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誕生日に顔が真っ赤になるほど、恥ずかしい思いをした話。

先週の水曜日、46歳の誕生日を迎えた。恥ずかしながらイベントごとが好きなタイプなので、誕生日に仕事を入れる気にもならず、かといって直前は仕事でバタバタしていたので特にすることも決めておらず、誕生日の前夜になって、「あれ、明日どうしよう!?」となった。

翌日の天気予報を見ると、快晴。気温も20℃前後とちょうどいい気候。「せっかくだから海でも行ったら気持ちがいいかな」と軽い気持ちでネット検索していたら、海に面した太陽がいっぱいに射し込んでくるレストランを見つけてしまった。

場所は葉山からさらに南に下ったあたりで、公共交通機関を使って行くにはいささか不便な場所だった。恐る恐るキタムラにお伺いを立ててみると、誕生日ということもあってか、渋々ながら車を出してくれるという。これはありがたい。早速、ネットからレストランに予約を入れた。

問題は、一緒に行く相手だ。残念ながら、キタムラはシーフードアレルギー。海沿いのレストランでシーフードづくしの料理が出てくるなか、キタムラを同席させるのはレストランにもキタムラ本人にも申し訳がない。さて、誰に声をかけようか。

18年来の親友である手塚マキに連絡をしてみると、偶然にも18時までなら空いていると言う。予約をしたのはランチなので、ちょうどいい。翌朝、キタムラの運転で手塚の自宅まで迎えに行き、そこから葉山へと向かった。

レストランに到着すると、私たちは息をのんだ。予約サイトでは、確かに大きく取られた窓から存分に海が眺めることができる様子が窺えたのだが、これはカメラマンの腕がいいだけで、実際に行ってみると期待はずれだったということがしばしば起こる。だが、このレストランに限っては想像を上回る絶景で、料理が出てくる前から「これは大当たりだ」とテンションが上がってしまったのだ。

これだけの眺めを誇るレストランならば料理はそこそこというケースも多いが、この店は違った。ウニやオマール海老や葉山牛など高級食材が次々と出てくるだけでなく、品のある味付けも素晴らしく、私たちは目の前に広がる海を眺めながら舌鼓を打っていた。

すると、店内のスピーカーから桑田佳祐の歌声が流れてきた。急に雰囲気が変わったので、どうしたのだろうと振り返ってみると、店員さんがロウソクに火がついたバースデーケーキを運んできた。どうやら、私たちの2つ隣りの席に座っていたご夫婦のどちらかが誕生日を迎えたようだった。

私たちを含め、店内にいた全員でお祝いをしたが、そんななか手塚がいたずらっぽい笑顔をこちらに向けて、こう言った。

「オトさん、他人のバースデーケーキで誕生日気分を味わってください笑」

「だな」

私も、苦笑いで返すしかなかった。

ところが、その30分後——。

私たちはこの日のメインである葉山牛の絶妙な火入れ加減を思い返しつつ、海を眺めながらデザートを待っていた。私たちのコースは12時30分と遅めのスタートだったため、他のお客様はすべて退店しており、店内には私たちだけが残っていた。

すると、またしても店内のスピーカーから聞き覚えのある桑田佳祐の歌声が聞こえてきたのだ。大事なことなので、繰り返しておく。他のお客様はすべて退店しており、店内には私たちしか残っていないのだ。

ここまで読んだみなさんは、当然ながら「手塚さんによるサプライズだろう」と想像するだろう。しかし、彼がそういう気が回るタイプの人間でないことは18年の付き合いである私が1番よく知っている。では、いったい誰が——。

狐につままれたような表情をしていると、私の目の前にバースデーケーキが運ばれてきた。

「Happy Birthday 2022.4.6」

と書いてある。

「おめでとうございます!!」

わざわざ奥からシェフまで出てきて、祝福の言葉をかけてくださった。ありがたい。たしかにありがたいのだが、いったい誰がこのサプライズを仕掛けてくれたのだろう。まさか、キタムラ……。いや、手塚ほどではないにせよ、キタムラもやはりそういう気が回るタイプではないはずだ。

不思議に思っていたのは手塚も同様らしく、スピーカーから流れる曲が止まると、ケーキを運んできてくれた店員さんに手塚が疑問をぶつけた。

「え、なんでオトさんが誕生日って知ってたんですか?」

ここで、衝撃の答えが返ってきた。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
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