見出し画像

【奈良の暮らしを感じる旅】 - 2024年3月

移住先探しの旅として奈良を巡ってみることにした。
これは生き方を探して仙人修行に励む人間の話…。

~暮らしを感じる旅~

観光として名所を巡る旅ではなく、その街の雰囲気を味わうことを目的に、道を歩いてみたり、人に出会ってみたり、お店に入ってみたり、をする旅をしてみる。そこに住んでみるとどうかなと思いを馳せながら過ごす、暮らしを感じる旅。そういう名目で巡る旅は、実は観光よりも楽しみが多く、思い出も深くなる気がする。

生まれ育った奈良の地は実家もあり、住むのに申し分ない。一方で、自分の居住の地は、山深く水が綺麗で土が豊かなところで暮らしていたいと思っている。漠然と奥大和(奈良南部)が良さそうと見当をつけてみた。


其の一,吉野

〜TENJIKU吉野〜

SAGOJOというサービスにTENJIKU吉野のという拠点の受け入れを見つけた。

『TENJIKU(テンジク)』は、地域の課題を解決する “ミッション” をとおして、地域の人たちとより深く関わりながら“仲間” になれる新しい旅体験 を届けていきます。
地域のために “ミッション” へチャレンジしていただいたお返しに『TENJIKU』へご滞在中の宿泊費は無料となります。地域を訪れた観光客として「泊まる」のではなく、地域の一員として「暮らす」ような旅をぜひ味わってみてください。

地域のお手伝いをするとタダで泊まれる。地域に触れたい僕にとってはこれ以上にないサービス。TENJIKU吉野のおかげで吉野に触れる取っ掛かりができた。


〜まるで実家にいるような暖かさ〜

宿に着いた日は地域のお手伝いとして特に必要な作業はなく、夜に地域の方との交流会を設けてくださっていた。みんなでお鍋を囲み、まるで実家にいるような暖かさで迎えてくれた。定期的に集まってご飯会をしているのだと。素敵だなと思った。そして、毎朝おじちゃん2人でモーニングを習慣にしているらしく、ぼくもお邪魔させてもらうことにした。翌朝6時に向かってみると言っていた通りモーニングをしていた。新聞配達終わりに寄るのがいつもの流れになったらしい。しかも結構いい朝ご飯。気持ちのいい朝の始まりを迎えられた。


〜和紙づくり〜

TENJIKUのお手伝いとして、殿川という集落で和紙作りをしている方を訪れた。和紙は楮という木からできるらしい。今回は楮の皮を剥ぐ作業。これをひたすら続ける。この皮が紙になるなんて不思議なもんだなぁと考えついた人はすごいなぁと思う。地域おこし協力隊として吉野に夫婦でやってきたようで地域に根差して活動されている。移住のビジョンとしては理想的な路線と思う。地元の小学生は卒業証書が和紙らしい。しかも自分たちで和紙から作るらしい。すてき。

夜は宿のキッチンで鍋にした。近くにスーパーもコンビニもあり、食材には困らない。吉野の上市の辺りまでは電車が通っていて便利に過ごせる場所だなと思う。


〜空のすみか〜

作業がお休みの日には吉野山へ出向いた。E-bikeで道路をさくさくと漕いでいく。道中柿の葉寿司や葛餅を食べたり、中でも豆腐屋さんの豆腐ドーナツは人生一好きかもというくらい美味しかった。E-bikeと言えども吉野山はすごい坂道で登るのはなかなか大変。下千本から奥千本まで、桜の季節に満開を拝めると圧巻なんだろうけど、まだ咲くには早い季節。目を瞑って想像に花を咲かせて楽しんだ。金峯山寺や金峯神社を拝んだ。義経の隠れ塔と呼ばれる小屋があり、そこは空のすみかなのだと。澄んだ空気に心も澄んでゆくような心持ちだった。

夜にはTENJIKU吉野の裏にあるゲストハウス三奇楼の間借りレストランの蔵Barに立ち寄った。暖かい雰囲気のご夫婦がご飯やお酒を出してくれる。二階に絵本や絵が飾られていて、絵本の朗読会をしてもらえた。常連さんが出入りしたり、宿泊に来た人とおしゃべりしたり、ゲストハウスならではの空間がそこにあった。


〜じゃがいもの植え付け〜

国栖の集落の人たちの共同畑のお手伝いをさせてもらった。じゃがいもの植え付け作業だ。半日だけど、耕して畝を作って、じゃがいもを植える体力仕事だ。こうやって、身体を使ってると役に立てているという実感が得られていい。若い人間が来て気合が入ってきたのか、おじいちゃんたちが元々決めていた柵の範囲を超えてどんどん広げだす。その分作業が大変なんだけど、いい汗をかけた気がする。にこにこしながらゆっくり歩くおじいちゃんたちを見ていると、なんだかどうぶつの森を見ているようだった。


〜貧乏は金で買えない〜

数年前に移住してきたという方が、庭と畑を手づくりしているらしく、見せてもらえることになった。とても立派。憧れの家を見れたようで嬉しかった。ただぼんやり空を眺めたくて吉野に引っ越してきたのだと。

この日はTENJIKU吉野のチェックアウト日だった。次の行き先に困っていたところ、泊めてもらえることになった。暖かく受け入れてもらえたことが身に沁みる。貧乏は金で買えないという経験はこういうことを言うんだろうな。

吉野では人の温かさに触れる旅になった。人を迎え入れるという土壌に育まれているんだろうなと感じられた。また何かお手伝いできることがあれば伺いたいとそう思えた。感謝感謝。


其の弐,東吉野村〜川上村

〜旅の醍醐味〜

次は吉野よりもう少し奥に入ってみることにした。まずは国栖(吉野町)にあるゲストハウス空を拠点に東吉野村を訪れることにしてみる。空のオーナーさんに相談してみると東吉野村の移住相談を受けてくれる方を紹介してもらえた。相談の時間を作ってもらえたので、翌日東吉野村の移住相談施設兼チャレンジショップであるカメヤを訪れることに。僕の方が漠然と雰囲気を感じたい程度なので、何を相談するのかも曖昧だったのだけれど、東吉野村がどんな感じか、どういう方が移住されているのかなどざっくばらんにお話してくださった。こんなふらっと来た者にお話してもらえてありがたい限りだった。

その日はカメヤでは地域食堂が開かれていて、春分の頃でちらし寿司の日だった。地元のお母さんたちがわいわいお店をやっていた。心地よい空気感。こういう開かれた場所があるのは素敵な町だなと感じた。

その後には、たまたま地図を見ていて見つけて気になっていた、人文系私設図書館ルチャ・リブロへ行ってみた。ここがなんとも素敵なところだった。山の川合いにぽつんと古民家が佇む。入って見ると部屋中に本がいっぱいの本棚、ストーブを囲むように椅子とソファとこたつ。ふらっと入って来た人たちが本を読んでいる。おもてなしをされるでもなく、でもそっとお茶を出してくれる。見られているでもなく、でも受け入れてくれている。そんな感覚を受ける場所。居心地がいいなぁと思った。ここにふらっと通いたいなぁと思ったし、こういう居場所を作りたいなぁと思った。今回いちばんの個人的収穫だったと思う。多分きっと、誰かに紹介されて行ったのではなく、宝探しのように自分で見つけて行けたのが、気分的にとても気持ちよかったんだと思う。これが旅の醍醐味だ。


〜人と自然のちょうどいい関係〜

翌日は川上村を訪れた。水が綺麗で土が豊かな所を巡ることをテーマに据えていたのだが、森と水の源流館というまさしくな施設に当たれた。川上村は吉野川の源流でそこから紀の川となって和歌山に流れていく。村をあげて源流を綺麗に保つという誇りを感じることができる。川の営みとしてのダムや山の営みとしての林業があり、ここには人と自然のちょうどいい関係が成り立っているように思えた。

そこから、また車を走らせてダムを越えていく。流れている小川は淀みのない美しさ。夏にはキャンプのために賑わうそうだ。川に足をつけたいと思ったが、3月ではまだまだ厳しい寒さだった。川が綺麗な所はやっぱりいい。


〜小枝と遊ぶ〜

今回の拠点は川上村にある匠の聚(むら)のコテージ。宿泊コテージやカフェ、芸術家のアトリエがある。アート体験を楽しめる場所だ。翌日には小枝と遊ぶワークショップがあったので、参加してみることにした。木の枝などで飾りのようなものを作ってみる。なにか指導されるわけじゃなく、あるものを使って自分なりのものを作るという体験が楽しかった。アートってこんな感じで気軽に楽しめるものなんだなぁという感覚がよかった。適当にやってみたけど、なんだかいい感じにできた気がする。

小枝と遊ぶ


〜東吉野村に暮らすという選択肢〜

昼食には東吉野村にあるきのこの舘を訪れた。お店の真ん中に囲炉裏テーブルがあり、みんなそこできのこを焼いている、素敵お店だった。きのこ鍋定食ときのこの網焼きを堪能した。建物の奥にはきのこの栽培工房があったが、部屋の棚一面に栽培されるきのこはなかなか圧巻の景色だった。

部屋一面にきのこ
囲炉裏できのこの網焼きができるお店

そこの方と移住を考えているよという話をしていると、最近家を買ったのだということで見せてくださった。まだなにもない、これから家具を揃えていく家。庭も畑ができるくらい広い。どういう暮らしができるだろうかイメージが膨らむ。移住するなら部屋を貸せるよと声を掛けてくださる。今すぐに手を挙げるという状況でもないのだけれど、お店を手伝ってもらう代わりに部屋に住むとか、色々考えようがあるよという話をもらえたのが嬉しかった。おかげで東吉野村に暮らすという選択肢が僕の中に生まれた。


其の参,室生〜宇陀

〜村を人間と自然が共存する美術館に〜

翌日は室生を訪れた。上空からの地図を見ているとナニカの地上絵かなと気になる場所が目に入った。調べてみるとそれは室生山上公園芸術の森という。ちょっと面白そうなので、室生まで足を伸ばしてみることにした。山の中の広大な土地に神秘的な彫刻が広がっている不思議な空間だった。室生の村を人間と自然が共存する美術館にしたいという想いで、旧室生村出身の井上武吉とダニ・カラヴァンという彫刻家が作り上げたという。この日は雨だったけど、天気の良い日には芝生と森を歩きに来るのも気持ちが良さそう。


〜子育てに良さそうな雰囲気〜

その後は室生のふるさと元気村で里山ピクニックというイベントをやっているのを見つけたので寄ってみた。ふるさと元気村は廃校になった小学校を宇陀市文化芸術活動体験交流施設として利用されているらしい。里山ピクニックには行きたいと思っていたごはん屋さんが出展していて楽しめた。ガレットとガパオライスを頂きました。家族連れの子どもたちがわいわい集まっていて賑やかで、宇陀室生は子育てに良さそうな雰囲気を感じられた。


〜薬園散策〜

宇陀では森野旧薬園に立ち寄った。裏山の庭の薬草園と言うが、めちゃくちゃ広々していた。資料館もある。この辺りでは大和当帰などの漢方薬草などが名産らしい。薬になる植物を実際に目にすることが普段あまりなく、薬草を身近にかんじることができた。よく見る植物にも薬効があり、摂り方を知らないだけで活用法はあるもんなんだなと思った。薬園散策できて、資料館を見れて、なかなか満足だった。


其の四,天川村

〜土偶づくり〜

この日は天川村のパン屋さんpranaへ。pranaの方々とは屋久島に来てくれていた時に出逢い、その時に宇宙の話から土偶ワークショップをやりたい!と今回の開催まで運び、招待してもらえた。屋久島から土偶ワークショップのために天川村を訪れるのも稀有な経験。お昼のご飯会から招待してもらうと、めちゃくちゃ美味しいネパールカレーを振る舞ってもらい、みんなでわいわいできて、素敵な時間に感謝。

土偶づくりはもちろん初めての機会。話を聴いて見本を見せてもらって、いざ製作。土をこねこね、自由な思いつきで、作ってみる。イメージを手元で形にしていくのが面白い。自分の作業に集中する。ふと、隣の人のを見てみると、これもまた面白い。みんなそれぞれ個性的な土偶を作っている。土偶には使い勝手とか美しさとかの正解がないから、変な縛りがなくできるのがいい気がする。形成から2ヶ月程乾燥させてから焼いて完成とのことで、出来上がりが待ち遠しい。

土偶とはなんなのか?


其の五,橿原

〜ゆっくり本を読んで、ゆっくり珈琲を飲んで〜

橿原市今井町を訪れた。今井町は古民家が並び風情と情緒が残る町並み。地区内に残る伝統的建造物の数は日本一らしい。そんな町並みの中にあるコミュニティ&ブックカフェ「今井文庫」に立ち寄った。ゆっくり歩いていく「急がないこと」をコンセプトにした場所。性に合っているんだろうなぁ。すごく居心地のいいところだった。ゆっくり本を読んで、ゆっくり珈琲を飲んで、穏やかでいい時間を過ごせた。今井町の名物おにみみコーラが美味しかった。コーラと聞けば、身体にわるそうとも思うけど、おにみみコーラの原料を見ると、ナツメグ、シナモンなどのスパイスたちでなんだか効きそうとコーラのイメージが変わった。自分のオリジナルコーラも作ってみたいという野望もひっそり生まれた。

今回の旅で、町の小さな本屋さんが好きだなぁと思った。そこには居てもいいと思える心地よさがあった。


其の六,実家

〜実家に帰省〜

奈良は実家があるので、旅行で遊びに行きながら、実家に帰省もできた。帰った日は両親共に出張で家にいなかったのだけど、いとこ親戚たちが近くに住んでるので、みんなでご飯して泊めてもらって、帰ってきたなぁとしみじみと実家の暖かさを感じる。翌日には両親、兄夫婦とも一緒にご飯を食べて、家族の時間を過ごせた。前に帰省した頃より、姪っ子が増えていたし、いとこにも子どもができていたし、家族親戚に賑わいがあってなによりだった。こうやって家族に会えるのも、迎えてもらえるのもありがたいことだなぁと思う。親孝行になるようなことができるように精進していよう。

実家の周辺をさんぽしてみた。道や家並みが新しくなっている所もあれば、変わってないなという所もあって、景色とともに思い出も蘇り、趣深い時間になった。

大池より薬師寺を望む


奈良旅を終えて

今回、移住先探しの旅として奈良を巡ってみた。やっぱり僕は奈良が好きだなぁと思った。実家の近くに住むのもいいなぁと思うし、また離れた場所で自分の暮らしを作りたいなぁとも思う。巡って回った吉野の辺りに住んでみるのもいいなぁと思えたし、今後の想像も膨らんだように思えた。今すぐ移住しちゃえ!という突発的な行動力は僕にはあまりないのだけれど、じっくり自分の腑に落とせるような材料ができたことで、今後の展望を考えてみることができるようになった。それが嬉しい。興味のある場所と人と関係を築くことで、自分の幅が広がりを見せていくものなのだろうとも思う。関係を築き始められたのは大きな一歩だ。自分を作っていくという意味でも大きな一歩を歩めたように思う。

移住先探しの旅はまだ終わらない。次の候補地は熊本だ。これから熊本へ向かおうと思う。

続く。



この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?