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掃除

 大学入学前に、新幹線の車内を掃除するアルバイトをしていた。大学受験費用を貯めるためだ。
 朝早くに家を出て、夜に帰ってくるという決まった生活を送った。もちろん、その後に自宅で受験勉強をしなければならない。疲れ果てていたものの、将来のために歯を食いしばって続けた。
 一両をひとりで担当する。通路や座席間をほうきで掃いてモップ掛けする。窓やテーブルを水拭きする。座席カバーを交換し、反対方向に回転させる。シートポケットにあるごみも取る。喫煙車では灰皿もきれいにする。トイレや洗面所もモップ掛け、水拭きする。修学旅行車両に当たると大変だった。ゴミが散乱し、一人で時間内に終わらず、手伝ってもらうことも多かった。逆にグリーン車担当になるとあまり汚れておらず、回転させる椅子が重いぐらいで掃除も早く終わった。
 ゴミ担当になると、16両編成を二人で、一人8両ずつのゴミを集めて回る。夏の暑いときは臭いがきつかった。
 あれから30年以上経つ。新幹線に乗る際に駅のホームで作業している清掃員の方を見ると、あまり汚さないように、出たごみも自分でゴミ箱に捨てるように心掛けている。

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