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YouTubeに寄せられるコメントに見る「障害者観」の変遷と停滞。

今日でYouTubeチャンネル「乙武洋匡の情熱教室」を開設して、ちょうど4ヶ月になる。これまで70本以上の動画を公開し、チャンネル登録者数は2万4千人。これが多いのか少ないのかはわからないが、日頃からご視聴くださっているみなさんには心から感謝している。

これまでもTwitterInstagramなど、様々なSNSを使って発信を続けてきたが、YouTubeというメディアの特性か、そこに寄せられるコメントはこれまでに触れてきたものとはまた種類の異なるものが多く、私自身が驚かされるもの、考えさせられるものもしばしばある。

最も驚かされたのは、「え、乙武さんって手足ないんだ!?」というもの。このコメント、マガジンに登録してくださっているような方からすれば、いったい何の冗談だろうと思われるかもしれないが、書きこんでいる方(確認できただけで何人かいたが)はと言えば、どうやら大マジメのようなのだ。

この前段階で、すでに驚かされることがあった。私が取り組んでいる義足プロジェクトのメンバーで義肢装具士の沖野敦郎さんが、大学の講義に呼ばれて学生たちに話をした際、義足プロジェクトのことを紹介しようと「乙武さんって知ってる?」と聞いたところ、「はい、あのAbemaの人ですよね?」と返ってきたというのだ。

私自身も、街で声をかけられる際はほとんど「本を読みました」とか「ワイドナショー観てます」という言葉だから、これには驚いてしまった。だが、考えてみれば『五体不満足』が出版されたのは1998年で、ほとんどの学生はまだ生まれていないし、また一人暮らしの学生だと最近はテレビを家に置いていないことも多いので、「乙武さん=Abemaの人」となるのだそうだ。

そして、私がMCを務めるニュース番組『AbemaPrime』では、だいたいこのような画角で放送されている。だから、たとえ番組を2時間観ていても、私が四肢のない障害者で、日頃は車椅子に乗っていることが、情報としては伝わらないのだ。

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そこで、AbemaTVで初めて私の存在を知り、「ニュース番組でMCを務めている人」と認識した若者が何かの拍子に私のYouTubeを観ると、先述したように、「え、乙武さんって手足ないんだ!?」と仰天するようなのだ。もちろん、私自身もまたそのコメントに仰天しているわけだが笑。

こうした反応に驚きはするが、とてもポジティブな傾向だとも思っている。というのも、これまで障害者がメディアに登場する機会といえば、つい先日放送していた『24時間テレビ』やお涙頂戴のドキュメンタリー番組ばかり。いかに日常的に障害者が「特別な意味なく」メディアに出演している状況をつくり出していくかが課題だと思っていたからだ。

そうした意味では、日頃観ていたニュース番組のMCが、じつは四肢のない障害者だったというドッキリのような状況は、若者たちを驚かせてしまっていささか心苦しくはあるが、社会の進展としては好ましいのではないかと思っている。

その一方、思わず嘆息をつかざるを得ないようなコメントが寄せられていることも、また事実である。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.com/h_ototake/m/m9d2115c70116

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