と個人経営店舗の現状

一方で、中小企業や個人経営の店舗は、働き方の変化とリモートワークの影響で、都心のビジネスパーソンの人口が減少しています。赤字の止血ができなければ閉店や退去が避けられません。高額な敷金返還や原状回復義務の履行に関する相談が増えています。改正民法はテナントにとって強い味方となり、敷金返還や原状回復工事費、B工事の適正価格を把握することが経営者の責務です。変化に対応し、勝ち残るための戦略を立てることが重要です。私たちは、御社の挑戦を全力でサポートし、成功を祈願しています。

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