虚構日記2023/11/05
深夜2時に仕事の書類をポストに投函しに行った。
明日起きてから投函してもよかったのだけれど、午前の集荷に確実に間に合わせたかったし、投函するために早起きするのも嫌だった。
日曜の真夜中は人も少ない。
待機しているタクシーの数もまばらだ。
静かな夜の街は好きだ。
きっと人が少ないセカイが好きなんだろう。
ポストに封筒を入れ、帰ろうとするとバスターミナルの前に男が立っていた。
夜闇に青白い顔が浮かんでいる。
細い男だ。若いのか若くないのかよくわからない。
そんな男がただ、立って車道を見つめている。
なにを見ているのか見当もつかない。
なにかしら病んでいる人かもしれない。
刺激しないようにしよう。
なにも見ていないような顔をして彼の前を静かに通り過ぎた。
彼から5mぐらい離れたところで、放屁の音がした。
あきらかに彼だ。
そうか。こんなにも夜に屁は響く。
なにも聞かなかったことにして、そのまま歩き続けた。
角を曲がるとき、ちらっと彼を見た。
変わらず立ったままだった。
これでいなくなっていれば安い怪談だけれど現実にそんなことはない。
彼はいつまであそこに立っているのだろう。
なにかを待っているのか。
それとも夜の観察者なのか。
だとしても、細身のわりにでかい屁をこく人だった。