【義足プロジェクト #14】「7.3メートル!」——全員が駆け寄り、メジャーで計測したあの日のこと。

この記事は、今月7日(日)に「FRaU×現代ビジネス」にも掲載されます。

 毎年十一月に渋谷ヒカリエで開催されている「超福祉展」のための撮影は、移設された東京都中央卸売市場のすぐ近くにある新豊洲Brilliaランニングスタジアムで行われた。全天候型の陸上競技用六十メートルトラック。パラアスリートのための義足開発ラボラトリーも併設された、二〇一六年十二月にオープンしたばかりの施設だ。豊洲に半透明のフィルム膜で覆われたアーチ型の外観がひときわ目を引く。多くのパラアスリートが練習に使っていて、以前にも紹介した義肢装具士の沖野氏によるランニング教室もここで開かれている。

 そんなすばらしいスタジアムを私の「デビュー戦」に選んでくれたことに感謝しつつ、午後一時半、スタジアムに到着した。遠藤氏、小西氏、義肢装具士の沖野氏、それから撮影スタッフなど、ぜんぶで十人のメンバーに迎えられた。

 小西氏は、なんとこの日の朝五時までスタジアムで作業を続けていたという。「風呂に入るためだけに家に帰ったようなもんですね」と言って笑う彼の顔はさすがに少し疲れているように見えたが、ニコニコしながらデザインの特徴を語ってくれた。

「黒と赤を基調にして、シュービルの格好良さイメージしてデザインしました。健常者にはできない楽しみ方としては、脛とふくらはぎの外装部分が着脱可能になっていることが上げられます」

 撮影チームのリーダーは、映像プロデューサーの鎌田雄介氏だ。母親同士が大親友という幼稚園時代からの付き合いで、プロジェクトの記録映像の撮影をお願いしたところ、ふたつ返事引き受けてくれた。

 スニーカーを履くのはこの日がはじめてだった。ふだんの自宅での練習は、むき出しの足部でそのままフローリングの床を歩いていた。スニーカーとフローリングの相性が悪いらしく、とても歩きづらかったからだ。はじめてスニーカーを履くことも不安要素のひとつで、硬質ゴム素材のトラックとの相性も気になっていた。

 練習ではまだほとんど歩けてない状態で、はたして何メートル歩けるのだろう。そんなことを考えていると、遠藤氏が近づいてきた。

「コンバースのスニーカーが届いてなくて。すいません、いまから取りに行ってきます」

 遠藤氏は雨の降りしきるなか、スタジアムを出て行った。

 スニーカーが到着するまでの三十分、私はひとりで考えていた。

 まともに歩けたこともないのに、新しいスニーカーで歩くなんて無謀なことだ。だけど、 超福祉展で披露する映像をインパクトあるものにするには、どうしても数メートルは歩かなければならない。普段はポジティブに考えるタイプの私だが、つい気を許すと、「もしできなかったら」と弱気の虫が湧いてきた。

 正直に告白しよう。

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