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なるほど、こうやって格差って再生産されていくんだな。

それはもう、さわやかな好青年だった。

年齢を聞いたら30代前半ということで、もしかしたら世間ではすでに青年とは呼ばない年齢なのかもしれなかったが、もしも見た目でそのあたりの境界線を自由に動かしてもいいということなら、ともかく彼はさわやかな好青年だった。

と、いまどき御法度とされているルッキズム全開の文章から書き始めてしまうほど、私は取り乱している。それほど衝撃を受けた出会いだった。

数週間前のことだ。若手経営者が集まる勉強会に、なぜか私がパネリストとしてお声がかかり、断ればいいものを魅力あふれる若者たちと出会いたいとの思いから、つい車椅子に乗って、のこのこと出かけていった。私の登壇も終わり、すべてのプログラムが終了し、最後に懇親会が開かれた。

時節柄、アルコールが提供されなかったことだけが唯一の心残りだったが、噛めば噛むほど旨味を感じる鴨肉のローストやこれでもかというほどダシの効いた卵焼きに舌鼓を打ちつつ、参加者たちの「乙武さんのお話、とても心に響きました」というおべんちゃらを真に受けて気持ち良くなっているところに、彼が話しかけてきたのだ。

「乙武さん、ぼく、小学生の頃に本を読ませていただきました」

たぶん、これまでに3万回くらい言われてきた。いや、めちゃくちゃありがたいのだけど。

「じつは、最後まで読み通すことができた初めての本だったんです」

それも、たぶん1000回くらい言われてきた。これもありがたいことなのだけど。

ただ、そのあとに続く言葉が、これまで一度たりとも聞いたことのない衝撃的なものだった。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.com/h_ototake/m/m9d2115c70116

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