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作家になる日。



本の締め切りがじりじりと迫ってきているのに、いまいち調子が上がらなくて、もしやこれはスランプでは?今話題のイップス?と、一丁前のプロのようなことを思ってみるが、そもそも調子がいいときがなくシンプルに実力不足であって、ただ焦っている。

夫が「宿とかにこもってみたらいいんじゃない?俺もついて行くしさ!」と雰囲気から入る提案をしてくれて、あんた旅行に行きたいだけやんか、とツッコミながら温泉宿に来てみたが、温泉に浸かって、部屋に置いてあったせんべいを齧って、テレビ見て、ご馳走をたらふく食べて、お腹をさすりながらテレビ見て、シメにどら焼き食べて、寝て、朝ごはんをたいらげて、ノートもスマホもパソコンも開かず、ついには一文字も書かずに帰ってきた。ちなみに夫は終始「極楽ですな〜仕事の疲れが癒やされますな〜」とご満悦であった。


わたしはライターであって、作家ではない。これはライターと作家のどちらがえらいとかすごいとかいう話ではなく、わたしはライターという肩書きで、主に人から依頼されたものを書く仕事をしてきたから自分はライターだと思っている。

今、ある分野で自分の名前の本を出す、という機会に恵まれて、これはライターとしての活動ではないなと思い、じゃあわたしはざっくりカテゴライズすると作家という類に入るだろうか。いやでも全然それでご飯を食べられるレベルじゃないしと、別に悩まなくていいことに頭を使ってみたりする。

ライターとして原稿を書くとき、「どうしても書けない」ってことはない。ちょっと止まってしまったり時間がかかったりすることはあっても、なんとか形にはできるだろうと思うし、それなりに仕上げられるだろうとは思える。それは自分が何年かこの仕事で食べてきて、なんとかしてきた、できてきた、という積み重ねがあるからであり、自分をライターだと思えているからだと思う

でも今、本に関しては、本当にできるんだろうか、と焦り倒している。進まないし、進んだと思ったら後戻りするし、これでいいんだろうか、不正解なんじゃないかって、不確かな感触のまま手探りしている。そもそもは好きで始めたこと。たのしくて、たのしくて、でも自分にできるのかと思う日の方がずっと多い。これは、わたしにまだ積み重ねがなくて、自分を作家だと思えていないからだと思う

でもそんなこと言ったって締め切りはやって来る。どこかで線を引いて、完成させなきゃいけない。このまま、わからない、できるんだろうか、間違ってるんじゃないかと思いながらやり続けるのは自分がしんどい。

もしかしたら今のわたしには、思い込みも必要なんじゃないか。わたしは作家だ!っていう思い込みが。実績を積み重ねていくことがきっとわたしが自信を持つためには必要だけど、それにはどうしても時間がかかる。だったら自分を洗脳するように、わたしは作家ですからって自分に言い聞かせて、周りにも言ってしまって、作家として、作家モードの自分で、作品作りに向き合ってみるのはどうか。実績がある人、それだけで食べれてる人が名乗れるものだって思ってたけど、そんなの何年後になるかわからない。くるかもわからない。自分が思った日から作家になれるんじゃないか。


だから、わたしは作家だということにしようと思う。ライターの仕事もしているから、ライター/作家かな。思い込みから入る。とりあえずこの作戦でやってみよう。

というわけで、作家になりました。


おわり


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