さよなら、トランプ。

今回のアメリカ大統領選、私はいつになく時間を割いてウォッチしていた。私がMCを務める『選挙ドットコムちゃんねる』『AbemaPrime』でもメイントピックとして何度も扱っていたし、ありがたいことに実際に現地まで取材に赴いたことのある友人が勉強会を開いたりしてくれた。おかげさまで選挙の情勢に詳しくなったばかりか、ついでにアメリカの州名と位置関係が頭に入ってきたりもした。

たとえば、

トランプ大統領についてはあまりに破天荒な言動ばかりがフィーチャーされがちだが、じつは失業率の回復など経済的指標において評価すべき点も数多くあったことや、

一般的にヒスパニック系移民はバイデン(民主党)支持と言われているが、じつはフロリダのキューバ系移民などは社会主義を嫌ってアメリカに移ってきているので、「バイデン政権下では社会主義になるぞ」とトランプが喧伝したことでフロリダではトランプ支持が上回ったことなど、

表層的に見ていただけではなかなか触れられなかった情報にも触れることができ、個人的には大いに楽しめた選挙だった。しかし、「だった」と安易に過去形にすることもできず、ここからトランプ陣営による訴訟などが続き、次の大統領が正式に決定するのはまだまだ先のことになりそうな気もする。

さて、ネット上の声を見ているかぎりでは、日本のリベラル陣営もバイデン支持のようだった。彼らの一部は「トランプ支持者なんて低学歴の何もわかっていないやつら」と決めつけるような書き込みをしていたが、私はあながちそうでもないと思っている。

人柄や振る舞いといった部分にあくまで目をつぶり、先ほども触れた失業率などの経済動向や、今後もさらなる台頭が予想される中国に対する抑止策など、あくまで「実利」だけに目を向ければ、トランプのほうが頼もしいと感じる人がいても、そう不思議ではない。もちろん、実利に目を向けてもバイデンを支持するという方もいるだろう。

そう言えば、『AbemaPrime』でコメンテーターを務める夏野剛さんは、共演時にこんなことをおっしゃっていた。

「今朝ね、中1の娘に『パパがアメリカ国民だったら、どっちの人に投票するの?』と言われて、『バイ……』まで言えたけど『バイデン』って言えなかったんですよ。何でかと言うと、またポリティカル・コレクトなすごいフツーの政治に戻って、やれ社会福祉だ、やれ増税だと言って、結局そのツケを払わされるわけでしょ」

さらに、夏野さんはこう続けた。

「でも、たぶん他人に聞かれたら、『そりゃバイデンだろ』と答えると思うんですよ」

それは、まさしくリベラル陣営もとい“リテラシー層”から眉をひそめられることを避けるためだろう。しかし、実際にどちらに投票するかと言われれば迷ってしまうという心情を率直に語ってくれた。

そこで、私は夏野さんにこんな質問をぶつけた。

——夏野さん、そうは言っても、アメリカって“他人の国”じゃないですか。これがもし自分の国だったら、どちらタイプのリーダーを選びます?

「僕の場合、アメリカの学校も出てるし、アメリカにも住んでたので、一応自分のこととして考えたときに『バイデン』と言えない自分がいたんですよね。これが本当に“他人の国”だったら、『そんなの民主主義が大事なんだからバイデンだろ』と言えちゃうんですよ。むしろ、自分ごととして考えたから、『バイデン』と言えなかった……」

これを聞いて、私自身、「これが自分の国だったら」と考えてみた。

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