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勇気を持って発言したシーンが、全カットになっていた件。

今年も宇野常寛さんが主宰するPLANETSの恒例イベント『PLANETS大忘年会』に登壇させていただいた。例年、年の瀬にこのイベントに登壇して一年を振り返るというのがルーティンのようになっている。

これまた恒例となっているのだが、登壇者が今年を振り返るうえでのキーワードをそれぞれスケッチブックに書くことになっている。私は「帝国崩壊」と書いた。もちろん、念頭にあったのはジャニーズ事務所のことだ。

今年3月にBBCが故ジャニー喜多川氏による性的虐待を告発するドキュメンタリーを放送したり、元ジャニーズJr.であるカウアン・オカモト氏の告発がきっかけとなり、あれだけの権勢を誇っていた“ジャニーズ帝国”が一気に崩壊した。これは今年一年を振り返るうえで欠かせない事象だろう。

私自身、個人事務所で活動している身からすると、ジャニーズをはじめとする大手事務所の在り方については少なからず思うところがあった。こちとら不祥事を起こせばコテンパンにやられるのに、たとえばジャニーズ事務所のタレントが何かをやらかしても、ほぼスルー。

これに関しては、実際にジャニーズ事務所(や他の大手事務所)が圧力をかけているのか、マスコミが忖度を働かせているのかはわからない。だが、そうした傾向があまりに顕著で理不尽さを感じていたこともあり、今回の“帝国崩壊”には、正直に言うと感慨深いものがあった。もちろん、所属タレントに罪がないのは言うまでもない。

今年はジャニーズだけでなく、崩壊していく組織をよく目にした。“帝国”とまで言えるかわからないが、ビッグモーターの不祥事も内部告発から露呈し、さらには安倍元総理が在職中にはあれだけの権勢を誇っていた安倍派も裏金問題によって瓦解していった。

ここからが大事なことなのだが、私が「盛者必衰で大きな組織もいつかは崩壊していきますね」ということを書きたかったわけではない。いくら大きな組織であっても、おかしなことがあれば声を上げるべきだし、勇気を持って戦えば崩壊させることができる、ということが証明された一年だったのではないか、ということを指摘したかったのだ。

その上で。

私はこの一年を、そしてこの事象を、「まあ、たしかに。2023年はそんな一年だったね」で終わらせてはならないと思っている。ジャニーズの件は決して他人事でも、対岸の火事でもなく、誰もが自分ごととして捉えるべき事象だと思っている。

芸能の世界だけでなく、誰だって組織にいたり、仕事をしたりしていれば、あきらかにおかしいと感じること、理不尽だと思うことはあるだろう。そんなとき、私たちは多くの場合で、「まあ、そんなもんだろう」「ここで逆らってもいいことないし」とスルーしてしまう。

私たち自身がそうした態度を変えていかなければ、きっとまたジャニーズ問題のようなことは起こるだろう。権力者によるパワハラ、セクハラの発生のみならず、それを知っていながら大多数が見て見ぬフリをしたり、被害者たちも泣き寝入りしなければならないといった事態も防げない。

私たちは、変わらなければならない。

今回のことはジャニー喜多川氏だけの罪ではない。それを見過ごし、結果的に加担してきたマスコミも、そうした構造に対して特に疑問を感じることなく、ただエンタメとして享受してきた私たち自身も変わっていかなければ、また同じようなことが起こってしまう。

「悪いとわかっていても、なあなあで済ませてしまう」私たちの悪癖は、日本社会を腐らせていく病理でもある。この空気を、この習性を正していかなければ、日本社会はいつまでも停滞したままだろうと危機感を抱いている。

少なくとも、私は変わろうと決意した。だから、あるテレビ番組の収録で、これまでなら我が身かわいさから絶対に口にしなかったようなコメントを発した。それは、どう考えても芸能界においてはタブーとされている内容だったが、いつまでも忖度していては何も変わらないと、意を決して発言することにした。

その内容とは——。

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