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ファンタジー大好き  正月休みの読書

毎年、正月休みには、読み応えある小説を一冊読むことにしている。
今年は「黄色い夏の日」高楼方子・作を読んだ。
とてもよかった、楽しめた。
児童書、青春文学、ファンタジー小説である。
といっても初めて読む本で、なんの予備知識もなかった。
以前、この作者の他の本を何冊か読んでいて、おもしろいに違いないと思い図書館から借りてきたのである。
どこかにファンタジーと書かれていたわけではなく、読み終わってから、これは正統的ファンタジーの王道だと気づいた。
ファンタジーは「if」の世界である。
もし・・・だったら・・・だろう、という仮定の物語である。
 
人は一回限りの人生しか体験できない。しかしもっと色々、さまざまな人生を生きてみたい。
人が小説を読み、ドラマを楽しみ、ゲームに熱中するのも、他の人生を疑似体験できるからである。
「黄色い夏の日」は、人の心の強い想いが、現実のかたちになったら…という「if」でつくられた物語である。
物語の中間点あたりで、そろそろ、さりげなく、異変がちらつく。
このちらりとしたヒントから、物語の後半、結末を予測しながら読み進むのが、ファンタジーものの楽しみであり、醍醐味ともいえる。

正月休みの読書、過去には、「トムは真夜中の庭で」「時の旅人」「思い出のマーニー」などがある。
いずれも児童文学で、ファンタジー小説の秀作、名作である。
「トムは真夜中の庭で」F・ピアス作は、主登場人物はトムとハティという少女の二人だけで、ストーリーとしてはシンプルである。時の流れがテーマで、感動的な結末にいたる。
「時の旅人」A・アトリー作は、ロンドンに住む現代の少女ペネロピーが中世の農園にタイムスリップし、歴史の変貌を体験する物語で、読後しばらく酩酊感にとらわれる。
「思い出のマーニー」J・ロビンソン作もトムとハティのように、二人の少女のおりなす話で、次第に謎のとける結末が感動的である。
 
人は今という「時」を生きている。もしこの「時」を超高速回転させられたら、まわりの風景はどうなるか。
生まれたばかりの双葉の植物は、みるみる大きくなり、大木となり、あっというまに枯れ、あとかたもなくなる。
逆回転した場合は、誰でも知っているにぎやかなテーマパークは消失し、元の変哲もない海岸に戻り、はぜ釣りの小舟が点在する風景となってしまう。
ファンタジーは、「今」をちょっと動かすことで、見えなかった風景、忘れていた景色、別世界を見せてくれる魅惑的なツールなのである。
高齢読者のファンタジー好きはまだまだとまらない。

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